[第37話:Angelus purgationem]
「…お荷物だったら何だって言うんだ。
私は再び、戦う場所を手に入れた。…邪魔をするなぁぁ!!」
スミレの覇気は、"箱装"のオーラとなってシホを圧倒した。
"七天使"となって現れた
スミレ・エレーナの実妹、シホ・エレーナ。
スミレと同様、元フランス軍人を担っていたが、その様に見えないスタイルの良さと美貌を彼女は持っていた。
「…お姉ちゃん、昔から変わらないね。
パパが亡くなった時も、そうやって真っ直ぐに…。
…でも、それで何か変わった?パパは帰ってきた?
…抗えないのよ、運命からは。
捻じ曲げようとした運命に、"過去"に囚われているお姉ちゃんを、私が解放してあげるわ。」
そう言って、シホは両手で持った剣の持ち手から左手を離した。
そしてその手を挙げ、アーサーがやったのと同じように指を鳴らした。
「…"無音の警告"。」
その名の通り、音のしない衝撃波がスミレを襲う。
覇気となって放たれていたスミレの"箱装"のオーラは、一瞬にして"無"と化された。
「…なっ…!?」
驚いたのも束の間、シホの左手には"天使の銃"が握られていた。
シホは素早くその銃口を、姉であるスミレに向けた。
「…もう諦めなって、お姉ちゃん。
"七天使"が統治する、平和な世界で幸せに暮らしてよ。」
そう言って、シホは"天使の銃"の引き金を引いた。
"七天使"の面々が、それぞれ"七魔団"へと単独攻撃を始めた。
「…七魔団、フォーメーション"|Diaboli Dispergat"っ!」
チャンの指示する掛け声と共に、七魔団は目前の"七天使"に全神経を集中させた。
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江神と対峙した"七天使"は、華麗に身に纏っていたローブを剥ぎ捨てた。
雑誌モデルのような長身とスタイルの良さを兼ね揃えた彼女は、長く靡かせた髪を美しく掻き上げると、江神を見下ろして言った。
「…あらあら、可愛らしい子…そして、可哀想な子。
私は"七天使"『ミカエル』の使者、カストレ・ケート。」
カストレ・ケートと名乗る彼女を、江神は睨みつけた。
江神の"悪魔の巨兵"は、上半身が権化してカストレにプレッシャーを与えた。
「…あなたの方が、よっぽど可哀想に見えるけどね。」
江神がそう言うと、カストレは不思議そうな顔をした。
「あら、そうかしら?私は自らこの力を望んで、そして"七天使"となった。
"悪魔"の力を突然与えられた貴方たちとは違うのよ?」
カストレは余裕の表情である。
それは、江神のまだ少し幼い雰囲気を嘲笑うかのような、大人の余裕とも見えた。
江神は焦りを隠しながらも、カストレに先手を打つために思考を巡らせた。
「…"悪魔の力"を、ナメるなよ。」
江神の焦りは、等々その一歩を踏み出してしまった。
"悪魔の巨兵"は、両腕をカストレに伸ばした…。
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葉坂は躊躇うことなく、対峙する"七天使"に"悪魔の大鎌"を振り下ろした。
"七天使"は、その刃先を逆手に持った"天使の剣"で防ぐ。
「…大人しく、消えろよ。」
葉坂は目一杯"悪魔の大鎌"に力を加えるが、その剣はびくともしなかった。
「それはこっちの台詞だ。…消えろ、"七魔団"…。」
その声は低い男の声であった。
次の瞬間、男の荒い鼻息と共に七天使のローブが破れ弾けた。
中から現れたのは、プロレスラーのような屈強な男であった。
赤く刈り上げられた短髪に、海外マフィアのような厳ついピアスで着飾ったその男は、
真っ白な歯を見せながら大笑いした。
「俺は、ドグラス。"七天使"最強のパワープレイヤー。
てめぇみたいな弱小悪魔は、俺がぺしゃんこにぶっ潰してやるよ!!!」
ドグラスと名乗るその男は、そう叫ぶと葉坂の"悪魔の大鎌"を押し飛ばした。
"天使の力"なのか彼自身の力なのか、葉坂は勢いよく吹き飛ばされた。
葉坂は上手く受け身を取りながら、地面を2、3回転したところで膝を着いた。
「…調子に乗るなよ脳筋…。」
葉坂は俯いたままそう呟いて、ほくそ笑んだ。
すると、ドグラスの周囲に10体の葉坂の影が現れる。
「…俺はてめぇみたいな脳筋が1番嫌いなんだよ…。
…"|Illusio・caedes・coetus"っっ!!!」
"幻影殺戮団"。
葉坂の殺意は、幻を現実にするように形となってドグラスに襲撃する…。
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その"七天使"は、早々にローブのフードを剥ぎ鋭い目で道影を睨んでいた。
「…女ぁ、まさかてめぇが俺の相手だなんて言うんじゃねぇだろうなぁ?」
小麦色の長髪を靡かせながら、左右の色の違う瞳で睨む"七天使"の女に道影は呆れながらそう言った。
道影は、"悪魔の大槌"を気怠そうに肩に担いで心底退屈な気分を曝け出していた。
「…貴様は中々の手練れかと思っていたが…どうやらただの気性の荒い猫と言ったところか。」
その女は、そう言いながら少し顎を突き出しながら道影を見下すように睨んだ。
道影は、その言葉と態度に完全に怒りを露わにした。
「…ぶち殺されてぇのか?」
道影は、額に青筋を浮かべながら舌を鳴らしてそう言った。
気怠そうに担いでいた"悪魔の大槌"をゆっくり肩から下ろすと、真っ黒なオーラを全身から放出した。
その姿を見て、女は軽く鼻で笑ってみせた。
「…ふっ…。下品な雄猫など、私の興味の範疇にも入らない。
さっさと掃除してしまいましょう。」
更に道影に対する挑発の言葉を放つと、その女は道影に"天使の銃"の銃口を向けた。
「…女ぁ、てめぇのその言葉でてめぇのその人生が終わることを、後悔しながらくたばりやがれぇ!!!」
道影は自らに向けられた銃口をお構いなしに、そう叫びながら"悪魔の大槌"を振りかぶった。
「…さっきから…女、女って本当下品な雄猫ね。
私は、シェリナ・リオン。智と徳を以て"悪"を排除し、天地に"平和"をもたらす者よ。」




