[第20話:Monstera]
[第20話:Monstera]
蒼松が目を覚ますと、そこは病室だった。
「…あれ…俺…ちーさんと…」
蒼松はそう呟くと、自分がベッドに横たわっている事に気づいた。
「…聡ちゃん!よかった…気がついたみたいだね…」
蒼松の看病をしていた咲波は、蒼松の姿を見てそう言った。
「…愛花…っつ!そうだ!矢島さんはっ…!」
蒼松は急に思い出したように、咲波にそう言った。
「…矢島さんは、まだ意識が回復しないみたい。聡ちゃんよりかなり派手に負傷してたからね…。矢島さんには洸がついてるよ。」
咲波は、少し不安げな表情でそう言った。
「…そうか…。」
蒼松は、残念そうに暗い表情をした。
「…聡ちゃん…!」
「どうした…?」
咲波は蒼松を見て、驚いたようにそう言った。蒼松は不思議そうに返した。
「右目が…」
咲波がそう言うと、蒼松の右目の眼帯は、ひらりと外れた。
蒼松の右目は、青白い光を放ち、不思議な模様を描いていた。
「愛花っ!後ろっ!」
蒼松は急に顔色を変え、緊迫した表情で先波にそう叫んだ。
すると、激しい爆発音とともに、病室に揺れが走った。
「えっ…!何っ…!」
咲波は辺りを見回した。
すると、一本の通信が入った。
『…愛花、聞こえる…??』
声の主は、矢島の病室についている沫梨からだった。
「…洸っ!何?何があったの??」
咲波は、慌てながらそう答えた。
『…大丈夫だ…落ち着いて…今…特殊回線使って…通信してる…大丈夫だ…』
沫梨の通信は、途切れ途切れだが咲波に伝えられた。
『…"4人目"が…現れた….!…いや…4人目と言うより…あれは…"4体目"って…行った方が…いいのかもしれない…!』
沫梨の通信に、咲波は答えた。
「えっ…どういうこと!?NAMELESSが現れたの??」
『…"四神"だ…間違いねぇ…あいつは…化け物だ…っ!!』
そう言うと、沫梨の通信は途絶えた。
「…敵かっ!?」
蒼松は緊迫の表情で咲波に言った。
「どうやらそうみたい…でも、聡ちゃんはそんな状態じゃ出れないでしょ?大人しく、避難しましょ。」
咲波は、立ち上がろうとする蒼松を制止した。
その頃、街には沫梨の言う"化け物"の姿があった。
「…おいおい、まじかよ…。」
現場に真っ先に急行した、沫梨を除く"ローズ改"と"ガーベラ改"の2部隊は、驚愕した。
目の前には、15階建マンション程の大きさの、ドス黒いオーラの恐竜のような生命体が、静止していた。
「…どうすんだよ。こいつ。」
獅蘭は、緊張した表情で横に立つ彩科院を見た。
「…お得意の"戦略"でも立ててみろよ。少しは勝算あるんじゃないか?」
彩科院も、緊張を隠しながら獅蘭を茶化した。
「…とりあえず、やるなら今のうちだ…全員で囲って全力をぶつけろ!一撃で仕留めるっ!」
獅蘭がそう言って構えると、彩科院は遮るように言った。
「いや待て。ここは俺とお前で様子を見る。下手に攻撃して全滅したら意味がない。」
そう言って彩科院は刀に右手をかけた。
「そーかい。じゃあそうするよっ!」
そう言うと、獅蘭は"永猿棒"を展開した。
「チャンさんよ、この前やってたあの全身装備、あれどうやるよ。」
獅蘭は、"永猿棒"からオレンジ色のオーラを放ちながらそう言った。
「…"氷豹装"の事か…。全ての"箱装"は、その自然エネルギーの解放が一定数を達すると、全身装備ができるようになる。獅蘭。君の"斉天大聖モード"は、それに近い。そのエネルギーをもっと解放すれば装備できる。」
チャンがそう言うと、獅蘭はニヤリと笑って叫んだ。
「そうか。ありがとなぁ!…行くぜ、"猿天装:斉天大聖'改'(えんてんそう:せいてんたいせい'かい')"っ!」
獅蘭の全身が、オレンジ色のオーラに包まれた。
すると、獅蘭の脳裏に、男の声が響いた。
『獅蘭継斗よ。己の限界を超え、極限を知れ。恐るな。俺がついているっ!』
その男の声に、獅蘭が反応した。
「…この声は…」
すると、声の主が答えた。
『…私は、茨木 鶴実っ!我後継よ。…私を超えろっ!』
その声と共に、獅蘭の全身に、オレンジ色のオーラが武装された。
「行くぜ。」
獅蘭はそう呟くと、一瞬にして姿を消した。
「…この男…」
彩科院は獅蘭を見てそう言った。
そして、自身の"裁馬刀"を抜いた。
「…負けられぬ。"焔馬装:ナイトホース"っ!」
彩科院の叫びと共に、彩科院の身体を赤いオーラが包んだ。
全身を赤い騎士の鎧に包んだ彩科院は、炎を纏った刀を構え、獅蘭に続いて敵に突っ込んだ。
「…さすがの2人だ。エネルギーコントロールが早い。"箱装"の全身装備を、一瞬で取得してしまうとは…」
