思い出
頭のいい人は記憶の消去が早いらしい。
いらない情報を素早く消すことで有益な情報を残している。
なぁ、これでいいんだろうか?
いい仕事に就くため、必死に勉強した。
単語をひたすら頭に叩き込み、試験のための勉強を続けた。
古い友人に会った。
彼の話す”思い出”が一つもピンと来なかった。
間違いなくその場に居た筈にも関わらず、
それでも僕は、自分は頭がいいんだと言い聞かせていた。
或る時、自分の作品を見直した。
しかし、そこに確かに残したはずの意図を、もう掴み取れなくなっていた。
何度読み直そうと、そこにあるのは薄っぺらい文字の並びだけだった。
初めて自覚する、自分を失っていく感覚。
いや、本当は過去に何度も感じていた筈、
認めたくなくて、
認められなくて、
逃げてきただけだ。
・
・
・
病室の天井を見上げて思う、
「ご飯、食べたっけ…」
見知らぬ人が部屋に入ってくる
「また来たよ~♪」
僕は生返事をする
もう、自分が何者かもわからない
皮肉にも最後に思い出したのは、たった一つの単語
”走馬灯”