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BOX・FORCE  作者: hime
第1章NAMELESS編-新宿戦-前編
30/82

[第30話:Hypericum]

-戦闘開始15分前


"四神"の出現を知らせるアナウンスと同時に、樫間は隊員であるジャッキー、咲波、リズに向けて作戦を示す指示書をメールで送信した。


『フォーメーション''バミューダ"。


なんとしても、奴を潰す。



最悪の場合…俺ごと撃ってください。』


そう書かれた樫間からのメッセージには、強い意志が込められていた。


"敵を死に追いやる彼岸花"。この使命を果たそうと、樫間には考えがあった。




新宿駅東口、大型ビジョンのある交差点で

硬直状態だった樫間とバキオラ。

一発の銃声が、はじまりの合図となる。


「…"五月雨…氷礫(アイス…スコール)"っ!!!」


樫間が先制して引き金を引いた。

無数の氷の礫が、大型ビジョンの前にいるバキオラ目掛けて襲いかかる。


「"氷結叢雨(フリーズシャワー)"っ!!!」


間髪入れず、樫間は引き金を引き続けた。

樫間の"青龍銃"から、氷の弾丸が発射され続ける。


「"氷鐵覇雨(アイスブレイク)"っ!!!」


樫間の怒涛の攻撃に、バキオラは冷静に回避を続けた。しかし、次第にその弾丸の雨がバキオラを襲う。

しかし、バキオラは忽ち攻撃の爆風に包まれた。


「…今だっ!爆風に向かって攻撃っ!」


樫間は通信機に向かってそう告げた。

各方面に散った他の隊員がそれを受け取ると、一斉に標準をバキオラに向けた。


「"スネイクスコープ"っ!」


「"ロック・オン"っ!」


「"漆ノ怨念(うるしのおんねん)"」


咲波、ジャッキー、リズがそれぞれ引き金を引くと、弾丸の一閃が爆風目掛けて突き刺さった。


『…各員、次弾スタンバイ。奴がこれで堕ちるわけがねぇ…』


樫間の囁き声が、各員の耳元に流れた。

新宿上空は、次第に黒い雲が広がっていた。


「…これは一雨来そうだネ。ヒロキ。」


そう呟いたジャッキーの頬に、一雫滴る。


『…これは好都合。』


樫間はそう答えた。

樫間の武器である"青龍銃"は、周囲の水分を吸収し急速冷凍させ弾丸を作り出す。

この性質を考えると、悪天候は寧ろ好都合と言える。


「…どうやら天はこちらに味方してくれなかったみたいだな…。」


爆風の中から、静かにそう呟く声が聞こえた。


「…総員、次弾用意…。」


樫間は、落ち着いて次の指示をした。

そして、息を呑み込み爆風に突っ込んだ。


『…ヒロキッ…!』


ジャッキーの反応も束の間、バキオラは樫間に向かって右腕を構えた。

その右腕はガトリングガン状になっており、既に弾丸がスタンバイされている。


「…終いですね。」


バキオラはそう言うと、樫間目掛けて無数の弾丸を撃ち込んだ。

樫間は避ける隙も与えられず、弾丸の雨を目前にしていた。


しかし、すぐさま青龍銃を構えて迫り来る弾丸に向かって引き金を引いた。


「…なめんなぁぁぁ!!」


樫間の叫び声と共に、巨大な氷の竜が銃口から弾丸の雨に向かって咆哮した。


『…咲波ッ、リズッ!次弾発射ッ!!』


通信機からすぐさま指示を出すジャッキーの声がした。

それと同時に、バキオラ目掛けて3点から弾丸の閃光が放たれた。


「…全く、小賢しい連中だ…」


バキオラは、自身に向かってくる弾光を横目にゆっくり左腕を上げた。

その左腕はキャノン砲状態になっており、白く頑丈に輝いている。


バキオラは、迫り来る弾丸目掛けて左手からキャノン砲を3発発射した。

爆音と共に、弾丸は忽ち爆風に紛れ消えてしまった。


「…甘い甘い。私がその程度でやられるとでも?」


バキオラがそう言った時、正面の爆風から樫間が姿を現した。


「…やられろよ…っ!」


樫間は、2丁の銃口をバキオラに向けた。

引き金を引くと、その銃口から氷の竜がバキオラを襲った。


「…ふっ…"キャノン・ホワイト"」


自身に向かう竜の弾丸を嘲笑う様に、バキオラは左手から砲弾を撃ち放った。


氷の竜は、砲弾にぶつかると忽ち砕けていった。

砲弾は威力を落とす事なく氷の竜を砕ききると、そのまま樫間めがけて突き進んだ。


『…ヒロキッ!!』


耳元で、通信機越しに叫ぶジャッキーの声がした。


(……やばい…避けきれない…!)


