[第36話:Diabolus et Angelus]
「…ふっふっふっ…我々は"七天使"。
この地を統治する、"天使の力"を与えられた選ばれし"神"だ。」
神秘的な高音と同時に、白いローブの人影たちの頭上に"天使の輪"が顕現した。
そして彼らの背中には、以前パンダが見せたものと同じ"天使の羽"も現れた。
「…"七天使"…だと…!?」
樫間が衝撃を受けたのも束の間、白いローブの男は右手の銃をクルッと宙に放ると、再び右手で指を鳴らした。
またも、樫間たちを無音の衝撃波が襲う。
「…何なんだっ!?この攻撃はっ!」
樫間が衝撃波から身を守る為、両手を防ぐようにして構えた。
その時…
「…"神炎"っ!」
白いローブの男は、樫間目掛けて飛び上がった。
その左手の剣は、"炎"に包まれながら真っ直ぐ樫間に向けられている。
"炎"が、みるみるうちにその"ローブ"を燃やしていく。
「…ちっ、小賢しいっ!」
樫間は、その熱気から敵の襲撃を察知して、咄嗟に"悪魔の双剣"を構えた。
「…"魔双斬"っ!」
暗黒のオーラを纏った"悪魔の双剣"が、"天使の剣"を間一髪で防いだ。
その剣を握る男の姿は、西洋系の金髪美青年で
その装いはまるで"貴族"と言い表すのに相応しい格好であった。
その目は、左右非対称の輝きで樫間を睨みつけている。
「…終わりだよ、"七魔団"。そして、樫間 紘紀…っ!」
「…貴様…何者だっ!」
天使の美青年は樫間に叫びながら、その剣を強く押し込んだ。
負けじとその剣を防ぐ樫間は、目の前に現れた異様な姿の青年に向かってそう言った。
「…我が名は、アーサー…。
アーサー・オリエルド。
"七天使"が1人、"純潔"を以て悪魔を処す者。」
アーサーと名乗るその男は、再び握った右手の銃を樫間に向けた。
「…"神光"。」
その銃口は、眩しいほどの光りに包まれた。
そして、一閃の光の弾丸が樫間に向かって放たれる。
樫間は咄嗟に、2つの剣を軸にしながら身体を横に移動させて、その弾線を回避した。
(…何なんだ…、この力…。)
かつての"自然エネルギー"とは違う。
樫間は、その違和感を抱きながらアーサーの姿を追った。
「…ふっ…"悪魔の力"…。ふざけた能力だ全く。」
アーサーはそう呟くと、今度は左手の剣に光を灯しながら樫間に向かって突っ込んだ。
樫間は、向かい来るアーサーの剣を"黒刀"で受け止めた。
その"黒刀"からは、僅かに暗黒のオーラが滲み出ていた…。
樫間は"白黒境界"を発動させる事で、相手の速度を遅らせ確実に仕留める策を瞬時に決行した。
「…"白黒境界"…。」
「…効かねぇなぁ!」
樫間が"白黒境界"を発動しようと、その名を呟いたのと同時に、アーサーは樫間の行為を嘲笑うかのようにそう叫んだ。
「…"天使の力"は、"悪魔"を総裁する為の力なのさ!」
アーサーの身体から、白銀に輝くオーラが噴出した。
"悪魔"と対になる"天使"。
その力の未知さに、樫間は思うように攻める事が出来ずにいる。
(…どうする…こいつを対処する最適解…。)
樫間はアーサーを視線に捉えながら、その脳内で様々なシュミレーションを試みた。
その時、地上から叫び声が聞こえた。
「…樫間っっっっ!!!!」
声の主はチャンであった。
アーサーに集中している樫間を狙い、"七天使"の装束の1人が樫間を攻撃しようとしていた。
その声によってなのか、樫間を襲撃する"七天使"の人影を咄嗟に阻止した者が現れた。
"七天使"が突き出した剣の先に鎖が絡まり、その進撃を阻まれていた。
「…鈍ったか、樫間 紘紀。戦士たる者、いつ何時敵の襲撃に備えておけ。」
その剣を阻止したのは、"BOX・FORCE"のスミレ・エレーナであった。
ヌンチャク状の武器である"猫乃牙"の繋ぎ目の鎖で、その剣はしっかり固定されている。
「…スミレ…エレーナ…。」
樫間は驚きと感謝と感情の入り混じったようなハッキリしない声でその名を呟いた。
樫間には、一度自らの刃を向けた相手に助けられた事が上手く受け入れられていないようであった。
「…久しぶりね。」
その時、"七天使"の装束の人物がそう呟いた。
その声は女性の声で、スミレに対してそう言っていた。
「…っ….!まさかっ!」
スミレはその声に、あからさまに動揺していた。
"猫乃牙"を持つ右手を勢いよく引いて相手との距離を詰めると、左手で"七天使"の装束に隠れたその人物のフードを勢いよく剥いだ。
…スミレは、その相手の顔に衝撃を受けた…。
「…何年振りかしら?お姉ちゃん?」
そう言う彼女の顔は、どこかスミレに雰囲気が似ていた。
「…シホ…まさか…!?」
スミレが、今までにない程に動揺していた。
"七天使"の装束の彼女の名は、シホ・エレーナ。
スミレの実妹であった…。
「…お姉ちゃん…まさかまだ軍人気取り?
…私たちは軍人にとってお荷物。もうそんな軍人の真似事、辞めたら?」
シホ・エレーナはそう言って剣を押し込む力を更に強めた。
シホの言葉に動揺しながらも、スミレは引けを取らなかった。
「…お荷物だったら何だって言うんだ。
私は再び、戦う場所を手に入れた。…邪魔をするなぁぁ!!」
スミレの覇気は、"箱装"のオーラとなってシホを圧倒した。
"七天使"との対立は、樫間の目的以上に深く険しい戦いを強いることとなる…。




