第六話 遅刻魔
side:葵羽
「おーい、水樹、起きろ〜」
ユサユサと水樹の体を揺らす。
「…遅刻するぞ〜」
あー、もう。
「んー、あと10個…ちょうだい…」
「何の夢見てんだよ」
思わずツッコんでしまった。
「エコバッグ…10個…」
え、エコバッグ10個!?
…用意しておくか。
水樹が寝言で何か言ってる時は必ず必要な物が出てくるからな。
それを実感したのは3年生の頃。
『水樹、遅刻するよ、起きて』
『ん〜、傘ぁ〜』
『…晴れてるけど…』
『わぁ〜!!!濡れる!!!』
『…わかったよ』
その日は放課後から大雨が降って傘を持って行ってよかったと思った。
…ということがあってエコバッグを片っ端から見つけて行く。
柚さんの所にいっぱいあるんだよな。
「柚さん、エコバッグ、借りてきますね」
「いいわよ〜」
にこっと笑って了承してくれる。
…10個以上あるし、エコバッグ。
そそくさと水樹のバッグにつっこむ。
「時間…は…ぁ?」
…………やばい。
「水樹!!!起きろ!!」
「ふあっ!?」
「遅刻!する!」
「うっそ!!」
ばたばたと階段で下に降りていく水樹。
…良かった、昨日準備しておいて。
10分後。
「で、出来たよ…」
息を切らしながらミニナップザックを背負う水樹。
僕はショルダーバッグを背負う。
「葵羽!待ち合わせ、どこだっけ!?」
「現地集合だよ!始まるのが10時だから…」
「よしっ、じゃあ、15分で行くよ」
と走り出す。
しばらく走り、目の前の信号が赤信号になる。
目の前には白と黒の車が。
…パトカー…だよな。
「あぁぁあ、もう!!すみません!!」
ダンッと水樹はパトカーを飛び越え、僕は側転をする。
「ちょっ、おい!」
パトカーから警官が出てくるけど気にしない気にしない。
「すみませんって言ってるじゃ〜ん!!」
水樹は振り返りながら言う。
「パトカーで追いかけてきてるしっ!」
やっとサーカスのテントが見えてきたというのに。
『止まりなさい、そこの2人!』
「「嫌だ〜!!」」
カーブで転びそうになりながらもなんとか着いた。
「はぁ、君らね。パトカーどうやって飛び越えたの!?」
「学生証見せなさい」
しぶしぶ紺色のカバーが付いている南星中学校の学生証を見せる。
「ま、待って下さい…先輩、この子達、天宮警視のお子さん達では…?」
「…ほんとだ」
「ごめんなさい!パトカー乗り越えたのはわざとじゃないの!」
「待ち合わせで急いでて…」
「いえ、こちらこそすみませんでした。まさか天宮警視のお子さん達だったとは…」
「い、いや、大丈夫ですよ〜(汗)」
僕らの今の表情を表すならこんな感じ。
(⌒-⌒; ) (⌒-⌒; )
「じゃあ、急いでるので、失礼します!」
足早に去り、中に入っていくとレンくんが見えた。
「レンくぅーん、お待たせ!」
僕は遅刻したことが凄い恥ずかしかった。
こっちから誘ったのに…
「おはろー」
何だその言葉。
「おはろー…?」
レンくんも戸惑ってるじゃん!
「レンくん、あんまりムリに水樹に付き合わなくてもいいよ」
「えぇーっ! なんでぇーっ? そんなこと言うなら葵羽とは突き会いたいんだけど」
「恐怖でしかない」
青い顔をすると水樹はけらけら笑う。
「いやぁ~、サーカス! いいね、この雰囲気! 人もたぁぁぁぁぁっくさんいるよ!」
大きいぞー、声がー←
「じゃぁ、行こうか」
「うん…あ、」
ガラガラガラガッシャーン!
んんんん?
床にレンくんの持ち物がぶちまけられる。
レンくんは顔を両手で隠す。
見えている限りだと顔を赤くしている。
「「………」」
床を見ながら僕と水樹は呆気に取られる。
盛大な沈黙が流れ、段々気まずくなってきた。
「すみません………!」
レンくんが頭を下げた。
“え、謝ることじゃなくない?”
と水樹とアイコンタクトをし、い
「いや、レンくん荷物多すぎだよ〜」
「すみませんっ」
いや、だから謝ることじゃないんだってば←2回目
「謝ってほしいんじゃなくて……その、面白いなって」
その後、レンくんのリュックの代わりに、水樹が
「はいはーい!私ね、エコバッグ10個持ってきたから貸すよ」
ここで寝言で言っていたエコバッグが役立った。
「何で10個あるの?」
「レンくんがつっこめることじゃない……」
僕は即座にツッコむ。
「いやー!準備しておいてよかったぁー!」
いや、僕だけどね、準備したの。
そしてサーカスとテントに入り、ライオンなんかよりもっと目に入ってきた物があった。
「こんにちわ、みなさん」
道化師なのだろうか。派手な紫と黄色のチェックの服を身につけた女の人が出てくる。
ぞわっ
鳥肌と悪寒が走った理由はこの後すぐにわかることだった。




