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上書き保存  作者: NICKNAME
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メモリアル同窓会

「よう久しぶり。ちゃんと生きてたぜ」


みんなから注目される存在、坂本が、同窓会に姿を現した。

同窓会も毎年開催されるわけではなく、久々に開催された。

今回は、卒業後20周年というメモリアルに当たる。

瞬、浩、田端は、近くで暮らしているため、開催の通知があれば、基本的に出席していた。

しかし、坂本は、国境なき医師団で働いているため、1回も出たことがなかった。

その坂本が、今回は初出席という事もあり、瞬、浩、田端は、とても再開を楽しみにしていたのだった。


元々ワイルドだった坂本が、さらにワイルドになっていた。

医師というより、まるで龍が如くの桐生一馬である。

体のあちこち、入れ墨だらけである。


「元気そうだな」


浩が、返事を返す。


「まあ、しかし、入れ墨だらけじゃんよ体」


田端が、正直な感想を述べる。


「入れ墨なんて言うなよ。TATOOって言えよ。海外じゃあ、普通だよ」


国内で働く元同級生達とは、完全に感覚が違う。


「どこで働いてんだ?」

「こないだまでスーダンで働いてた」


瞬の質問に答える坂本だった。

完全に異質のオーラを放つ坂本は、場違いな感じであった。


「日本にも滅多に帰ってこなかったからな。日本語忘れてるかもと思うぐらい。逆に英語とフランス語は、流暢になったけどな」

「坂本くんは、やっぱり坂本くんだね」


元カノの同級生、今井さんがそう言った。


「おまえ結婚したのか?今でも今井なのか?」

「私は、あなたのせいで一生独身です」

「おいおい。確かに俺と別れたけど、それは違うんじゃない」


近づきにくいなと思っていた同級生達もこの会話を聞いて、昔のように話せそうだと安心したのだった。


「今井さん、坂本の事大好きだったもんね。ずっと学生時代付き合ってたし」

「うん。そして、18年ぶりに会ってこれでしょ。やっぱり私、男見る目なかったのかしら」


瞬が、今井さんに話し掛けた。

その後の返事を聞いて、周りは大爆笑した。


「仕事も美幸も両方選ぶことは出来なかったんだよ」

「まあ、私も同じ職場で働く気はなかったし、かと言って妻として同行するのも嫌だったからね」


志が大き過ぎる故の別れという事は、同窓生皆が知っていた。


「結婚したの?」

「うん、国際結婚でフランス人医師と」

「職場恋愛?」

「うん。今は、家族フランスで生活していて単身赴任。子供ができてから、そうなった」

「幸せ?」

「まあな」

「よかった」


そう言って微笑む今井さんだった。


「そっちは、どこで働いてんの?」

「私は、普通に都内の病院で勤務医してますよ」

「そうなんだ」

「相変わらずマイペースね」


マイペースぶりは健在であり、今度は、瞬に話し掛ける坂本だった。


「おまえ結婚したのか?」

「どうして俺だけにそういう事を聞くの?」

「大病院の御曹司だから、色々と大変で独身かなと思って」

「してるよ。子供もちゃんと二人いるよ」

「相手は?」

「社長令嬢だよ」

「やっぱりそうか。お見合い結婚だろ。家継いだのか?」


昔からズケズケ物を言う奴だったが、海外生活が長いため、余計にそうなっていた。


「お前の察しのとおり」

「昔、一緒に酒飲んでいた時に俺が予言したとおりになったな」


頭(記憶力)のよさも昔から変わらないなと思った瞬だった。


「いつ向こうに帰るんだ?」

「今回、赴任期間終わってて、この後はフランスに帰って、次回派遣まで休養期間。日本には、来週の水曜日までいる。親と一緒に墓参りもしたいしな」


聞いた田端だけでなく、浩や瞬も墓参りという言葉を聞いて、親近感が湧いたのだった。


この同窓会は、立食パーティー形式。

気付けば、坂本と瞬のあたりは、人だらけになっていた。

特に、坂本は、質問攻めにあっていた。

今は医師として働く同窓生達も海外生活や職場、仕事内容について興味津々なのであった。


