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8. 前進

 誰かに会いたいマノン、弟を探してるレオナルド、調べたい場所があるポール、そんでもって出口を見つけたい私……

 どうにも息の合いそうにないメンバーだけど、挫ける訳には行かない。

 レヴィ……だったっけ。彼を見つけられれば、いくらでも状況は打開できる。


「よーし……とりあえず、探索しよ!」


 出口を探すにも、誰かに会うにも、どちらにせよ動くしかない。

 私の号令に、他の四人も頷いた。


「……で、どこから?」


 マノンが言う。

 確かに、周りは闇しかない。


「歩いてみるかい?」


 ポールが言う。

 まあ、そうだね……壁とかがあるなら、それを伝うのもいいし。


「さっき落とし穴みてーなのあったぜ」


 レオナルドが……って、ちょっと待ってぇ!?


「そういうの、早く言ってよ!?」

「え、マジ?」

「落ちたらどうすんのぉ!?」

「悪ぃ悪ぃ、みんな気付いてんのかなーって」


 レオナルドはケロッとした様子で謝ってくる。

 うう、なんだか、前途多難(ぜんとたなん)な気がしてきた……。




 ***




 実際、落とし穴みたいなのはあった。

 どこまで深いかも分からないし、何に続いてるかわかったものじゃない。


「ぼくが行ってこようか?」

「危ないからやめなよ……」


 ポールの提案は、何が待ち受けてるかわからないので制止しておいた。

 ひとまずはレオナルドに穴を探知させつつ、手探りで同じ方向に進むことに。


「そこ、気をつけろよ嬢ちゃん」

「うわぁっ! 片足はまったぁ!」

「だ、大丈夫かい?」


 ……色々アクシデントはあったけど、進んでるうちに進展はあった。


「ここにいやがったか兄弟!」


 見覚えのある少年が、闇の中を走ってくる。


「おっ、レニー。久しぶりだな」

「なぁに呑気なこと言ってやがんだ」


 レオナルドの楽しげな声に、レニーはやれやれといった様子で苦笑する。


「もしかして、弟くん?」


 ポールの言葉にレオナルドは「そーそー」と嬉しそうに頷く。


「……親子の間違いじゃなく?」


 二人を見比べて、マノンは眉をひそめる。


「ま、そこいらには深い理由(わけ)があってな……」


 レニーはそこまで言って、コホンと咳払いをした。


「自己紹介は後にして、まずは要件だ。またいつ引き離されるか分かったもんじゃねぇしな」


 真剣な面持ちで、レニーは語る。


「お前さん達……みんな、『目的があって』ここに来たんじゃねぇかい?」


 塗り潰された記憶が、微かに悲鳴を上げた。

 忘れたくない、思い出してと訴えかけるように、鈍い頭痛が意識を支配する。


「当たり前だろ。会いたかったぜ兄弟」


 レオナルドの明るい声が聞こえる。


「てめぇは来たことあるし、条件がゆるっゆるになってそうだな」

「アレだろ、また前みてーに変なのぶちのめしてったら帰れんだろ?」

「脳みそゆるっゆるなのも相変わらずみてぇで何よりだぜ」


 楽しそうに語らう二人。

 マノンがぽつりと呟いた。


「そう、私には目的がある」


 ドス黒い思念を滲ませた声が、ぞわりと背筋を撫でる。


「……復讐しなきゃ」


 ブラウンの目が、激しい憎悪を映していた。

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