[第38話:Alia via]
目の前に現れた"七天使"がその素顔を露わにすると、堀崎は酷く動揺した。
「…お前…弓形…。」
白銀色の長髪を風に揺らした"七天使"は、堀崎の顔を見て目を細めた。
彼の名は、弓形 知尋。
堀崎と同じ弓道の上級者であった。
「…久しいね、ゆづ。まさか、こんなところで"悪魔ごっこ"してたとはね。」
弓形はそう言うと、堀崎に"天使の銃"を向けた。
「…正気か?お前こそ、自分が何してんのか分かってんのか?」
堀崎は、自身に銃口が向けられたことよりも、弓形が"七天使"だということに終始困惑している。
堀崎と弓形は、共に日本で1、2を争う弓道家であった。
互いに幼少期から、長きに渡る家同士の対立に巻き込まれていた。
その争いは、今は世界の命運を懸けた大きな戦いの一部となって目の前で勃発しようとしている…。
「…僕はね、この"ガブリエル"の力を手に入れた。
堀崎 結弦に相対するこの力が、君を倒す大きな力になる。
彼がそう言って与えてくれた力だ。この力を以てして、この長い家柄騒動に、そして平和を手にするために決着を着けよう。
ねぇ?ゆづ。」
弓形の握る"天使の銃"の引き金に、ジリジリと力が掛かる。
「…彼…まさか、それもクリス・ハンターだって言うのか!」
堀崎は動揺から、怒りの感情へと変わりそう叫んだ。
これまで、堀崎のクリスに対する憎悪感はそこまで大きくはなかった。
寧ろ、堀崎は樫間への忠誠心の元"七魔団"としての存在意義を確立していた。
しかし、それは一瞬にしてクリスに対する憎悪感でいっぱいとなった。
「…ゆづも、彼を知っているんだね。
そうであれば、君も僕たちと共に来ることを勧めるよ。
裏切り者の出来損ないよりも、彼のほうが君に真っ当な存在価値を与えてくれるだろう。」
そう言う弓形に、堀崎は心底呆然とした。
それと同時に、弓形に対しての怒りの炎を燃やし始めていた。
樫間という堀崎にとっての主への侮辱が、堀崎の感情を怒りへと変えてしまった。
「…俺に、ありったけの力を寄越せ。"ベルフェゴール"。
あいつを…あいつだけは、絶対倒すっ!」
堀崎を、禍々しい黒いオーラが包み込む。
『…いいのか?少年。我が力、全てを手にすれば人ではなくなる…。』
堀崎の脳内に、"ベルフェゴール"の声が響き渡る。
「…知るか、そんなもん。己の目的の為に"悪魔の力"を樫間は受け入れた。
だったら今、俺は俺の目的の為に"ベルフェゴール"を受け入れるっ!!」
堀崎はそう決意を叫ぶと、静かに目を閉じた。
『…後悔、ないんだな?』
「…後悔?するかよ。そんな"怠い"こと。」
堀崎がそう呟いて目を開ける。
その全身は、真っ黒なオーラに纏われて…。
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チャンの目の前に現れた"七天使"は、目にも止まらぬ速さでチャンに右拳を打ち出した。
その拳の勢いで、ローブのフードが捲れる。
チャンはその拳を素早く左手で防ぐと、相手の顔を見て驚愕した。
「…貴様…。」
「…暫く見ないと思っていたら、コソコソとヒーローごっこか。
随分探し回ったよ。なぁ?チャン・リーフォン。」
「…イ・シェンリン…。」
イ・シェンリンと呼ばれたその男が、チャンの相手であった。
彼はチャンに次ぐアジアNo.2の実力を誇る武闘家であった。
まるで韓国アイドルグループにいるかのような整った顔立ちとその鍛え抜かれた肉体から、
世間に名の知れた人物であった。
「"天使の力"と言ったなぁ。この"カシエル"という力は。
…しかし、貴様を倒すに剣も銃も必要無かろう。
この身を以てして、貴様を葬ってやろう。」
シェンリンはそう言うと、すぐに左足を蹴り上げた。
チャンはその足を右腕で素早く受け止める。
「…貴様にも…"クリス・ハンター"は手を出していたとはな…。」
「…ふっふっふっ…まさか、自分だけが選ばれたとでも思っていたのか?」
シェンリンは左足を下げて地面を強く踏みしめると、空いている左拳をチャンの顔面目掛けて放った。
チャンは、シェンリンの言葉に少し動揺したことで、その反応が遅れた。
右頬にシェンリンの拳を掠め、チャンの頬からは血が流れた。
「…甘い、甘いなぁ!チャン。…頂点に立つ者は、常に下界から這い上がる者に狙われているということを忘れるなぁぁぁ!!!」
シェンリンの勢いが止まることは無かった。
左拳がチャンの右頬を掠めたと同時に、右拳はチャンを下から狙っていた。
シェンリンは叫ぶと同時に、右拳をチャンの顎目掛けて突き上げた。
その拳を、チャンは避けることが出来ずにまともに食らうと、大きくその場から吹き飛ばされた。
チャンは少しの間気を失いかけた。
(…常に下界から這い上がる者に狙われている…忘れたことなど一度もない…。
…"BOX・FORCE"も"七魔団"も、俺は常に下から這い上がる者の立場だ…!)
チャンの強い意志は、その身から放つ"悪魔"のオーラとなって現れた。
そのオーラは、チャンの全身を包み込む。
『…力を求めるか?チャン・リーフォン。』
その声は、チャンの脳内に響き渡る。
(…俺が求めるのは、力ではない。
"善"の優位する"平和"のみだっ!!!)
チャンの全身が黒いオーラで包まれた。
その姿は、嘗ての"ウルセウス"の様に…。
「…かかって来い、イ・シェンリン。
俺が貴様諸共、"七天使"と"クリス・ハンター0"を葬り、俺の目的を達成させる。」
チャンがそう言うと、その両手には黒く輝く鋼鉄のグローブの様なものが現れた。
「…"七魔装:ベルゼブブ"っ!!!」




