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55. 交差

「……そうかい。キース、死んだんだね」


 電話先で、彼女は大きくため息をついた。


「そんなに仲良かったとも思ってないけど……バカだねぇ、あいつ」


 僅かに声を震わせ、サーラはしばらく押し黙っていた。




 ロバートは根源とやらを探していたけど、事態はそういう問題でもなさそうだ。

 積もった負の感情、その場を作りあげた複数人の意思、維持したい、または利用したいという思惑……もろもろ絡み合った結果が、あの現象。

 そんなのを解決したいってんなら、こっちはこっちで人手がいる。いや、俺はあっちには行かねぇけど。……何もできるわけないし。


「……しっかし、妙だね。いくらなんでも都合よくあたしに繋がりすぎだよ」

「俺んとこのインターネットに何か潜んでるのは……まあ、知ってます」

「そうかい。なら、変化がありゃ連絡するよ」


 電話が切れる。

 キーボードが音を奏でることなく、画面に文字が浮かび上がる。

 ぽつり、ぽつりと、テキストデータに書き込まれる文字。




 ねえさん

 会いたい




 怨念たちに混ざった、純粋な思い。


『アンジェロか? お前』


 おっかなびっくり、書き込んでみる。




 そう

 おまえに殺された




 ちょっと待て、俺は誰も殺してねぇぞ。

 ……もしかして小説で……? いやいや、童話作家だぞ、俺。


『人違いだろ』




 たぶん

 だから、見てた




『顔が似てる……とか?』


 ああ、また、あの人か。

 ……また、クソ兄貴の方か。

 あの野郎は俺のことなんか眼中に無いくせに、俺から確かに多くを奪っていく人だった。……そうやってあの人もぼろぼろに傷つけて、泣かせて、……壊したんだ。




 たぶん

 ごめんな




『……お前、助け呼んでくれたのか』




 うん

 あと、会いたかった

 とうさんと、ねえさんと、友達に




 俺は、会いたくなかったよ。

 ロバートにも、カミーユにも、ブライアンにも。……兄さん達にも。

 会いたくなかったよ。……本当はもう、現実を見るの自体が嫌だった。




 ロッド、暇だったからいろいろ読んだ

 おまえの話、わかりやすい




『対象年齢が10歳とかだしな』




 おれ、読み書きは苦手

 助かる




 認められたくて、書いてただけだっつの。

 兄貴より、姉貴より、誰かに……いや、あの人に、見て欲しかっただけだ。




 泣くなよ

 友達

 なってやろうか?




 ……俺は、友達なんか、……友達なんか……


 柔らかくて、困ったように控えめな笑顔を思い出した。自分ばっかりに頼るなよ、と、呆れたようにデコピンしたあの人が望んだのは……いつまでも虚勢で取り繕ったまま立ち直れない俺だろうか。





『メル友から、なら』

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