瞬は、山本病院の院長として働いている。

地元でも名士として知られる存在である。

ちなみに、同窓生の一人もこの大病院に勤務している。

今回のメモリアル同窓会は参加人数も多く、とても盛り上がり閉幕した。


同窓会の後、仲良し4人組+今井さんで飲みに行くことになった。

いや坂本+その仲間たちで飲みに行くことになったが、ぴったりかもしれない。

場所は、近くの個室居酒屋にした。

誰もお金には困っていないが、時間がない日々を送っている者ばかり。

こうして休日らしい休日を楽しめることを喜んでいた。

居酒屋では、少し酔った瞬が悩みを打ち明けていた。


「社長令嬢と結婚したって言ったじゃん」

「うん、知ってる。それがどうした?」


田端が、間髪入れず返事する。


「相手一人っ子。子供二人いるけど、共に女の子。跡とり問題悩んでるよ。後、子育でとか。長女グレ気味でさ。学校でいじめられたみたいで」

「大変だな。お前(山本家)特有の悩みだな。他に悩みある奴いる?」

「俺は、家庭円満で悩みなし」

「俺は独身だから、結婚相手見つからないぐらいかな」


浩は家庭円満、田端は相変わらず独身貴族。そして、聞いている坂本に悩みがあるはずがなかった。


「美幸も旦那見つからないが悩みか?俺が、不倫してあげることも出来ないしな、海外じゃあ。ネット不倫するか?」

「ばーか。ちゃんと山本君の相談乗ってあげなさいよ」

そう言って笑う今井さんだった。

この二人は、昔からこんな関係だったなと周りも妙に懐かしく感じるのであった。


「長女、何歳?」

「小2」

「学校変えればいいよ。それかインターナショナルスクールに通わせるとか」

「私も環境を変えることが大事に思うわ」

「俺もそう思う」


みんな坂本の意見に賛同的だった。


「跡とりは、養子でも女院長でもいいんじゃない、適正があれば。今からそこまで考える必要ないと思うな」

「私もそう思う」

「俺も」

「ほんとそうだよ」


ノーマルな答えが返ってきた。


「ただな、相手のお父さんを通じて、妻が、もう一人子供作りましょうと言ってくるのよ」

「大変だな。病院の方の跡とりもいるだろう?」

「弟の子供、二人共男だから、そっちに継いでもらおうかと」

「意外と古いんだな。フランスなんか半分近くが女性管理職。政治家や経営者が、女性でも全然珍しくない。日本って大丈夫か?」

「おまえの言うことは解かる。ただ、しがらみが多い世界なんだよ。おまえも俺の立場になれば解かるよ」

「解かりたくもないね。俺ならぶっ壊すけど。てか追放されてるな、荒くれ者だから」

「いや、その前にあなたを選ばず、他の人を選んでると思うな」


今井さんのツッコミに瞬も笑ってしまった。


「だな、さすが俺の元カノ」


今井さんもこの4人組に合流して、本当に楽しそうだった。

瞬は、結局そんなに焦らなくても大丈夫かと自分に言い聞かせるようにした。

後、山本病院や妻の実家は確かに名門だが、皇室ではないから、令和時代、女性がトップでも今までよりはやりやすくなってるかもと考えるようにした。

ただ、山本病院の跡とりに関しては、弟にも唯にも、(子供が)理系脳で医師を目指すなら、継いで欲しいと言ってある。

勿論、引退した父親にも報告済みだ。


坂本が、別れ際にこう言った。


「おまえ老けたな。まだ44だぞ。せっかくの男前が台無しだよ。10年後会ったら、剥げてんじゃないか?楽しく生きろよ。じゃあな」

「一人で抱え込んだら駄目ですよ。悩んだ時は、学生時代の友人に相談するのが一番よ」

「ありがとう」


坂本は、今井さんと二人きりで場所を変えて飲み直すようだ。

そして、久々に顔を合わせた瞬、浩、田端も場所を変えて飲み直す事になった。


「あなた、プライベートでこんなに遅く帰宅なんて、初めてですわね」

「久々の同窓会で楽しくてね」

「それはよかった」


1時過ぎまで飲んで、タクシーで帰った瞬。

愚痴一つ言わず、寝ずに帰りを待つ優しい妻であった。


瞬と唯が主人公、順二も準主人公という事で描いてきましたが番外編という事もあり、瞬のみがサブで登場する珍しい章です。

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