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上書き保存  作者: NICKNAME
12/16

すれ違い

「どうした唯?」

「瞬、聞いて。気になる男性の事、前に話したじゃない?」

「うん」

「別れようと思ってるの?」

「またどうして?」

「付き合いだしたら、態度変わっちゃって。超束縛男なの」

「そらあ、大変だなあ」

「笑い事じゃないでしょ」

「ごめんごめん。なるほどねー。自分は、全然束縛しなかったからね。そういうの、されてみたかったのかもね」

「マジうざいのよ。それだけじゃなくて、すぐに体も求めてくるし。瞬と全然違う」

「あの時は、だって唯高2だったからね。今20歳でしょ」

「けど、まだ一ケ月も経ってないのよ」

「言っちゃあれだけど、なんか軽い男に思えるね」

「やっぱり。チャラ男なんだろうね」

「別れたほうが、いいんじゃない」

「実は、もう別れて着信拒否中だよ。釣った魚に餌やらず。口説く前と全然違う」

「ふーん、そうなんだ。社会勉強になったね」

「ちなみに、親友の気になる人なんだ。外見は、いいんだけどね。中身が・・・」

「まだ20歳の彼氏だからな」

「瞬、こんな私を慰めてよ」

「ドキッとする言葉だね」

「ほんとにドキッとしてる?」

「してるしてる」

「その言い方は、してないね」

「さあ、どうだろね」

「会ってよ私と久々に」

「いいよ。でも、条件がある。2対2で会おうよ」

「いいよ」

「俺、順二連れて行くからさあ、久々に明日香ちゃん連れて来てよ」

「よく覚えてるね」

「スカウトされたって聞いたから、どんだけ綺麗になってるのかなと」

「私も半年ぐらい会ってないから、丁度いいね。会って久々に話したいわ」

「来週の土曜日、みんなで焼き肉でどう?」

「昔、行ったね、瞬のおごりで」

「そうだね。車じゃないから、別の場所だけどね今回は。それにみんなお酒飲めるし」

「聞いとくね」


瞬の声を久々に聞けて、ほっとした唯だった。

また、久しぶりの再会を楽しみにしていた。

順二も明日香も偶然予定は入っておらず、その日の焼き肉が決定となった。


唯は、学校に行くと、茜といつも行動を共にしている。

変に感じた茜から、質問を受けた。


「唯、三上君と何かあった?」

「どうして?」

「全然、最近話さないじゃない」

「ごめん。正直に言うね、ほんの少し付き合っていて、別れたんだ最近」

「そうだったんだ。薄々は、気付いていたけど」

「ごめん、言えなくて。告られてね」

「いいよ。あの彼氏とは、別れてたんだ」

「うん。強引に来られて、迷ってね私」

「すぐ別れるって事は、よくなかったんだ?」

「全然だね。チャラいよ三上君は」

「したの?」

「何回も迫られたけど、断った」

「へぇー、そうなんだ。私、結構アピってたけどね。返信そっけなかったし」

「外見が良くて、口は上手いけどね」

「中身がないんだ」

「私は、そう思ったけど」

「なんか私も冷めてきちゃった」

「ごめんね茜。隠しているつもりではなかったけど、言えなくてね」

「気にしないで。むしろ遊ばれなくてよかったのかもしれない」

「本当にごめん」

「いいよ、気にしなくて。あー、すっきりした。これで全部解かったわ」

「どういう事?」

「三上君とやり取りしていると、変化があったのよね。前は、唯の話題すると、いい事言ってたけど、最近は、スルーなんだよね。後、最近、私にも結構連絡が来るようになって。なるほどねーみたいな」

