[第13話:Operatio impetum]
樫間は、事前に団員たちに特殊通信装置を渡していた。
「…堀崎、各部隊の潜伏ポイントを提示しろ。」
『…部隊Aは、樫間の予想通り。例の大屋敷だ。』
堀崎は、その能力の示すポイントを樫間に伝えた。
『続けて、部隊B。
渋谷区神泉町の住宅の1つに反応がある。』
「了解。チャン、そこは旧第2部隊のシェアハウスだ。住宅街だから、奴らを広い場所に誘き寄せろ。」
樫間の指示に、チャンが反応した。
『OK。近くの大学付近まで誘き寄せる。』
『続けるぞ樫間。樫間たちの向かうべき場所は、
新宿だ。』
「…新宿…。」
堀崎が割り出したポイントに対し、樫間は意味深な反応を示した。
『それじゃ、みんな頼むぜ。…こっちはもうすぐ辿り着く。切るぞ!』
堀崎はそう言うと、通信を切った。
_最初にポイントに辿り着いたのは、道影、江神、堀崎であった。
「なんだこの屋敷。デカすぎんだろ。」
道影は、"リヴァイアサン"の能力である"浮遊"を使い、空中からそのポイントを眺めていた。
「…"彩科院家"…。なるほど、相手は相当な御坊ちゃまってことね。」
江神は静かにそう呟いた。
「あぁ?なんか言ったか?聞こえねぇよ。」
地上にいる堀崎と江神よりも、10mほど空中にいる道影は、2人の方に耳を傾けながらそう言った。
「なんでもねぇよ。ここは敵さんの屋敷だ…。」
堀崎が大声で道影にそう言った途端、その屋敷の大きな門を、道影が"巨大ハンマー"で破壊した。
「…んだよ面白くねぇなぁ。セキュリティガバガバじゃねぇかよ。」
道影はがっかりしてそう言った。
すると、破壊の砂煙の奥に3人の人影が現れた。
「…貴様…よくも我が家の大事な門を破壊してくれたな…!」
怒りの声の主は、彩科院であった。
「おぉ?やぁ、御坊ちゃん。…殺しにきたよ?」
道影はそう言うと、彩科院目掛けて突撃した。
「み、道影っ!無闇に攻め入るな!」
堀崎がそう叫んだのも束の間、彩科院の"裁馬刀"は火を噴いた。
「…消し炭にしてやるよっ!」
彩科院が"裁馬刀"の剣先を道影に向けた途端、彩科の左から急速に近づく物体が現れた。
「…ちょろいぜ。隊長さんよぉ!!」
道影が叫んだ。
彩科院は、"巨大ハンマー"を体の左側全面で食らった。
彩科院は、50mほど奥の屋敷の外壁まで吹き飛ばされた。
「っ…!隊長っ!」
白峰はそう叫ぶと、咄嗟に"炎鳥皇"を構えた。
「…させねぇよ。」
その白峰を狙って、"悪魔弓"の矢を引く堀崎はそう呟いた。
堀崎の"ベルフェゴール"は、禍々しく黒いオーラを発していた。
すると、堀崎目掛けて3発の弾丸が撃ち込まれた。
堀崎は、体制を崩しながらも間一髪でその弾丸を避けた。しかし、弓への力が弱まった事で、白峰はその攻撃を免れた。
「…"ベルフェゴール"に奇襲とはいい度胸だな…。その居場所、炙り出してやる。」
堀崎はそう言うと、弓の構えを辞めて"千里眼"を発動させた。
屋敷の庭園の至る所に視線を送ると、小さな池の畔に置かれた大きな石の影に、その存在を確認した。
「…見つけたぜ。蛇のようにコソコソと隠れやがって…。」
堀崎がそう呟いた途端、彼は驚いた顔を見せた。
その影から感じるオーラは、"狙撃"であったからだ。
「もたもたしてるとぶん殴るぞ堀崎ぃぃぃ!!」
その声と共に、道影の"巨大ハンマー"が堀崎に向かってきた。
瞬時の反応で堀崎がそれを避けると、微かに弾丸の当たる音が聞こえた。
道影の"リヴァイアサン"を避けた事で、堀崎は狙撃を免れたのだ。
「…ったく、危ねぇぞ道影ぇ!」
堀崎は、尻もちをつきながら道影にそう叫んだ。
「危ねぇのはどっちだ?堀崎。」
道影は堀崎を睨みながらそう言うと、再び彩科院を狙って"リヴァイアサン"を振り回した。
すると、堀崎の身体を覆うように禍々しい黒いオーラの大きな腕が現れた。
「…気をつけて、堀崎さん。」
堀崎が振り向くと、すぐ後ろにポツンと立っている江神の背中から、それは現れていた。
「…あ、ありがとう。江神。」
堀崎は戸惑いながらそう言った。
「…狙撃者は私が炙り出す。その間、彼の相手は頼むわよ。」
江神はそう言うと、庭園の周囲を見渡した。
彼女の前髪は、目を覆うほど長く伸びていたが
どうやら確実に見えている様であった。
「…あの"女"ね。」
江神がそう呟いた時には既に、その姿は一瞬にして消えていた。
「…江神…何者なんだ。」
堀崎は呆気に取られていたが、気を取り直して白峰の姿を捉えた。
一方、大屋敷の庭園を破壊する程の勢いで暴れ回る道影と、それを相手する彩科院。
「ふっふっふっ…楽しいなぁ。楽しいぜ!隊長さんよぉ!
チンピラ共とやり合うより断然楽しいぃ!」
狂気の表情でそう叫びながら、道影は"リヴァイアサン"を振り回した。
「…貴様…樫間の一味か…。」
彩科院は、道影の攻撃を必死に避けながらそう呟いた。
「…俺は悪魔…"リヴァイアサン"だぁぁ!」
道影は、彩科院に向かってそう咆哮した。
「…悪魔だと…?NAMELESSではないということか…?」
彩科院は、道影を睨みつけながら必死に考察した。
かつて、"ヴァリアル"と対抗していた彩科院すらも
遊ぶ様に翻弄する道影に、彼は驚いていた。
「…ふっふっ、その答え、生きて辿り着けるといいなぁぁ!!!」
道影の姿は、"悪魔"そのものであった。




