秋夜、ひとり雨を歩く
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」とメーテルリンクの「青い鳥」は、ずっと、好きな童話です。
ちなみに、サムイル・マルシャークの「森は生きている」とライマン・ボームの「オズの魔法使い」も格別です。
夜を歩けば、薄月は雲の帳に傘をさし
きみには逢えぬ霧雨を我はひとりで濡れてゆく
みえぬ星座を雲の上、描けど辿る路はなく
賢治が語る鉄道も、いまは、彼方の星の宙
人を想えど、思い出の国にて眠るきみならず
人を偲べば、人よりも吾こそ常世に近づきぬ
夢を語れば、秋草の遅れ先立つ頼りなさ
夢を描けば、薄墨の水に解ける頼りなさ
夜を歩けば、霧雨の我を冷たく抱きいて
人を恋うても、この腕の凍えに抱くこともなし
昨日、十月のうす月が小さけれどもうつくしき、傘を差してはおりました。雲が晴れれば、月虹のさぞや見事と思われて、しばし待てども、霧雨に、あえなく月は消えました。