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⑤ブルジェオンギルドの中


 霜柱にわだちを付けながら、緩やかに曲がるスロープを空へ向かうように上っていく。垣間見える青と雲と陽の光は、幾日ぶりかの癒しであった。開いた蕾から外へ出て、遠くに見える山稜から少し下を見下ろせば、蕾の外周を取り囲むように建てられた家屋の集まりが見て取れる。ダンジョン街。それはダンジョンがもたらす恩恵を具現化した人類の軌跡だ。そしてその偉大なダンジョンを管理しているのがダンジョンギルドである。俺たちは受注したクエストの達成報告をしに、あの極寒の地獄から舞い戻ったのだ。


「万年草の確認が取れました。………こちらが報奨金ですね。以上でクエストは完了になります。有難う御座います。お疲れ様でした。」


 ――赤字だ。


「ナナシ、赤字だ。」


 アルクは呟いた。


「今、同じことを思ってたよ。……えぇーっと、どれだけ資源が減っただろうか……。特に石炭。」


「いくつかはストックしておこうと思っていたんだ。しかしアレの大多数は次の街で売るつもりだった……。」


「疫病神はいるんだな。しかも二人もお目にかかれた。」


 俺は少し毒を吐く。これがデトックス。


「それは言わない約束だよ。僕らは冒険者なんだから。……人命にお金は換えられない。」


 遭難を共にした二人は颯爽と家へ帰っていった。少しは恩を返して貰いたかったが、こっちが秘密保持の為に最善を尽くさなかった訳で、向こうは金が無いからダンジョンに居たわけで、善悪で考えても、道徳的に考えても、この赤字を彼らから取り返すのは良くない。


「ナナシ。僕はトレーダーとしての僕を天才だと思っていたけど、いざ旅を始めて見ればこのザマだ。……あぁ、僕は親のスネをかじっていただけの凡人の出来損無いだったよ。」


――自己肯定感低め。


「まぁ、楽しかったし学びもあった。授業料か娯楽代だと思えば良いさ。」


 俺はアルクの背中を押して、キャラバンまで戻って行く。


「その言葉は嫌いだけど、今はそう思うことにするよ……。」


 ギルドハウスの扉を開き、陽の下に晴天を見上げる。フードの中ではモゾモゾッと黒い猫が体勢を変え、前足を俺の肩にのっけた。


「………旅は道連れ世は情け、それで得する弱者だけ。」


 エルノアはフフンと笑ってそう言った。……まぁ、結果論だ。結果的にそういう時も有るのだろう。結果的に。


「腹黒い猫だなぁ。」


「――黒猫だもの。」


 他愛もない思案を巡らせ、キャラバンは今日もまた新たな旅に立っていく。







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