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3. ニート転生

 ――エルガード王国首都『アルバス』


 世界の極西に位置し、その遥か東には世界征服を目論む魔王の住む城がある。


 冒険者が集う街で名が通っており、首都なだけあって人通りも多く、冒険に必要なものは全てここで揃うとも言われている。


 街の中央には、夢の国もビックリの巨大な城が建っており、そこを中心として円形に街が広がっていて、中でも相当目を引くのが冒険者ギルドであった。

 神様は相当気を利かせてくれたのか、それともただの偶然なのか。

 あまりにも優遇された国に住んでいる中流階級の貴族ウィルベスター家に本日、新たな命が産まれ落ちた。


「あー、うー」


 ――喋れない。目が開かない。でも息はできる。

 確かに俺は今、ここで生を受けたんだ。

 って言うか、これまでの出来事も前世の記憶もちゃんとあるな。


「あら、あなたそっくりの顔ね。将来はイケメンかしら」


「でも口元は君に似てる。きっと素敵な笑顔をする子に育つよ」


 両親の声だろうか。優しそうな母と、威厳のありそうな父の声だ。

 自分は今、母の腕で抱かれ、父に手を握られ、二人の温もりを存分に感じている。


 なのになんでだろう。今の自分の両親はこの声の持ち主なのに、前世の両親を思い出してしまう。

 いや、もう切り替えないと。無責任は百も承知だが、こうなったらもうどうすることもできないのだ。


「あー、うーあー」


「うふふ、これからどんな大人になって行くのかしら」


 言語の発音が日本語にかなり近いな。まだ生まれたばかりで断定は出来ないけど、これならこの世界でもやっていけそうだ。


「おっと、私はもう行かないと。まだ安静にしてるんだよ」


「お仕事なのにごめんなさいね」


「いいんだよ。私たちの赤ちゃんだ、一刻も早く顔見てあげないと」


 そういえば、神様が『この世界に生まれた時に職業(ジョブ)を開示する』って言ってたな。

 それらしい兆候はまだないけど。


「ウィルベスターさん。これから赤ちゃんを生命安定装置に入れるので、こちらに」


「はい先生。よろしくお願いしますね」


 母の温かい腕から一転。男の筋肉質な腕が自分を包み込んだ。

 前世の記憶があって思考もちゃんとできるからか、男の腕に抱かれるのが何故だかすごく嫌だ。


「う、あ」


「あら、私の腕から離れたのがそんなに嫌だったのかしら? ちょっと泣いちゃってるわ」


「わ、私じゃない方がいいですね。君、この子を装置へ」


 そう言って医者は、近くにいた看護婦の方へ俺を渡した。

 母の腕ではないが、柔らかく寝心地がいいので、今回はこれで妥協しておくことにしよう。


「うふふ、現金な子ね。すぐ泣き止んだわ」


「それではウィルベスターさん。これから赤ちゃんのことについて色々とお話がありますので、しばらく待っていてください」


 そう言い残すと、俺を抱いている看護婦は部屋から出ていき、近くにあった別の部屋へと入って行く。

 薄らと他の赤ん坊の鳴き声も聞こえるってことは、この世界ではこれが当たり前のことなのだろう。


 何かを開ける音が聞こえると、看護婦の腕からタオルが敷かれているような場所へ移動されたのがわかる。

 先程耳にした装置とやらの中だろうか?

 事務的に自分の仕事を終えた看護婦は、装置を閉めると、いくつかボタンを押したのちに部屋から出ていった。


 何故だろう。母の腕の中でもないのに、少し心が安らいでしまう。

 生まれて少し時間が経ったからだろうか。意識的に目を開けることができそうだ。


 ここが一体どんなところか、見るのが少々楽しみだ。そう思いながら、今まさに開きそうな瞼に力を入れて、思いっきり目を開く。


「――あ?」


 おそらく、自分にしか見えていないのだろう。

 眼前に映し出された景色は、最初こそひどく眩しいものだったが、目が次第に慣れていくうちに不自然なものが目の前にあるとわかる。


 目がはっきりと見えるようになる頃には、それが神からの天啓だと言うことを理解できた。


 そこには、水色の画面のようなものがあり、その上にまるで強調するかのように黒く太い文字で文章が書かれていた。


『――転生者:百々平次さん あなたの職業(ジョブ)は『ニート』です』


「――ニート?」


 この世界で初めて喋った言葉は、パパでもママでもなく、『ニート』であった。

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