③テハリボ大耕地前
「城壁の中にももう3枚の壁が有りまして、合間合間にはトラップが張り巡らされております。これらの城壁や防衛手段のあれこれには多大な維持費が掛かってしまいますが、この国は大陸壱の堅牢を誇っていると謳われております。国土は5ha、全体の2分の1は建築や防衛施設、もう半分は田畑や家畜を世話する場所です。」
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{テハリボ城下街}
4枚の城壁を迷路のように越え、キャラバンは高い城壁に陰る街々を視界に移す。
「人口はおよそ300人。見込みの有る若者や好奇心旺盛な者、愛国心に溢れ、第二の暮らしを求める健康な老人は積極的に国の外へ出向き、近くの村で暮らしたり、ウェスティリアへの留学や引っ越しなどを行い、300人前後、多くて350人を超えないように人々が暮らしています。生活はみな厳しいですが、戦乱の世においても平和を願い続け、大陸壱の最高の防衛力を保持するこの国は、我々の国民の自信と安心の源、そして偉大なる誇りなのです。」
第一印象は全体的に暗い国であるということ。ガイドの話も裏を返せば、この国は民が防衛費の為に貧困に喘いでいたり、反逆者が追い出されたりすることがある。という意味にも取れる。しかしそれでも、戦争を自ら起こさないというスタンスは、とても寛大で興味深いと思う。
「左右に広がりますのが、テハリボ大耕地です。国民の食料はここで賄っていますので、農家は大切な公人です。というか最早、村に近いものが有りますね。領土はといえば、この国の周りには広がっていませんからね。防衛を司る兵士も国の運営者もみな公人でして、国民の大多数が公人なのです。」
耕地で育っているのは恐らく根菜だろう。太陽が当たりづらく住居から離れた場所には家畜の小屋が建てられていた。
「ユーヴサテラ様の目的は武器の売買ということでして、国が管理する武器屋まで案内させて頂きます。ちなみにこの国では武器屋や鍛冶師も公人となっています。内部から侵略されては、堅牢な城壁を持つ意味が無いですからね。」
「分かりました……。」
アルクは少し戸惑った顔で頷いた。恐らく大幅な値段の交渉が難しいと見たのだろう。
「武器を売買された後はお好きに滞在なさってください。観光の栄えた街では有りませんが、歴史館などは大変面白いですよ。何分、この国は敗けたことが御座いませんから。」
案内人の青年は楽しそうに笑って言った。見れば街の人達にも笑顔が溢れていた。
「余所からこの国に越してくる人はいるんですか?」
俺は街の外を眺めながら尋ねた。
「……えぇ、少数ですがおりますよ。大体は婿に入られる方か、戦争を嫌って逃げ込んできた退役軍人といったところでしょうか。別段迷惑だとは思っていませんが、増えすぎるのは良く有りませんね。何せ、領地の外は強いモンスターがいますから。田畑は直ぐに壊滅しますので。トホホですよ。」
だから成り立たないのだろう。きっとこの国は300人前後という人口でしか存在し得ない。つまりこの現状はこの国の最高で有り、揺るぎない最低ライン。全くもって稀有な国だ。




