プロローグ
空は少し薄暗くなりつつ、子供たちの遊ぶ声が鳴り止まない。
だが比較的明るい外とは違い、明るくても暗い空気の場所があった。 そこは、光琳中学二年C組の教室。
学活の終わったあとの教室は、どこか寂しくも見える。教室には、机を挟んで二人の人影があった。
椅子に座っているのは、ここの教室の担任の先生。そしてその担任の前には、ここのクラスの生徒、里真 宮羅が立っていた。
「里真。何だこの作文は」
怒鳴ってるわけでもないが、人が教室にいない所為もあって、普通よりも響く担任の声。そして突きつけられる作文用紙。宮羅はそれに動じず知らないような口ぶりで言った。
「…何がですか?」
少し間をあけて答える。その答えは逆に質問していた。
「お前が国語の時間に書いた『自分の目指すもの』という題の作文だ」
宮羅の返し方に少しイラついたようだが、かまわず話す。
「やっぱりそれか…」
わかっていただけにその発言は担任の怒りを刺激した。
「わかっていたなら初めからこんな文を書くな!」
作文を教壇に叩きつける音、そしてただでさえ声の響く教室に、ものすごい怒鳴り声が耳に響いた。
「この作文の何が悪いんですか?」
教壇に叩きつけられた作文を指差し、別に悪びれる様子もなく答える。
「悪いも何も、根本的なものが可笑しいのにまだ気付かないのか?」
少し落ち着きをとりもどしたようだが、まだ少し息は乱れてる。
「俺にはわかりません」
そう一言落ち着いた声で言うと、立ってるのが疲れたのか、自分の後ろの机に座った。
「そうか、なら教えてやろう。お前は目指すものとして魔法使いと書いた。先生はこれを見て、一体何処の幼稚園の作文を写してきた?と言いたくなったよ。何故だかわかるか?」
担任は宮羅が机に座ったことに関しては何も言わなかった。というより気付かなかった。
担任の目は必死に怒りを抑えていて、いつ大爆発を起こしても可笑しくないような状態であったため、宮羅の行為に気付かなかったのだ。
「わかりません」
答えはさっきよりもきっぱりとしていた。だがその答えが担任の逆鱗に触れた。
「ふざけるのも対外にしろ!お前たちは今年で2年生になったんだ。少しは自覚したらどうなんだ!大体何が魔法使いだ!こんなものこの世には存在しない!全て空想のものだ!」
あまりにも大きな怒鳴り声で、職員室まで届くのではないかと思われた。
「ふざけてなんかいない。空想でもない。俺は魔法使いに会ったことがあるんだ!」
負けじと宮羅も怒鳴る。その言葉は担任から見て予想外だったと思われ、少しの間沈黙が訪れた。そして今宮羅が言った言葉を頭で整理すると、ゆっくりと担任の口が開き、一言呟くかのように言った。
「嘘をつくな」
この言葉は宮羅の心を貫いた。宮羅は今までも同じような反応をされていた。それでも誰か信じてくれるだろうと、言うのをやめなかった。だが今の言葉で宮羅の心は砕け散った。そして無言のまま、側に置いてあった鞄を取り教室から走り去っていった。その顔には、悔しさともいえぬ表情がうかがえた。
この世に魔法使いというものは存在しない。存在しないはずの魔法使いにより、宮羅達の住む世界は崩壊寸前にまで至る事となる。そして今の話は、ほんの序章にしかすぎない。宮羅自身、そして誰もが、この幕開けに気付くことなく、時がたつのをただ待っているだけだった…
これは中学1年生の頃、生まれて初めて書いたまともな小説です。
あまり手を加えてないので、結構酷い文ですが、ご容赦ください。