③焼いた魚串の周り
「まぁお金に関しては、徐々に返せてはいるよ。テハリボの交渉も結構な額を引き出せたし。人命にお金は換えられないから、気負うことは無いよ。」
アルクは俺をフォローするように言った。そんな俺たちでも、ただ借金を返済しながら各地を回っている訳では無い。この旅における明確な目標は一応確りと、2つも存在している。
一つ目は新大陸への渡航だ。探索家クランとしての高い実力が認められるか、自ら航路を開拓する2通りのルートで新大陸への道を切り開くことが出来る。しかし新大陸の情報は渡航手段を含めても秘密が多い。つまり新大陸へは前者として受動的に目指すにせよ、後者として能動的に目指すにせよ、俺たちはまずその情報を集めるところから始めなくてはいけない。どちらにせよ、クランとしての知名度や影響力は必須と成って来るのだろう。
二つ目は生命の泉を見つけることだ。生命の泉とは不要な不幸を跳ね除ける聖水が採れると謳われている場所だ。不要な不幸と言われれば複雑に聞こえるが、要は他者が要因で受けた障害や傷を癒す効能のことである。発端は飽くまで個人的な話で、下半身の麻痺した大切な友達の為に一肌脱いでやろうと思い至った。そして生命の泉は必ず、この『オルテシア』大陸に存在している。
まぁ、そんな慈善的な目的を抜きにしても、高難易度ダンジョンを制覇するという快挙は、子々孫々に語り継げる偉大な功績と成り得るのだ。往々にして優れた探索家はその生涯を、末代のままに幕を閉じていくのだが。つまり如何せん、安全は第一だ。
「もう寒いのは嫌だよ。」
ダンジョンの話題となれば、このクランにも一応その手のプロがいる。{テツ・アレクサンドロス}ダンジョンで生まれ育った彼女は、この弱小クランを探索家クランという形に留めている唯一にして最大の要因だ。
「もちろんだ。俺も嫌だしね。」
年齢は彼女自身も知らないらしいが、様相はまだ幼さを残している。シーカーライセンスは『B級プロシーカー』。つまり彼女は天才だった。驕りを許さないシーカーの世界では未だアマチュアだと謳われることもあるが、全体としてみれば一人前の世界の住人である。入窟を許可されないダンジョンもほとんどないことだろう。俺たちと一緒じゃ無ければね。
「………それ、美味しいですかね?」
俺はテツの持つ串に刺さった焼魚を見て言った。焼き加減はアレが一番上出来な仕上がり。
「うん、さすが僕だ。」
「焼いたのは俺……。」
テツはボーっしていることもまま有るが、無口という訳ではない。そして飯も良く食べる。総じてこのクランは全員が良く食べる。しかしその中でも特段食費を圧迫するのは彼女、プーカ・ユーヴサテラだ。




