[第3話:Belphegor]
『…我々"七魔箱"の力は全部で7つ。仲間の居場所は、私の力を通じて把握する事ができる。
全ての仲間を集めて、君の好きなように使うといい。』
樫間が気がつくと、辺りの空間は晴れ
元の大木の根本へと戻っていた。
「…なんや、えらい気を感じだけど、大丈夫なんか?」
茨木は樫間に問いかけた。
元BOX・FORCEの一部隊を率いただけあって、今だにその勘は衰えてはいなかった。
「…"七魔箱"…。この力を使って、"BOX・FORCE"を叩きます。」
樫間の目から、慈悲や優しさの光は消えていた。
その目の奥には、確かな野望の火が灯っていた。
「…な、何だこれは…!?」
突然、堀崎が声を上げた。
堀崎の手元には、樫間が先程見たような黒いオーラが現れている。
黒いオーラは次第に大きくなっていき、
その姿は、悪魔そのものとなっていた。
『…我が名は、"Belphegor"。"七魔箱"が内の1つ。
"怠惰"が齎す"千里眼"を与える者。』
"ベルフェゴール"と名乗ったその黒いオーラは、"アスモレウス"が樫間にしたように、堀崎の体内へと煙のような霧状となって入り込んでいった。
「…堀崎っ…!」
樫間は堀崎を心配した。
しかし、その姿は変わる事はなかった。
その目だけ、先程までの堀崎のものより細く鋭くなっていた。
「…"ベルフェゴール"…。この力が、俺を選んだという事か。」
堀崎はそう呟いた。
そして、樫間に目線を送って再び口を開いた。
「樫間 紘紀。俺はあんたに付く。…この力が何なのか、よくは分からないけど…。あんたに宿った力と同じ力なんだろ?だったら共にするしかないみたいだな。」
堀崎の目は覚悟を決めていた。
「…何なんや、お前ら…。とんでもねぇ殺気を宿してやがる…。」
茨木は、樫間と堀崎を凝視した。
茨木の目には、2人の姿はもはや別の何ものかに見えているようだ。
「…"七魔箱"。この祠に封じられた力の名前です。
この力は、"真の悪魔"を倒す力…。"アスモレウス"は、そう言ってました。」
樫間の言葉に、茨木はついていけていない様子である。
「…"七魔箱"…"アスモレウス"…?何なんだ、その力は…。」
驚く茨木を他所に、樫間は今にも、文字通り飛び立つ構えを見せた。
「茨木さん、ありがとうございました。
あなたのお陰で、俺は"真の悪魔"を倒す為の肉体と力を手にする事ができました。」
樫間がそう言うと、樫間の背中に黒く大きな羽のようなオーラが現れていた。
堀崎も同様に、形状の違う黒い大きな羽を現していた。
「よく分からんが…。まあ、無理するんやないで。」
茨木はそう言うと、思い出したかのように付け加えた。
「…あと…そうや、樫間。俺も、お前と大体同じ考えやと思う。獅蘭に助言してたのは俺や。意味、分かるやろ?」
茨木の言葉に、樫間は黙って頷いた。
その後、2人は黒い大きな羽で飛び立ってしまった。
程なくして、市街地のビルの上に樫間と堀崎は降り立った。
「…にしても樫間、この後どうする気だ?」
堀崎は樫間に問いかける。
「"アスモレウス"曰く、この力は俺たち以外にあと5人の元に行き渡っているはずだ。その内の1つが、この徳島にある。」
樫間はそう答えた。
どうやら、2人がいるのは徳島のようだ。
「…って言ったって、ここからどう探すつもりだ?土地だってそれなりに広いし…。」
堀崎はそう言うと、ハッと気がついた。
「その為の力だろ?"ベルフェゴール"は。」
樫間は笑みを浮かべながらそう言った。
「…なるほど。そう言うことか。」
堀崎がそう言うと、堀崎の胸元が黒く光った。
そこには、黒い"箱装"があった。
「…とはいえ、どう使うんだ?これ。」
堀崎がそう呟いた途端、黒い"箱装"から声がした。
『…我が"千里眼"の能力を使うか。いいだろう。』
その瞬間、堀崎は硬直した。
瞳孔は猫のように細く鋭くなっている。
「…見つけたぜ…。」
堀崎はそう言った。
その目に、"七魔箱"の力の片鱗を捉えたようだ。
(…それにしても、"箱装"ってのは、こんなにも異次元な力を与えるのか…。)
堀崎は、自身の能力とそれを使いこなしてきた樫間に改めて関心の意を示した。
堀崎の示した場所は、日和佐城という城がある場所であった。
16時を少し回った頃であった為、日がかなり水平線に近い場所にある。
「…樫間、あれ…。」
堀崎が指差す先には、身長160cm程の小柄な青年が日和佐城を見上げて立ち尽くしていた。
2人は、その青年の元に近づいた。
「…初めまして。君が"3人目"で間違いないですか?」
樫間は、青年に丁寧に声をかけた。
その瞬間…
青年は鋭い視線を2人に向けた。
「…おい、てめぇ…!」
堀崎がその青年に触れようとした瞬間、青年の姿は煙のように消え去った。
「…なっ…!?」
堀崎が呆気に取られた隙に、堀崎に向かって黒い影が飛び出した。
堀崎が咄嗟に瞑った目を開くと、目の前僅かな位置に樫間がいた。
樫間は、"アスモレウス"を抜刀している。
その剣先に大きな鎌の刃先がぶつかって火花を上げていた。
「…なるほどね。あんたもこっち側って訳か。」
青年は、何かを悟ってニヤッと笑みを浮かべた。
「こっち側、ね。なら共に来てもらおうか。」
樫間は右手で握った"アスモレウス"を思い切り振り切った。
青年は、その勢いで距離を置かされた。
樫間が青年に向かって、落ち着いて言う。
「俺は、樫間 紘紀。もう一度言う。俺の目的の為に、君には共に来てもらうよ。」
樫間と青年は、黙って睨み合った。




