[第39話:Exitium et creatio]
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「…そうだ、それでいい…。
争い、憎み、怒り、そしてその身に刻まれし"大罪"と共に朽ち果てるがいい、"七魔団"。」
"七魔団"と"七天使"の衝突からその身を退き、安全な場所から戦地を見下ろすクリス・ハンターは、
最早その様子を楽しんでいた。
「…あんたの好きにはさせないさ。その為に、俺はこうして再び戦地へ赴く事を決めたのだから。」
余裕を見せるクリスに、蒼松が近づいた。
蒼松はそう言うと、"白愉兎"の剣先をクリスに向けた。
「…蒼松 聡悟…。だからお前を生かしておきたくなかったのだよ。
"蒼白百合"の次は"|honey rabbits"たぁなぁ…。
…つくづくお前は、俺の計画の支障でしか無いんだよ。」
クリスは呆れながらそう言うと、"天使の銃"を蒼松に向けた。
「褒め言葉として受け取っておこうか…。
それより俺は、あんたに聞きたいことがある。」
蒼松の想定外の言葉に、クリスは驚いた表情を見せた。
「ほぅ…。何が聞きたいんだ?」
クリスは蒼松の質問に、興味深そうに聞き返した。
「…13年前の"東北研究施設爆発事故"。
その発端と思われる15年前のあんたら研究メンバーのいざこざを、俺たちは掴んでいる。
15年前、いやそれ以前からか?あんたは何を企んで、何をしようとしていた?」
蒼松はいきなり確信を突く質問を繰り出した。
クリスという男に、回り諄い言い方や話の流れは不要と判断したのだ。
クリスの計画の全貌を暴ければ、彼の危険な計画やこれまでの悲劇を清算できると蒼松は考えていた。
「ふっ…フハハハハハハハハァァァ!!!」
クリスは突然大笑いした。
「…何がおかしい。」
蒼松はクリスを睨みつけた。
蒼松の思惑通りにペラペラと本心を語る男ではない事は想定していたが、嘲笑われるとまでは蒼松も思っていなかった。
「…新たな時代を創造する為に、過去の不要なものを破壊する。
それに巻き込まれて犠牲になった、などと思う事が不幸なのだ。
新たな時代への土台となり、新たな時代に適応した者のみが生き残り、その幸せを手にする。
大昔から繰り返されている事ではないか?
無論、過去に囚われ続けてる事など新たな時代を創造するに相応しくはない。」
クリスの答えは、蒼松が求めていたそれではなかった。
しかしこの言葉こそ、クリスの計画を物語っているのだと蒼松は感じた。
クリスの計画する"新しい時代"に必要とされた"箱装"の技術と力。
しかし、彼の計画の全貌は依然分からずじまいである。
「…新たな時代の創造…神にでもなるつもりか?」
蒼松は、詳細を引き出そうと質問を続けた。
「…"集団"には"統治者"が必要だ…。
大きなものが、バランスを崩さぬように。
皆が平等たる幸せを手にする為に、その上に立つ"統治者"は必要不可欠。
それを俺が担う為の力が、"天使の力"って訳だ。」
クリスは、蒼松の想定を超えてアッサリとその計画の一部を口にした。
つまりクリスは、"新しい時代"の統治者となる為に、"天使の力"を得て"神"としてその時代を治めようといった事を語った。
「…寝言は寝てから言うんだナ。
あんたの様な独裁的な思考の人間に、大事な世の中を渡してたまるかヨ。」
そこへ、ジャッキーが姿を現した。
ジャッキーは"鷹目銃"の銃口をクリスに向けた。
その銃は、"狙撃銃"タイプから"機関銃"タイプに変わっていた。
「…小僧…。生意気になりやがって…。
お前らのせいで苦労した。
再び、世界中から精鋭を集う事になったのだからな…。
まあ、そのお陰でこうして、優秀な"七天使"を集める事に成功したがな。」
蒼松はハッとした。
クリスのその言葉から、1つの真実が浮かび上がった。
「…まさか…特殊部隊"デイジー"として集った連中は、いずれの全世界統治の為の"駒"だと思っていたという事かっ!」
蒼松の突然の叫びに、ジャッキーは驚いた。
「なんだ蒼松。話の分かるヤツだなぁ?
…嘗ての"特殊部隊"…。ありゃ俺からすれば"実験台"。
日本人だけの"駒"はリスクが高すぎる…。世界各国の精鋭を集い、強力な"駒"として全世界を統べる。
…まあ、"デイジー"は俺からすれば単なる"失敗作"。
なぁ?ジャッキー・小秋・マイケル。」
クリスは無慈悲にそう言い放った。
ジャッキーはこれまでに見せなかった動揺をあからさまに現していた。
「…何を言ってんダ?テメェ…。」
ジャッキーは俯いて銃口を下げてしまった。
その様子は、怒りに溢れていた…。
「…"デイジー"だけじゃねぇ。今の"BOX・FORCE"は、もう俺にとって用済みだ。
だからここで今、"七天使"の最後の試験運用を兼ねてお前たちを"破壊"する。」
クリスの計画はめちゃくちゃであった。
蒼松の質問の真意は謎のままであったが、直近で行われている行為に対する意味は、余りにも無慈悲で悲惨なものであった。
蒼松とジャッキーは、想像以上の真実にショックを隠せずにその場に立ち尽くすのみであった。
そんな2人を他所に、クリスは右手に持った"天使の剣"に眩しい程の光を放つオーラを纏った。
「…もう俺の邪魔をするな。ここで消えろ。
…"智炎の断罪"。」
自然の炎とは違う、太陽の様な橙色に燃える炎を纏った剣を、クリスは蒼松とジャッキー目掛けて振りかぶった。
…しかし、そこへ現れたのは…
「…"焔馬装:天馬落炎斬"っ!!!」
真っ赤な炎に包まれた剣を振りかぶった、
彩科院 鬼介であった。
彩科院の"裁馬刀"は、クリスの"天使の剣"と激しく激突する…。




