[第26話:Expeditio]
BOX・FORCE本部は、かつてない程に騒然としていた。
「…こちら情報通信チーム時水っ!
"BOX・FORCE"総員に緊急通信っ!
第1、2、3真隊、全ての"箱装"反応消失っ!
救護治癒チーム実村総医長、直ちに各所への救護部隊の派遣を…!
それから…」
時水の叫び声が、本部全てのフロアに響き渡った。
情報通信室は、そんな時水の声さえも掻き消される程に慌ただしかった。
「どう言うことだ!何故現場の映像データが採取できない!」
「…ダメです!各エリアの全ての防犯カメラ及びそれに付随する映像記録媒体にバグが発生して、正確な映像データが採取できません!」
「諜報部隊に連絡取れてるのか?直ぐに各隊の救護支援と、奴らの追跡を急がせろ!」
「諜報部隊は既に連絡済みです!」
あちこちから、情報収集や各連絡に伴うやりとりが騒々しく行われていた。
すると…。
「うるせぇ!!!!てめぇら!!!!」
情報通信室に怒号が響いた。
声の主は、天原総司令であった。
「…ごちゃごちゃごちゃごちゃ騒いでねぇで、さっさと冷静に情報処理しやがれっ!!」
普段は比較的冷静な天原が、鬼のような形相をしている事からも、本部はかなり深刻な状況となっていた。
その時、恐る恐る時水が叫んだ。
「…7つの…"七魔団"と思われる反応が…急速に"本部"に迫っていますっ!!!!」
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そこに真っ先に辿り着いたのは、樫間と東雲であった。
「…さて、どうやって炙り出してやろうか…。」
樫間がそう呟くと、チャンと葉坂、そして堀崎、道影、江神が現れた。
「…待たせたな。」
「さて、どうするよ。団長。」
樫間は大きく息を吸って、天を仰いだ。
そして、顔を下ろすとゆっくりとその策を命じた。
「…各員に命じる。
正面突破だ。能力の使用は問わない。
但し、余計な犠牲を出す必要はない。
ここにいる者達は皆、奴に騙されている。
目的は奴だ。奴以外の命は奪うな。」
樫間がそう言うと、道影が早くも移動体勢に入った。
「…誰が1番早く見つけられるか、勝負ってところだな!」
道影はそう言った瞬間、姿を消した。
「…ったく…。」
道影の去った後を見て、チャンは呆れた顔を見せた。
「…いや?あいつは賢い。ほら。」
樫間はそう言うと、チャンに上を見ろと目で合図した。
道影は、"浮遊"の能力で本部ビルの40階相当の高さまで飛び上がっていた。
「…行くぞ。」
樫間のその一言で、"七魔団"は各々本部に突入して行った。
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『"七魔団"が本部に突入を開始っ!
…諜報特殊部隊、対応願いますっ!』
時水の声が、諜報員通信に流れた。
「…新崎総務官、我々出ますよ。」
諜報員司令室では、全身に軍事武装を施した男が新崎にそう言った。
「ああ。頼んだぞ、今駒。
俺が出なくてもいいようにな。」
新崎は、男を"今駒"と呼びそう言った。
「了解。」
今駒は、新崎に敬礼すると通信機に手を当てた。
「今駒より全諜報特殊部隊に継ぐ。
命の有無は問わない。奴らの侵攻を阻止せよっ!」
その司令と共に、本部内に一斉に武装集団が現れた。
"諜報特殊部隊"
普段、捜査や探索を主に行う諜報員の中でも、主に武力介入に特化した隊員を指す。
いわば、特殊武装戦闘を行う主戦隊員である彩科院達の後ろに控えている戦闘員なのだ。
まず、特殊部隊と遭遇したのは葉坂であった。
「…樫間、"BOX・FORCE"ってのは
"箱装"以外の通常戦闘員がいるなんて聞いてねぇぞ?」
葉坂は通信機で樫間にそう言った。
『…構うな。目標は奴だ。
邪魔をするようなら消さない程度に処理しろ。』
樫間の目的はあくまでも"|クリスティーナ・パンダ《やつ》"1人であった。
それ以外の犠牲を出さずに、という樫間の指示が
あくまでも憎むべき相手は1人のみという樫間の考えである。
「…わかったよ。…但し、保障はしない。」
葉坂はそう言うと、階段を駆け上がって行った。
上段に待ち構える特殊部隊は、銃を構えて葉坂を威嚇した。
「止まれ!七魔団!」
葉坂はその忠告を聞くわけもなく、そのまま突き進んだ。
「構わん!撃てぇぇぇ!!!」
全身を武装で覆った特殊部隊員の1人がそう言うと、4人ほどその場にいた他の隊員達が一斉に銃を撃ち始めた。
もちろん、彼らが用いるのは"実弾"である。
「…やれやれ。」
葉坂はそう言うと、"分身"によってその姿を増幅させた。
4人の特殊部隊員達が照準に迷う中、葉坂は次々に隊員を蹴散らしていった。
間も無くして、5人いた特殊部隊員達は全員気絶させられていた。
そこに、ゆっくりと階段を登る足音が響き渡る。
葉坂は床に転がる薬莢を1つ拾い上げて、すぐさま投げ捨てた。
「こんなんに撃たれたらたまったもんじゃない。
…勘弁してくれよ全く。」
そう呟くと、葉坂は更に上の階を目指して小走りした。
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一方、能力によって40階まで飛び上がった道影は
窓ガラスを"悪魔の大槌"で叩き割り、内部へ侵入した。
そしてもう1人、"物体操作"の能力を使い、東雲はビルのエレベーターでの最上階である40階まで高速移動してきた。
その上に更に5階ほどある為、2人ともそこから自力で上昇しようとしていた。
道影が侵入した40階は、広い会議室となっている。
そこへ、エレベーターが開いて東雲が現れた。
「…あら、道影くんじゃない。」
東雲は何処か軽い口調でそう言った。
「…東雲、どうやって…。」
道影は、自身の十八番である"浮遊"で上層階へ誰よりも先に向かったつもりであった。
しかし、同時に目の前に現れた東雲の姿に、仲間ながら疑いの目を向けた。
「私の"物体操作"の能力よ。
途中で止まる事を許さない、これが1番早い突破方法かなぁって。」
東雲はそう言うと、"悪魔の旋棍"を両手に顕現させてその身を黒いオーラで包んだ。
そこに、非常階段口から次々に特殊部隊員が銃を持って現れた。
「貴様ら!武器を捨てて両手を上げろっ!
さもなくば、命はないっ!」
先頭に立つ特殊部隊員は、現れるなり2人に向かってそう叫んだ。
「…はっはっはっ!!笑わせてくれんじゃねぇか。
…俺たちが"武器"を捨てるわけねぇだろ?」
道影はそう言って嘲笑った。
そして、東雲に耳打ちした。
「…こうなりゃしゃあねぇ。お前と共闘してやるよ。
期待してるぜ?お前の"悪魔の旋棍"とやらをな。」
道影がそう言うと、東雲も返答した。
「…あら、君って優しいのね。
君にこそ、期待してるよ。元番長さん!」
東雲がそう言った瞬間、特殊部隊員たち約20名程が一斉にマシンガンの引き金を引いた…。




