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上書き保存  作者: NICKNAME
10/16

大学生活

次の日から、普通に授業が始まった。

オリエンテーション後、色々と教科書を買ったし、どの授業を受けるかもだいたい決めた。

高校までと違い、選択授業が多く、その中から必要以上の単位数を取得すればよい。

また、一年生だけでなく、一年生と二年生で選択○○単位数以上という風に割と緩やかに感じた。

瞬によると、聞きたい講義以外は、単位が取りやすいという理由で選んでいる生徒が多いとの事だった。

こういう情報は、先輩や友達から聞くと、解かりやすいという事だった。

翌日から、普通に授業が始まった。


「隣いいですか?」

「どうぞ」


隣に女の子が、座ってきた。

思い切って声を掛けてみた。


「私、田中唯って言います。よかったら、名前教えてくれませんか?」

「松本茜です。仲良くしてくださいね」

「私18歳ですけど、同い年ですか?」

「私も現役です」

「唯って呼ばれているので、唯って呼んでください」

「私も茜って言われています」


他愛もない会話をしていると、講師が教室に入ってきた。

高校までと違い、90分間。

教科書も分厚く、専門的であり、こんなの絶対全部理解できないと正直思った。

結局、お昼も一緒に茜と食べて、授業も隣でずっと受けた。

派手な外見ではなく、普通の素朴な女子大生だった。

唯と同じく、家から通っている千葉県民だった。

といっても、唯とは違い、千葉県北部の方だった。


少しづつクラスメイトとも仲良くなり、授業等にも慣れてきた頃、新歓コンパが開催された。

金曜日の夜、周辺の居酒屋ではなく、千葉駅周辺で開催された。

瞬と一緒に電車で向かった。

居酒屋に着くと、幹事が、チェックを入れていた。


「山本と新入生の田中唯だけど」

「はい、どうぞ」


そう言われた後、テーブルの奥の方に座った。


「山本さん久し振りですね」

「あーそうだね。元気だった?」

「はい。隣の女性は?」

「彼女」

「田中唯って言います」

「ショックー。山本さん目当てでコンパに来たのに」

「美和は、前からずっと山本さんの事狙ってたんです。ずっと付き合ってたんですか?」

「もう1年以上になるかなあ」

「諦めます。羨ましいなあ」


唯は、正直どう反応していいのか解からなかった。

ちょっと遠くの方から、その会話を聞いた男性達が、口を挟んできた。


「彼女なんですか?新入生ですよね?」

「うん、そうだよ」

「てことは、女子高生の時から付き合ってたんですか?」

「そうだよ」

「へぇー。どこで知り合ったんですか?」

「事故で知り合ったんだよ」

「そんなドラマみたいな事あるんですね。彼女さん、勿論医学部生って知ってますよね?」

「知ってるよw」

「そうですよね。すいません、当たり前の事聞いて。可愛いっすよね」

「ありがと」


唯もその男性を見て、軽く会釈した。

座ったテーブルの近くでは、私達の事が話題になっている。

唯は、瞬がオープンにしたのもコンパや合宿にあまり行かないのもなんとなく解かったような気がした。

時間になり、幹事が挨拶を始めた。

乾杯の前に、新入生が起立し、順々に自己紹介した。

それが終わると、乾杯だ。

その前に、アルコール中毒や飲酒による事故等に気をつけてとの注意があるが、皆お酒で乾杯する。

簡潔に言うと、酒は飲むけど、酒に飲まれないでねという事なのだろう。


「かんぱーい」


みんなでグラスを合わす。


「10人位いたね」

「中には、どうしようか迷っている人もいるし、途中から幽霊みたいになる人もいるけどね」

「逆に、途中から入ってくる人はいないの?」

「いるよ、友達の紹介でね。部活と違って、緩いからね。毎日活動というか練習するわけじゃないし」

「瞬は、大学生になる前にゴルフとかしたことあるの?」

「父親に連れて行かれて、打ちっぱなしとかハーフコースとか」

「私は、初めてよ」

「初めての人が、多いんじゃない」

「瞬が、手取り足取り教えてくれるよね」

「勿論。空振りして笑わせないでよ」

「それも愛嬌よ」

「唯なら、空振りも可愛いだろうね」


話していると、ちょっと酔った男性が、唯の隣に来た。


「俺、野村って言います」

「はー、私田中って言います」

「ゴルフとかやった事あるんですか?」

「初めてですけど」

「じゃあ、僕が親切に教えてあげるよ」

「いや彼氏に教えてもらうのでいいです」


えっという顔をした。

それを見ていた近くの席の女性達が笑いながら、口を開いた。


「山本さんの彼女なのよ」

「そうなんですか?」

「そうだよ」


瞬も笑いながら、返答した。


「撤退します」


そう言って、自分達から最も遠い席に移動した。


「二人お似合いですけど、異性は、話し掛けたいとまず思う第一印象ですよね」


野村さんに親切に教えてあげた女性からそう言われた。


「そう?」


瞬は、クールに返事をした。

唯も贔屓目なしに見て、一番瞬がかっこいいと思ったし、私もいけている方の部類だと思った。

最初二人きりで話していた会話に、段々と皆も絡むようになってきた。

席は移動しなかったが、後輩達が、まず瞬に話し掛け、その後、私に質問して盛り上がるという感じだった。

一つだけ失敗だったなと思ったのは、同級生とあまり話が出来なかった事である。

こんな感じで飲み屋での一次会が終わった。

二次会は定番のカラオケだそうだが、瞬と一緒に帰る事にした。

半数以上は、二次会に参加したようだった。


「大学生がよくやるコンパって、こんな感じなんだね?」

「まあ、まともな方じゃない。他大交流とか女子大とのコンパではないから」

「皆和気あいあいっていう感じだったね」

「合宿では、羽目を外す奴もいるけどね」

「カップルになったりとかもあるの?」

「そういうケースもあるよね。同じクラスとかバイト先の方が、確率高そうだけどね」

「高校でいう部活動で先輩と後輩が付き合うみたいな感じなのかなあ」

「上手い事言うね。そんな感じだろうね。多くないけど、たまにいるみたいな」

「だって、私文系だもん」

「素晴らしい左脳を持ってるね」


二人きりで話すほうが楽しいと思う唯だった。


「じゃあ降りるね」

「家に着いたら電話する」


瞬が、先に電車を降りた。

そして、ホームで唯の姿が消えるのを見送った。

大学生活が始まっても、二人の仲が錆びつく事はなかった。

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