第十一話 終わり
side:葵羽
グオォォォォォッ
百獣の王と言われるライオンが僕らの後ろで唸り声を上げる。
「「「ひっ…」」」
後ろをゆっくりと向くと…
ライオンの群れが!!
「あぁぁあ、もうレンくん!生肉とか持ってないの!?」
「持ってるわけないよ!腐るしっ!」
あーあー、そこはくだらん喧嘩はやめなさーい。
「………あれ?」
お、襲ってこない…?
むしろ、道を開けてくれてる…?
「あっ、葵羽さんっ、火が!!」
少しずつ火がこちらに迫ってくる。
「〜〜〜〜っ、2人とも、腹決めてね!」
と僕は2人の腕を掴み走り出す。
「ちょぉおぉ、葵羽!無茶だって〜〜〜っ!!!」
「うわぁぁぁああっ!」
ライオンは僕らに見向きもせず、ただただ見守る。
走ると外が見えてくる。
転がり込むようにテントから脱出する。
ちょうど消防隊が来たらしい。
「何してんの!?遅かったじゃん!」
「水樹さん、言っちゃダメなやつ」
「そうだよ」
すかさず、僕とレンくんは水樹にツッコミをする。
「あっ、警視!警視!」
と警察官が走っていったのは…
案の定、春雪さん。
「よかったぁぁあ」
スライディング気味でこちらに滑り込んでくる。
「えっ、だっ、誰???」
いや、まあそう来ますよね。
「ごほんっ」
水樹が咳払いをし、
「私のお父さんの天宮春雪!警視なんだよ〜!」ドヤ
「「ドヤ顔いらないよ水樹 (さん)」」
「ぐっ、ツッコミが…2人だと!?」
「……我々の勝ちのようだなぁ、ボケ担当よ!」
あ、あれ、なんかレンくん変なスイッチ入ったな!?
「私は…負けない!ツッコミなん」
ゴッ、と手刀を落とす。
「〜っ、最後まで言わせてよぉ笑」
「いいところだったのに笑笑」
「…あれ、大丈夫なのか、葵羽」
「あ、あは、あはは…」
もうほんとに苦笑いしかできない。
「あっ、なんでさ、ライオンは私たちに襲ってこなかったの?」
「確か、ライオンは自分の縄張りを守る習性があるからね。テントはライオンの縄張りだったみたいだ」
なんか前図鑑に書いてあったよな、うん。
「あっ、お前ら、一応検査されとけよ」
「一応、火の海の中にいましたからね」
「あとは頼んだぞ、靑音」
「はいっ、警視」
僕らは検査のため救急車で病院に運ばれていった。
検査したが、レンくんの靴の端が少し焦げたくらいで済んだ。
あの後、警察が丁重にレンくんを千葉宅へ送ったそうだ。
「いや…今日一日、大変だった…」
「うん…」
その声は静かな夜によく響いた。