樫間は、かろうじて体を逸らし砲弾を避けようとしたが、間に合わない。



『…"黒極堕填(こくごくだてん"。』



その声と共に、黒い閃光が砲弾を横から遮るように放たれた。

バキオラが閃光の元に目を向けると、リズが"矢発鴉"を構えていた。


『…危ねぇ…。』


声の主であるリズは、ホッとしたように"矢発鴉"を持つ右腕を下ろした。

その腕は、微かに震えていた。


「…助かった…。」


樫間は安堵した。

しかし安心も束の間、バキオラはリズのいる本面に左腕を構えた。


「全く、小鼠が3匹ですか。1匹は妙に鼻が効くらしいですね…。」


バキオラはそう言うと、左腕から砲弾を乱発した。


「…少し黙ってもらいましょう。」



『…リズッ!!!攻撃ダ!!フォーメーションは気にするナ!!回避優先ッ!!』


リズの耳元の通信機から、ジャッキーがそう叫ぶ声がした。


「…ちっ、バレたか。怠いなぁ…」


リズはそう呟くと、砲弾に向かって飛び出した。


「…こちらリズ。了解。とりあえずそっち向かうわ。」


リズは、足元に漆黒のオーラを纏い、空中を旋回しながら砲弾を避けていく。

リズが回避する砲弾が、背後のビルに被弾しているのを横目に、リズは真っ直ぐ目的地へ向かった。


「…なるほど。避けるというのならば…」


バキオラは、遠くから向かってくるリズの姿を見て、笑みを浮かべた。

すると、一瞬にして樫間の目の前から姿を消した。


「…なっ…どこへ行った!?」


樫間は、一瞬の出来事に戸惑ったが、すぐに状況を察し、通信機に叫ぶ。


「…まずいっ!そっちへ向かったっ!リズさんっ!」


その忠告は、最速の判断かと思われた。

しかし、既にバキオラの姿はリズの目の前にあった。


「…君に用はないのだよ。」


バキオラはそう言うと、右脚を思いっきり振り上げて、リズを蹴り飛ばした。

リズは勢いよく飛ばされて、元々待機していたビルに突っ込んだ。

バキオラはそこへ、ガトリングガンを乱れ撃ち込む。


『…おいリズッ!!聞こえてたら反応してくレッ!!!』


ジャッキーの必死の通信に、返ってくる声はなかった。


「…ジャックさん…咲波隊員と合流してください…」


樫間は、冷静な声でそう言った。

"青龍銃"を持つ両手は、血管が弾けそうなほど強く握られていた。


『…了解。ジャックさん、合流ポイントを送ります。こちらで…』


咲波が、樫間の指示にそう答えていたが

途中で通信が途絶えた。


『…咲波…?』


それは、瞬く間に起こった。


リズを蹴り飛ばし、ガトリングガンを放っていたはずのバキオラが、咲波が構えるビルの上空に姿を表していた。


「…ここにいたんですね、小鼠さん…いや、野良ヘビと言った方がいいですか?」


バキオラは、左腕の砲弾を真っ直ぐ咲波に向けてそう言った。


『…咲波ッ!!!』


ジャッキーがそう叫ぶと、次第に雨脚が強くなった。

雨音をかき消すほどの爆発音が、辺り一面に鳴り響く…。


ジャッキーは、咲波のいたビルを見ながら、呆然としていた。



「…間一髪でした…」


ハッとジャッキーが横を見ると、そこにはバキオラに襲撃されたはずの咲波の姿があった。


「…咲波…なんデ…?」


「…敵を騙すにはまず味方から。どうやら成功したようですね。リズさん。」


咲波は、得意げにそう言った。

すると、咲波の少し後ろに両手をズボンのポケットに突っ込み、加え煙草をしているリズの姿があった。

リズは名前を呼ばれ、右手をポケットから出し、タバコを指で持って気怠そうに言った。


「…ふーっ…ったく、奴との距離が近づいてる時ヒヤヒヤしたぜ…。まあ、見事に出し抜けたみたいだな。」


リズは咲波にウインクしながら、よくやったと言わんばかりの顔をした。


「リズさんがこっちに向かってくる時、私が"ミラージュ・スネイク"という透明な弾丸を撃ちました。"ミラージュ・スネイク"はそのまま向かってくるリズさんの姿を創り出し、身代りとなったのです。」


咲波はジャッキーにそう説明した。

バキオラが蹴り飛ばしたのは、"ミラージュ・スネイク"によるリズの分身体だったのだ。


「その後、私も自分の身代わりを生成して、こっそりジャックさんの元へ合流したと言うわけです。」


「…全ク…心配した時間を返してくれヨ…」


ジャッキーは、呆れた顔をしたがどこか安心を見せていた。

すると、冷えた空気がスッと3人を包んだ。


「…何はともあれ、無事ならよかった…。3人とも、奴の攻撃パターンは把握しましたね?」


空気を発生させていたのは、全身を氷の竜の鎧に包んだ樫間であった。


「…あの両腕…厄介だな。特に、ランチャーの方はチャージタイムほぼ0だ。どっからあんなエネルギー源を…」


リズはバキオラを睨みながらそう言った。

バキオラは、自分が襲ったのが分身体と気づき、不敵な笑みを浮かべていた。


「…ふっふっふっ…そうでなくては。面白くありませんねぇぇ!!」


バキオラの叫び声は、辺り一面を唸らせた。



「…俺に、考えがあります。」


樫間は、余裕そうに叫ぶバキオラを見ながら

そう呟いた。








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