[第11話:Operatio Iincipit]
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樫間たち"七魔団"の襲撃から一夜明け、
BOX・FORCEの面々は混乱していた。
「…一体どうなってやがる…。…樫間が、襲撃だと…!?」
樫間率いる七魔団との軽い抗戦による傷跡が残る、彩科院 鬼介はそう呟いた。
日本特殊防衛組織「BOX・FORCE」本部のとある会議室に、隊員たちは集められた。
ガチャ…。
会議室の扉が開くと、そこには楢迫とクリスティーナ・パンダの姿があった。
楢迫の表情は、緊迫していた。
「…まさか…。彼が生きていた事に対する驚きよりも、今はそんな彼が我々を襲撃してきた事に驚いている…。」
楢迫は、そう言って大きなため息をついた。
隊員たちも皆、俯いたり暗い表情をしている。
すると、皆のいる会議室の大きなモニターに
突然光が灯った。
『…皆さん、お疲れ様です…。通信情報チーム副司令、時水です。』
その声は、時水 維智郎であった。
『…先程の戦闘状況を、本部敷地内に設置された複数のカメラ映像を元に、解析しました。
その結果…樫間さん達謎の7人組が使用していた武器ですが、あれは"箱装"と見て間違いないでしょう。
そして、彼の武器と共に使用されていた謎の力…あの動力は…。』
時水はそう言いかけると、言葉を詰まらせた。
『…あの力、かつて皆さんと戦闘を行っていた
"NAMELESS"と同じ力だという事が、過去のデータとの照合で判明しました…。』
時水の声は暗かった。
一同も、その言葉を聞いて唖然としていた。
「…"NAMELESS"と、同じ力…。」
矢島は一言そう呟いた。
『…はい。照合の結果、99.9%一致と出ていました…。』
時水は、やっとの思いでそう言った。
「…奴らの目的は、我々を潰す事…。
『我々"七魔団"に潰されないように。』…。樫間はそう言っていた。」
リズは、顎に手を当て思い出すようにそう言った。
「…でもなんで突然…かっしーが私たちを襲撃するなんて…。」
迅雷寺は、涙声でそう言った。
「…彼には何か考えがあるはずだ。…きっと…。」
その迅雷寺の肩に手を当て、白峰はそう言った。
2人にとって、今回の出来事は"BOX・FORCE"の誰よりもショックが大きかった。
「…はぁ。…今分かる範囲での、奴ら"七魔団"の目的が我々を潰す事なのであれば、間違いなくもう一度襲撃に来る。」
彩科院が、やっと口を開いた。
彩科院はそう言って立ち上がると、楢迫とパンダの正面へと歩み寄った。
「我々、日本特殊防衛組織"BOX・FORCE"。
…我々を襲撃する"七魔団"なる集団を、必ずや抑え込んでみせます。」
彩科院は、2人にそう宣言した。
「…宜しく頼むよ、鬼介。
…やむを得ない場合は…相手が樫間だろうと、容赦はするなよ。」
パンダは、静かな声でそう言った。
その言葉を聞いた彩科院は、クルッと身を180度回転させ隊員たちに向かって言った。
「…いいか。相手は樫間率いる"七魔団"。
恐らく、今の奴に慈悲などない…。
歩み寄る必要はない。次に現れた際は、その命を狙う覚悟で挑むんだ。いいな!」
彩科院がそう言うと、一同は一呼吸置いて
「「「…了解。」」」
と、一言だけそう言った。
その後、BOX・FORCEの各部隊は
それぞれ別々に集まり、作戦会議を行なった。
第1真隊_
彩科院は、広いデスクの椅子に深く腰掛け
その向かいに置かれたソファーに、
咲波と白峰が座った。
彩科院が、ふと椅子を少し引いた。
「…白峰、お前にとっては少し酷な戦いになるかもしれない。その覚悟はあるか?」
彩科院がそう言った。
白峰の隣に座る咲波も、その姿を心配そうに見つめた。
「…俺は、"護る"為に戦う。そう決めました。
それは、相手が誰であろうと…。」
白峰の言葉には、迷いがあった。
「…そうか。咲波、お前にとっても2年前共に戦った同志との戦闘だ。
但し、情けは無用だ。分かってるか?」
彩科院は、白峰の言葉を呑み込み
咲波に話を振った。
「…ええ。ここまで来たら、やるしかないでしょう。
聡ちゃん…蒼松元隊長の所在も気になるところですが…今は目の前の敵に集中します。」
咲波もまた、行方不明の蒼松を未だ心配している身である。
しかし、2人の覚悟は揺るぎなかった。
「恐らく、いや、間違いなく相手にこちらの手の内は知られている。
樫間とチャン・リーフォンがいる以上、これまで通りにはいかない。
第1真隊として、我々は皆の先導的立場にある。我々が率先して奴らの攻略を見つけ出すんだ。」
彩科院はただ1人、対樫間に対する熱を燃やしていた。
第2真隊_
隊長席のデスクに腰掛けた矢島は、
ふとデスクの引き出しから煙草を取り出した。
「矢島さん、煙草吸うんですか?」
第1真隊同様、部隊室に用意されたソファーに座った抹梨は、そう言った。
「ん?ああ。彩科院隊長の時は吸ってなかったけど…これは、先代隊長の形見だ。」
そう言うと、矢島は煙草に火を灯した。
慣れていないのか、少し咽ながらゆっくり煙を吐き出す。
「…それにしても、相手が樫間紘紀となると…。
それに、チャンまでもが相手側にいると、こちらはかなり不利な状況だな…。」
スミレは、2人を他所にそう呟いた。
「…まあ、雰囲気といい条件といい、何から何まで向こうに持ってかれそうだな。」
矢島は、再び吸った煙草の煙を天井に吐き出すと、
スミレの言葉にそう答えた。
「だがな、ヴァイオレット。それでもやらなきゃ行けない。それでも戦わなきゃいけない。
それが俺たちに与えられた使命なんだよ。」
矢島はどこか余所事のようにそう言った。
「…その使命、何とかならないんですかね。」
抹梨がボソッとそう呟いた。
「…まあ組織である以上、組織の目的は絶対だ。
それに抗いたければ、組織を抜けるしかない。
樫間のように、な。」
矢島は、そう言い終わると煙草の火を消した。
まだ、半分以上も残っているにも関わらず。
「…ただ。」
矢島はそう言いかけると、黙ってしまった。
「「…ただ?」」
抹梨とスミレは、揃ってそう言った。
「…ここ使うんだよ。」
矢島はそう言いながら、自らのこめかみを人差し指で2回、軽く叩いてみせた。
「まあ、見てろって。俺、天才だからさ。」




