[第29話:Grata]
ドォォォォォォォォォォォォォン!!!!!
大きな爆発音と共に、樫間たち"七魔団"のいる地面が揺れ始めた。
「…地震…いや違うな…。」
立つのがやっとな程揺れている中で、樫間は冷静に状況判断した。
すると、揺れが激しくなるにつれ地面に亀裂が入り、程なくしてビルの真下の地面から隆起を始めた。
「…"魔兵護壁"…。」
咄嗟に江神は、"悪魔の巨兵"の腕で七魔団全員を包み込んで防御をした。
揺れが収まると、辺り一面の地面が歪んでいた。
そして、本部ビルの地下及び1階付近からは黒い煙が溢れ出ていた。
江神はゆっくり地面に団員たちを下ろした。
「…江神、ありがとう助かった。」
堀崎はそう言って、江神の頭を撫でた。
「…やめてよ…。守ったつもりはない。
あくまでも"貸し"だから。」
江神は冷たくそう言い放ったが、撫でられるのを拒否はしなかった。
しかしその瞬間、堀崎は煙の上がる方に視線を移し"千里眼"を発動させた。
「…誰か…来るぞ…。」
堀崎がそう呟くと、七魔団は一斉に"七魔箱"を解放して襲撃に備えた。
「…中々やるじゃないか。なぁ?樫間…。」
爆煙の中から現れたのは、クリスティーナ・パンダであった。
トレードマークである、パンダの被り物と白衣は爆発によって所々黒く汚れていた。
「…遂に現れたな…。」
樫間はそう呟くと、一瞬にして仲間の元を離れてパンダに斬りかかった。
しかし、パンダの周囲には見えない壁が存在し、樫間の攻撃はそれに憚れてしまった。
「…らしくねぇなぁ?樫間。
"BOX・FORCE"を離れて、戦闘スタイル変えちまったのか?」
パンダは白衣のポケットに両手を入れたまま、向かいくる樫間を見ていた。
「…貴様…。」
樫間はそう呟いた。
その姿を見ていた七魔団の面々は、樫間の超高速攻撃を防いだパンダに驚きを隠せずにいた。
「…樫間の攻撃を…防いでいる…。」
それは、道影程の強心の持ち主でも同じであった。
「…樫間…いい事を教えてやろう。
"七魔箱"には、対となる"箱装"が存在する。」
パンダはそう言うと、ポケットから右手を出してその手を上に挙げると、指を鳴らした。
すると、樫間の元へ隕石のような勢いで落下してくる物体が現れた。
樫間がそれを避けると、地面へ勢いよく落下して大きな衝撃音と砂煙が巻き起こった。
砂煙が晴れると、クリスティーナ・パンダの背中に金色に光る羽が生えていた。
「…"BOX・FORCE"も"七魔団"も、もはや用済みだ…。」
パンダはそう言うと、銃の様な武器を樫間に向けた。
その引き金を引くと同時に、銃口からは眩しい程の光が線の様に放たれた。
樫間はその光線を"白刀"で防ぐと、光は真っ二つに分かれて天と地に弾かれた。
その瞬間、本部入り口に一台の車が勢いよく入り込んできた。
車は急停車すると、運転席から老人が慌ただしく飛び出て、後部座席の扉を開けた。
後部座席から現れたのは、全身に応急処置を施した彩科院であった。
「…どうなっている…。これは一体…。」
彩科院は、変わり果てた本部の姿に呆然としていた。
「…これはこれは、鬼介じゃないか。
…なんだ?その傷。まさか、"七魔団"に負けた。なんて言うんじゃないだろうなぁ?」
パンダは少し挑発的に彩科院にそう言った。
「…申し訳…ございません…。副長…。」
彩科院は痛いところを突かれた事で萎縮し、素直にパンダに謝罪した。
「…これだから"BOX・FORCE"は…。
もういい。貴様らは用済みだ。」
パンダはそう吐き捨てた。
彩科院は、その言葉が酷く刺さったのか何も言えずにいた。
「…さっきから黙って聞いてりゃ…樫間ぁ、こいつは俺がぶっ殺すっ!」
一部始終を目の当たりにした道影は、その怒りが抑えきれずに"悪魔の大槌"を構えた。
「下がれ、道影。」
今にもパンダに襲い掛かろうとしている道影を、樫間がそう言って静止した。
樫間に強く言われた道影は、驚いた様にその動きを止めた。
「…いい加減、さっさとその化けの皮を剥がしたらどうだ?」
樫間もまた、怒りを露わにしていた。
樫間を覆う暗黒のオーラが、勢いを増していく。
「…ほぅ?俺とやり合おうって気か…。
上等だ。…但し…。」
パンダはそう言うと、再び銃口を樫間に向けた。
「…次は容赦はしない。」
緊迫した空気が、辺りを覆い尽くした。
"悪魔"のオーラを全開に現せた樫間と、“天使"の様な金の大きな羽を広げるパンダ。
一触即発と思われた…。
その瞬間。
上空から、パンダ目掛けて銃弾の様なものが撃ち込まれた。
「…今度は誰だっ!」
樫間は上空を見上げた。
太陽の光を背に、何やら人影が地上に向かって落下している。
「…やぁ。待たせたね。」
すると、その人影は
その手に持つ大きな武器から、再び複数弾射撃を放った。
それが、樫間とパンダのちょうど間に放たれると
その場の地面には水の様なものが現れた。
その人影は、それによって柔らかくなった地面に、静かに着地した。
「…またこうして、皆の前に姿を見せるとは思ってなかったよ。
"|honey rabbits"の、お出ましだ。」