「止めといたほうが、いいと思うよ」

「その方が、よさそうだね。経験者語るみたいな」


こうして、茜に本当の事を話した唯だった。

別れて思ったのだが、クラスメイトと付き合うのは、後々気不味くなるケースもあるという事だった。

唯は、なるだけ気にしないように心掛け、焼き肉での再会を心待ちにしていた。

そして、その日を迎えた。

唯は、珍しく露出度の高い服を着た。

また、誘われてもよいようにちゃんと準備もして出掛けた。

唯は、瞬との交際復活を願っていたが、あまり都合のよい事を自分からは言えなかった。

一方の瞬は、全然違う事を考えていた。

順二が昔から気に入っており、フリーである唯と意気投合するかもしれないと考えていたのだ。


「久し振りだね」

「お久しぶりです」

「いやあ、明日香ちゃん、久々に見たけど、本当に綺麗になったね」

「山本さん、そう言ってみんなを口説いてるんでしょ。フリーになったから」

「そんな事してないよ。国家試験対策に必死ですよ」

「唯ちゃん久しぶり。相変わらず可愛いね。唯ちゃんも大人びたね」

「唯、どうしたの?セクシーじゃない。子供っぽい唯が」

「そう?」


瞬は、唯の格好について触れる事はなかった。

高級個室焼肉店を予約していた瞬だった。

席に案内され、注文を頼んだ。

飲み物が来た後、乾杯した。


「再開に乾杯」

「かんぱーい」

「乾杯」

「乾杯」


唯が、最初に口を開いた。


「どうして今日は、ボーリング行かなかったんですか?リベンジにもなるのに」

「また負けるからだよ」


順二が、真っ先に返事した。


「俺的にはおごりたいんだけど、みんなが気を使ったらいけないと思ってね。二度目だし」

「俺は、兄弟だから、全然気を使わないよ」

「私も元彼だから、全然気を使わないよ」

「私も芸能界で活動しているから、お食事等をご馳走されるの馴れてますけど」


四面楚歌の瞬だった。


「そんなにみんなおごって欲しいの?」

「うん」

「うん」

「是非」

「仕方ないなあ、じゃあおごるよ」

「かっこいい兄貴」

「やったあー、瞬素敵」

「ごちそうさまでーす♪」


優しい瞬は、今回もおごりにした。


楽しそうな四人の会話が続く。

医学部ネタ、東大ネタ、芸能界ネタ等、なかなか普段聞けないような面白い話題で盛り上がった。

普通、早慶とか千葉大でも十分羨ましがられる大学だが、山本兄弟の学歴が凄すぎるため、そっちの方の話題にはならなかった。


楽しい時間を2時間ぐらい過ごし、女性陣が望んだため、お洒落なバーへ寄る事にした。

酔った事もあり、唯が、瞬に絡むようになっていた。

それを見た順二は、兄が羨ましかった。


「しゅーん、今晩送ってよ」

「いいけど、あんまり飲んじゃ駄目だよ」

「嬉しい。このまま酔い潰れちゃおうかな」


そう言って寄りかかる唯だった。

順二は、唯に話し掛けたかったが、我慢するしかなかった。

瞬は、弟に気を使う必要はなかったが、明日香には、気を使っていた。


「瞬さん、誰か狙っている女性とかいるんですか?」

「いや別に」

「じゃあ、復縁したらどうなんですか?」

「そうおもーうよーね、あすかー」


唯は、だいぶ酔っていた。

瞬の煮え切らない態度には、理由があった。

唯は、内心たくさん会える事を望んでいるが、卒業後インターンとなれば、外科を専攻している自分と会える回数が増える可能性は、まずないからである。

また、山本家の妻となるのは、すくすくと育った唯にとってストレスになるのではないかと思っていたのである。

唯の事を考えれば、もっと頻繁に会ってくれ、普通の妻になれる相手がいいのではないかと思っていたのである。

唯の事を本当に大切に思っていたのである。

ある意味、医者になって山本病院を継がなければいけない悲しい定めは、唯と別々の道を必然的に選択させたのだった。


「僕が送っていこうか?」

「やだー、瞬じゃなきゃ嫌」


順二は、断られるのを解かっていながら、場の雰囲気を盛り上げるためにそう言った。

勿論、他の二人は、子供のような唯の発言を聞いて笑った。

一時間ほどバーで過ごし、帰る事にした。


「明日香ちゃんは大丈夫だよね?」

「はい、大丈夫です。電車で帰ります」

「また会う機会あったら、芸能界の事もっと教えてね。後、連絡先ありがとね」

「こちらこそ、今日もご馳走してくれてありがとうございました。また、誘ってください。後、唯の事お願いしますね」

「ちゃんと家まで送っていくから」

