[第42話:Vires et infirmitatem]
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「…"悪魔の力"を、ナメるなよ。」
シホ・エレーナとスミレ・エレーナ、東雲 香織が対立している頃、時を同じくして、江神が対立していたのは、自らを『ミカエル』の使者と名乗る、カストレであった。
「…あらあら、そんなに睨みつけてると…歳取ってからシワが増えちゃうわよ?
…まぁ、歳を取れるかどうか、わからないけど…ね。」
カストレの美しい顔は、江神を見下しながら怪しい笑顔を見せていた。
「…見た目と内面は逆…特に女って生き物はね。あんたを見て納得したわ。
…あんたみたいなのが、女の価値を落としてるってわけね…。」
江神はカストレに負けじと、そう罵った。
手の内を明かす前に、2人は壮絶な口撃で相手の様子を伺っていた。
しかし、先に行動を開始したのは、カストレであった。
カストレは、一瞬にして江神の視界から姿を消す。
江神は冷静に神経を研ぎ澄ませながら、カストレの気配を伺った。
カチャッ…
その小さな音が、江神の頭部に迫る銃口の存在を表した。
ズドンッ!!!
カストレが引き金を引き、銃弾が放たれた瞬間、江神の背後から真っ黒なオーラが噴き出した。
銃弾は、その黒いオーラによって消滅し、その黒いオーラはそのまま大きな腕となってカストレを握りしめた。
「…甘かったね。私に背後なんてないよ。」
江神の口角がニヤリと笑みを浮かべる。
想定外の江神の攻撃に、カストレは身動きが取れずにただただ大きな黒い腕に掴まれるままなかった。
「…こいつ…。」
カストレの表情から余裕が消えた。
避けきれなかった不意の攻撃から逃れる手段を考えるのに必死な様子は、唇を噛み切る程の力で歯を食いしばっているその表情から窺える。
「…よかったね。美しい姿のまま、その生涯を終えることができて。
…まあ、あなたのその生き様は、決して美しいとは言えなさそうだけど。」
江神はそう言うと、右手を軽く動かして背中から飛び出た黒い大きな腕に指示を与える。
すると、黒い大きな腕は力いっぱいカストレを握りしめた。
関節が軋む音が響く。或いは、骨すら砕く音…。
「…それが、遺言?」
黒く大きな腕の中で、カストレはそう呟いてほくそ笑んだ。
その瞬間、カストレを包む黒く大きな腕の力が緩んだ。
「…なっ!!」
驚いて思わずそう呟いた江神の耳に、劈くような音が響き渡る。
"無音の衝撃波"が、カストレを中心に広がった。
「…だから、あんたたち"悪魔"は勝てっこないのよ…。
…だって私たち、"天使"だもの。」
そう言うカストレは、ゆっくりと地面に降り立った。
「…私たち"天使"が強くて、あんたたち"悪魔"が弱い。
これが世の定め…抗えっこないのよ。」
カストレはそう言いながら江神に近づくと、地面に蹲る江神を冷笑しながら見下ろした。
そして、彼女はその白くて細長い脚で、勢いよく江神の頭部を蹴り飛ばした…。
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一方、プロレスラーのような巨体の"ドグラス"と名乗る"七天使"に、分身攻撃を仕掛けた葉坂は…。
「はっはっはぁぁぁっ!!!!!
そんな子供騙しのような攻撃で、俺を倒せるとでも思ったかっ!小僧っ!!」
堂々と仁王立ちをしながら、口を大きく開けて高笑いを見せるドグラスが、そう叫んだ。
その向かいには、"悪魔の大鎌"にしがみつきながら立つのがやっとな、葉坂の姿があった。
「…ぅるせぇ…脳筋野郎…。」
葉坂は、ドグラスを睨みつけながらそう呟く…。
「ああ?なんだって??聞こえねぇなぁ!!!」
ドグラスはそう叫ぶと、大きな右拳を勢いよく地面に叩きつけた。
その場所から地面にヒビが入ると、稲妻のようなひび割れが葉坂の元へと向かってきた。
(…くっそっ…!何でもアリかよっ、こいつっ!!)
葉坂は慌てて背中から黒い羽を展開し、宙に舞ってその地割れを回避した。
「その動き…お見通しなんだよぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
宙に浮いた葉坂目掛けて、ドグラスがそう叫んだ。
葉坂が声のする方向を見ると、大きな岩の塊が勢いよく自分に向かって迫っていた。
(…なっ…!?)
ドォォォォォォォォン!!!!
大きな衝突音と共に、黒い爆煙を上げながら爆発が起きた。
その爆煙は、ドグラスの姿をも飲み込む程に広範囲に広がっていた。
「はぁっはっはぁぁぁっ!!!!
大した事ない小僧だったなぁぁぁ!!!」
大きく開けた口を天に向けながら、高笑いを見せるドグラスであった…が。
「…"|illusio・Saltatio Ferox《イリューシオ・サルタティオ フェロックス》"…っ!」
仁王立ちするドグラスの全身に、鋭い斬撃が襲い掛かった。
驚いて目を開いたドグラスの目元に、鋭い鎌の先が現れる。
「…大した事なくて悪かったな、脳筋。」
その"悪魔の大鎌"を持つ葉坂は、ドグラスを睨みつけながらそう言った。
ドグラスの投げつけた岩の塊とぶつかり、激しい爆破を起こした筈であったが、葉坂は少しよろけている程度であった。
「…ちょこまかと…小賢しいぞ小僧ぉぉぉっ!!!」
ドグラスは鎌の先を避けながら、大きな左腕を勢いよく葉坂に振りかぶった。
その腕が、葉坂の体に当たったと思われた途端、腕はするりとその体を擦り抜けていった。
煙のように消えてしまった葉坂の肉体であったが、次の瞬間にはドグラスの背後を奪っていた。
「…俺が小賢しいのか、お前が賢くねぇのか…。
間違いなく、後者だな。」
葉坂は、ドグラスを嘲笑うかのようにそう言った。
そして、次の攻撃の為に"悪魔の大鎌"を構えた。
「…"|illusio・imber meteororum《イリューシオ・インベル メテオロルム》"っ!!」