チャンは、感心して2人を見た。
「"猿天装:百敷門"っ!」
「"焔馬装:フレイムホース"っ!」
獅蘭と彩科院の攻撃は、激しいエネルギーを放って敵NAMELESSに当たった。
大きな爆発と共に、辺りは黒い爆煙に包まれた…。
「…どうやら、獅蘭君と彩科院さん達が戦闘を始めたようね…」
蒼松を抱えながら、避難する咲波は言った。
すると、正面から沫梨が慌てた表情で走ってきた。
「…はぁ…はぁ…矢島さん見なかったか…?」
沫梨は息を切らし、2人にそう言った。
「矢島さん?洸がついてたんじゃないの?」
咲波は、不思議そうにそう答えた。
「…そうなんだけどさ…愛花と連絡とってる間に、見失っちゃって…」
沫梨は、辺りを見回しながら、そう言った。
「…矢島さんは…敵の側にいるぞっ!」
蒼松は、天井を見つめながらそう言った。
「「何っ!?」」
爆煙が晴れると、そこには無傷の巨大NAMELESSが、微動だにせず静止していた。
「…へっ…おもしれぇじゃねぇか…」
獅蘭は、オレンジ色の雲のようなものの上に乗りながら、NAMELESSを見下ろしそう言った。
すると、NAMELESSのいる真横のビルから、激しい爆発と共に1人の男が現れた。
「…敵か?」
彩科院はそれを見つめ、言った。
「…いや、違うな。」
獅蘭は、またもニヤリと笑みを見せそう言った。
すると、巨大な渦潮が突如現れ、そこから槍を持った男が、NAMELESSの上部に現れた。
「…"淡猪装:アクアボアスピア"っ!」
その男の姿は、全身に青い装備を施しており、その右腕から、鋭く青い水を纏った槍が、NAMELESSに放たれた。
「…や…矢島っ!?」
彩科院は、その男の姿を見て、そう叫んだ。
矢島の右腕から放たれた"アクアボアスピア"は、鋭く回転しながら、NAMELESSに突き刺さった。
「…分かってるよ。効かねぇんだろ?だからっ!」
矢島は、投げた勢いのまま宙返りをして、NAMELESSに突き刺さった槍に、蹴りを入れた。
「…"ハイドロシュート"っ!」
矢島の蹴りにより、"猪突槍"は勢いを増して、NAMELESSに突き刺さっていく。
すると突然、NAMELESSは目を開け、激しい声で吠えた。
『…ヴォォォォォォォォォォォォ!!!!』
その咆哮により、激しい地響きと揺れが辺りを襲った。
「…くそっ、戻れ!"猪突槍"っ!」
矢島が叫ぶと、"猪突槍"はNAMELESSから抜け、矢島の手元に戻った。
「…矢島、大丈夫なのか?」
彩科院は、"焔馬装"の力で浮遊し、矢島の元に近づいて言った。
「…さぁ、どうですかね。こいつが何者なのかよく分からないし…」
矢島が言いかけると、彩科院は遮るように言った。
「そうじゃなくて!貴様の容態だ。…全く、こんな時に事故なんてしやがって…」
「ああ、それは全然平気っすよ。…それに、面白い奴とも出会えましたし。」
矢島はそう言うと、ニヤリと笑った。
「面白い奴?」
彩科院は不思議そうに問いかけた。
「まあその話は、こいつを対処したらゆっくりしましょうやっ!」
矢島はそう叫ぶと、右手に持った"猪突槍"に、水色のオーラを纏った。
「…さぁて、"化け物"さんよ。楽しく遊びましょっ!"ハイドロボアアロー"っ!」
矢島はそう言うと、"猪突槍"を構えながらNAMELESSに突っ込んだ。
「待てっ!矢島っ!来るぞっ!」
彩科院がそう叫ぶと、NAMELESSは口から巨大な黒い砲撃を放った。
「…やべっ、呑まれるっ!」
矢島がそう言うと、目の前に獅蘭が現れた。
「"斉天六甲門"っ!」
獅蘭は、"永猿棒"を構え、目の前にオレンジ色の六角形のバリアを展開した。
「逃げろっ!」
獅蘭は矢島にそう叫んだ。
「お、おうっ!」
矢島が身を引いた瞬間、獅蘭は黒い砲撃に包まれた。
「獅蘭っ!」
砲撃が止むと、獅蘭は脱力した状態で地面に落下した。
一同が獅蘭の元へ駆け寄ろうとすると、再びNAMELESSは大きな咆哮をあげた。
「…止まれっ!第2波が来るかもしれない…」
彩科院がそう指示すると、全員NAMELESSに向かって構えた。
咆哮が止むと、巨大NAMELESSは、2つの人影に分かれた。
「…ん~もぉ、後1歩ってとこだったのにぃ~」
「…一度帰還する。次は一撃で全滅させる。」
2つの人影は、そう言うと宙に現れた黒い空間へ消えていった。
「…彩科院隊長。あれは…」
その光景を見た桂は、彩科院に言った。
「…桂、分かっている。確かに見た。…あれは2人で1体の、厄介な奴だってな…」
そう言うと、一同は獅蘭を救出し、帰還した。