「はい、お願いします。では、失礼します」


美貌抜群であり、慶応大学に通い、芸能活動している明日香は、相変わらずフリーだった。

隙がない女性は、彼氏が出来にくいというのは、本当だなと思った瞬だった。

明日香を見送った後、タクシーを拾った瞬だった。

後部座席に唯と一緒に座り、前側に順二が座った。

そして、唯の家の前でタクシーから降りた。

唯を支え、玄関先でチャイムを押す姿を確認した。

その後、少しその場から離れ、唯が、玄関内へ入った事を確認した後、タクシーへと戻った。


「兄貴、別れてたんだ?」

「色々あってね」

「唯ちゃんは、兄貴の事、今でも好きなんじゃない」

「向こうから振ってきたんだよ」

「ほんとに?」

「嘘言ってどうすんだよ、こんな事、しかもお前に」

「そうだね。気の迷いだったんじゃない」

「なんか悪い男に引っ掛けられたみたいだね、話聞いてると」

「そんな事まで元カレに報告するんだ」

「仲いいからね」

「てことは、俺にもチャンスがあるって事?」

「俺達が、復縁しなければね」

「その気あるの?」

「ない。大切に思っているけどね」

「家柄とか気にしてんの?」

「うん。向こうでなく、自分のね」

「俺は、兄貴と違って病院を継ぐ必要ないからなあ」

「そうだね」

「兄貴、俺と唯ちゃんの間で協力してよ」

「よく元彼にそんな事頼めるね」

「だって終わった事でしょ。一番言う事を聞くのは、どうせ元カレである兄貴の言う事だろうし」

「言われてみれば、そうだな」

「なんか俺じゃ不満?性格はいいと思うよ。遊び人でもないし、結婚を前提に付き合うよ」

「そういう意味では、問題ナッシングだけどね」

「じゃあ、何が問題なの?」

「なんでも時間が解決するという部分もあるから、今それやれって言われてもね」

「誰も今なんて言ってないよ。俺は、待てるよ。兄貴の存在が、唯ちゃんにとって小さくなった時でいいよ」

「それなら、協力してもいいよ」

「よっしゃー」

「ドラフト会議でくじを当てた監督みたいだな」

「真中監督だけには、なりたくないな」


二人で大笑いした。

そして、自宅に着いた。

チャイムを鳴らすと母親が、扉を開けてくれた。


「まあ、兄弟仲良く酒臭いこと」

「そんなに酒臭い?お母さん」

「順二だけでなく、瞬も臭いよ。だいぶ飲んだでしょ」

「そうかなあ、まあいいや」


そう言って三階の部屋に向かう瞬だった。


「何があったの?」


母親は、順二とリビングで話していた。


「兄貴の元彼とその友達と四人で飲んでたんだよ」


そう言って、冷蔵庫のペットボトルを手にし、飲む順二だった。


「別れたんだ。全然報告してくれないわね」

「小学生じゃあるまいし、親に報告しないでしょうよ。ちなみに、自分の彼女になって欲しいと思ってるよ」

「順二、だいぶお酒に酔ってませんか?」

「ちょっと酔ってるかもね」

「そんな事、酔いながら女の子に言っているんじゃありませんよね?」

「言ってない、言ってない。兄貴には、言ったけど」

「あなた、自分が何を言ってるか解かってるの?」

「解かってるよ。何かおかしい?」

「だって瞬の元彼女でしょ」

「別れたら、関係ないじゃん。元誰の彼女であろうが」

「・・・・・」


母親は、返す言葉を失った。


「じゃあ、俺も上行くわ。彼女になったら、紹介するから」

「好きにしなさい」


少しキレ気味の母親であった。


唯は、酔いつぶれたまま、ベッドにいた。

勿論、瞬の電話番号を知っている。

しかし、架け馴れた電話をする事が出来なかった。

目を閉じると、浮かんでくるのは、瞬の笑顔ばかりだった。

改めて、自分が、瞬に染められているのを知った。

だが、その思いを再び受け入れてもらえず、凄く精神が不安定になっているのを感じた。

どうして、こんなに瞬に抱かれたいのに、琢磨には拒絶反応を示すかよく解かった。

琢磨といて楽しかった事はあるが、落ち着きを感じた事はない。

琢磨に恋したのは事実だろうが、それは、愛ではなかった。

瞬に愛されていたのに、それに気付かなかった事を物凄く後悔した。


ラインではなく、メールを打った。


『会いたい。瞬に会いたいよ。私、やっぱり瞬が好き。』


30分後、瞬からメールが返ってきた。


『俺も唯と一緒にいると楽しいよ。けど、ちょっと冷却期間を置いたほうがいいのかな。唯は、今、色々と複雑な気持ちだと思う。もっと落ち着いた時に、こういうコメント欲しいね。』


