[第4話:Satan]
「俺は、樫間 紘紀。もう一度言う。俺の目的の為に、君には共に来てもらうよ。」
樫間の"アスモレウス"、堀崎の"ベルフェゴール"の能力を駆使し、3人目の"七魔箱"を持つと思われる青年と出会った2人。
しかし、青年は突如2人に襲いかかった。
「…樫間…紘紀…。へぇ、あの"BOX・FORCE"の。
2年間行方不明だった筈なのに、こんなところに居たとはね。」
青年はそう言うと、手に持った大きな鎌を地面に突き立てた。
「葉坂 白牙だ。
"BOX・FORCE"に沫梨ってのが居ただろ。あいつの従兄弟だ。」
葉坂は、背丈160cm程で白銀色の髪をしていた。
口元を隠すように、長いマフラーのようなものを巻いている。
「…なるほど、沫梨さんの。って事は、話が早いな。」
樫間は"アスモレウス"を納刀した。
「俺はこの"七魔箱"を持つ者たちと共に、
"BOX・FORCE"を攻めるつもりだ。」
樫間がそう言うと、葉坂は大笑いした。
「おいおい、あんたは"BOX・FORCE"の人間だろ?
なんでそんな奴が自分の所属組織攻めるんだよ。訳を聞かせてもらおうか。」
葉坂は冷静になってそう言った。
「そう言えば、俺も聞いてないぞ。樫間の目的はそれなのか?」
堀崎も葉坂につられてそう言った。
「…簡潔に説明する。2年前、そして7年前…いや、それ以前からか。
あの大きな事件の発端が"BOX・FORCE"にある。その元凶を潰す為に、あそこを攻める。」
樫間の言葉に、堀崎と葉坂の2人は固まってしまった。
「…あの大きな事件…"NAMELESS大戦"ってやつか?」
堀崎は、樫間に問いかけた。
「ああ。それも1つだ。だがそれだけじゃない。
この先に、もっと大きな陰謀があるはずだ。
俺はその元凶を潰し、2度と今までのような悲惨な事件を起こさないようにする。」
樫間の言葉には決意がこもっていた。
「…その為に、この力が必要って事か?
悪いが、俺はそんな敵討ちの為に使う時間はない。」
葉坂は、樫間の言葉を理解はしているようだが、賛同はしていなかった。
「…ほう、ならば何に使うというのだ。」
樫間は、葉坂に敵意の目を見せた。
「俺は、四国を出て強くなる。この狭いコミュニティーの中じゃ収まらないくらいに、強くな。」
葉坂の答えに、樫間が返答するより先に
堀崎がツッコんだ。
「…ん?なら別に、俺たちと来ればいいんじゃないか?
この力、手に入れたところで使い所がなきゃ強いも弱いもないだろ。
この力を手に入れた以上、使うべく所で使わねば。
俺はそう思ったから、この樫間に着いて行こうと思ったんだけど…。」
堀崎の言う事は最もだ。
葉坂は、ハッとして赤面した。
「…まあ、そういうことだ。現在、BOX・FORCEがどういう立場なのかは知らないが、それでも一侵略生物から東京を守った実績はある。俺がその証明だと、自分で言うのもアレだが…。
その組織に問題があるから、その組織を潰す為に戦う。それで勝てば、強さの証明になるだろう。」
樫間は改めて説明した。
それを聞いた葉坂は、何故か少し怒っていた。
それは、言葉よりも先に行動によって示された。
葉坂は再び、樫間に襲いかかった。
「バカにしやがってぇぇぇ!!!」
襲いかかる葉坂に、樫間は呆れて言った。
「…めんどくせぇなぁ、俺を倒したら好きにしろ。
俺に負けたら着いてこい。以上だ。」
樫間はそう言うと、再び"アスモレウス"を片方だけ抜刀した。
その剣は、黒く輝きを放っている。
葉坂は、その大きな鎌を振り回しながら樫間に突っ込んだ。
樫間は、葉坂の攻撃を右腕に持った剣で軽くいなした。
すると、正面から樫間を攻撃しているはずの葉坂が、背後から鎌を振りかぶって樫間に襲いかかった。
すかさず、樫間は左手でもう1本の白い剣を抜いて
背後からの攻撃を背中越しに防いだ。
(…カシマ ヒロキ。奴は"サタン"。能力は"分身"だ。気をつけろ。)
樫間の脳内で、"アスモレウス"はそう呟いた。
「…なるほどな。大した能力だ。」
樫間はそう呟くと、クルッと身体を回転させ
葉坂の攻撃を弾き飛ばした。
「…まさか、こっちまで使うとは思わなかったぜ。葉坂。」
樫間は左手に持つ白い剣を見ながらそう言った。
「…ナメやがってっ!」
葉坂がそう叫ぶと、その身体は黒い煙に包まれた。
その煙は、忽ち辺り一面を覆い尽くすと
樫間の周囲には10人程の葉坂の姿が現れた。
「…そう来たか。」
樫間は息を呑んだ。
「…おいおい、なんだかやべぇんじゃねぇのか?」
少し離れた場所で、戦いを見ていた堀崎はそう呟いた。
(…そう焦るでない。"サタン"の"分身"の能力は少し厄介だが、我は奴に負けた事がない。この意味が分かるか?)
堀崎の脳内で、"ベルフェゴール"がそう呟いた。
堀崎は、その言葉を聞いてハッとした。
「…なるほどな。"ベルフェゴール"、あの力、もう1回貸してくれ。」
堀崎がそう言うと、堀崎の目が鋭く猫のようになった。
「…覚悟しやがれっ!樫間 ぁぁぁぁっ!!!」
10人の姿に分身した葉坂が、一斉に樫間に襲いかかった。
その瞬間_
「樫間っ!!背後だっ!」
堀崎がそう叫んだ。
堀崎の言葉を聞き、樫間はクルッと身体を回転させながら左手の剣を納刀し、
右手に持つ黒い剣を真っ直ぐ突き出した。
分身して襲いかかった葉坂の姿は、一瞬にして消え去った。
本体の葉坂は、樫間の剣の刃先に触れそうな僅かな距離で固まっていた。
樫間がニヤッと笑み、勝利を確認した。
「…流石だ、堀崎。」
堀崎は、樫間からの褒め言葉に照れ隠ししながら答えた。
「どうよ。俺の"ベルフェゴール"、中々いい力だろ?」
すると、葉坂はぐったりと項垂れ、俯いた。
顔を上げると、突然叫んだ。
「ずりぃぞ!外野は出てくんなよ!」
それは、小学生の子供のような口調であった。
「言ったろ?俺は樫間に付く。そう言う事だ。」
堀崎の反論もまた、親の背に隠れた小学生のようである。
その2人の言い合いを見て、樫間は呆れながら納刀した。
「堀崎、葉坂。次は東京に乗り込む。
"4人目"に会いに行くぞ。」
こうして、樫間、堀崎、葉坂の3人は、
"4人目"のいる東京・渋谷に向かった。_