否定もせず肯定もせず、酔って取り乱している心理状態でなく、落ち着いた状態で唯の気持ちを聞きたいという風に捉えた唯だった。

一方、順二の頼みやインターンや山本家という将来の事を考えれば、唯と復縁すれば、唯に寂しい思いをさせるという理由で復縁しないと決めていた瞬は、唯が、自分に冷めるまでの冷却期間を作ろうとしていた。

ちなみに、理沙と浩は、未だに仲良く付き合っており、他の誰かが、その関係を切り裂こうともしなかった。


しかし、唯を取り巻く環境は、複雑だった。

元カレの瞬、彼女にしたい順二、振ったクラスメイトの琢磨、そして、親友の茜。

交錯する思いの中心は、唯であり、唯が、他者を巻き込んでいく。

唯は、気付いていなかったが、男性にとって魅力的な女性だった。

唯と両思いである瞬が、自ら引くと決めたため、唯の満たされない思いは、徐々に大きくなっていく。

それは、瞬が望んだ事であり、唯や順二を思っての事だった。

瞬だって本当は、辛かったし迷った事もある。

けれど、誰にも話さず、唯にも弟にも決してそのような素振りを見せる事はなかった。

唯は、順二に復縁協力を頼み、順二は、瞬に協力を頼む。

唯は、二人と連絡を取り合っているうちに、段々と順二の優しさやマメさ等を新鮮に感じるようになった。

いつの間にか恋愛相談相手から、遊び友達になり、瞬の事を諦めようと思うようになっていた唯だった。

けど、本当は、瞬の事が好きだった。



「瞬も一緒に行かない?」


唯からの第一声に驚く瞬だった。


「どこへ誰と行くの?」

「順二君とお台場へ来週の土曜日行くの?」

「それって、二人っきりで行きたいんじゃないの?」

「瞬、約束覚えてる?防災公園行こうっていう」

「あー、したね。けど、もう別れちゃったじゃん」

「別れても一緒に行くぐらい問題ないよね?」

「うん、そう言われればそうだけど」

「じゃあ、一緒に行こうよ」

「唯。順二は、唯の事好きだと思う。それでも俺を誘いたい?」

「私は、男友達としか思ってないから」

「なんか、もてあそんでいるというか」

「順二君に友達になってと言われたのよ。兄貴の事好きなの解かってるよ。唯ちゃんと友達になれて嬉しいよって」

「そのまま受け止めてるの?」

「うん。私に好意を抱いている事ぐらいは解かるよ。けど、好きかどうかは解からない」

「まあ、そう言えばそうだけど」

「たぶん、私が瞬を思う気持ちよりは、弱いんじゃない?」

「俺の事、まだ好きなの?」

「勿論。じゃなきゃ誘わないよ」

「複雑だねえ」

「簡単よ。私とよりを戻せばいいの。順二君とは、ただの友達なんだから」

「前にも言ったけど、よりを戻す気はないよ。唯の事、素敵な女性だと思うけどね」

「どうして?」

「好きな人が出来たから」

「そうなんだ」

「うん」


瞬は、嘘を付いた。

好きな人などいなかった。

自分にとっても唯にとっても、そして、順二にとってもこれがいいと思い込んでいた。


「じゃあ、二人で行ってくるね」

「うん」

「また電話してもいいよね?」

「うん、全然いいよ」

「瞬の声聞くと、落ち着くから」

「楽しんできてね」

「どうなることやら」

「なんだよ、その言い方」

「だって、瞬のデートと比較しそうで」

「友達として楽しんでくればいいんじゃない?」

「うん、解かった。じゃあ切るね」

「うん、おやすみ」


唯は、順二の事をまんざらでもないと思っているが、やはり、瞬が好きだった。

しかも、誘われた場所が、お台場であり、三人で行けたらなと思ったのである。

明日香を含めて四人で行こうという話にすれば、瞬も参加したのではないかと後悔した唯だった。

そんな電話の事も唯の気持ちも知らない順二は、ルンルン気分だった。

デートのプランを練るのが、凄く楽しかった。

勿論、兄の瞬には言っていないし、まさか唯が報告しているとも思っていなかった。

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