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【第一部完結済み】敗者の街 ※改訂版  作者: 譚月遊生季
第3章 Hatred at the Moment
119/137

26. side: Robert

「ある罪人の記憶」は、グリゴリーさんからのメールだった。

 なんだ……調査の報告か。驚かさないでよ。

 ……あれ? 待って、早くない? さっきブライアンにメールを送ったはずなのに……なんで?

 ちら、と、自分のスマートフォンの右上を見る。


 15:29


 ふと気になって、グリゴリーさんからのメールをまた眺める。

 ……。……あれ? 時間もそうだし、日付、あれ……?

 時計アプリを開き、日付を確認する。


 6/30


 ……何、これ。グリゴリーさんからのメールは7月1日からで……あれ? 未来の日付?

 未来の日付からの……メール?


 ハッと息を飲み、背後のドアを開く。

 姉さん達がいたはずの部屋には、ロッド義兄(にい)さんしかいない。


「ロバート! さっき呼んだ時、どこ行ってたよ……?」

「ね、姉さんは……?」

「あ? ちょっとお前を探しに行ってくるって……」

「えっ? 僕、ずっとドアの前にいたのに!?」

「……は?」


 目を丸くする義兄さん。

 その時、がちゃりと音を立て、姉さんがふらつく足取りで戻ってきた。

 よほど慌てているのか、息を切らせている。


「……ロッド! ロブが家のどこにもいなかっ…………あれ?」


 僕の姿を見て、姉さんはキョトンと目を丸くした。

 パソコンの画面には、メーラーが表示されている。一番上の未読メールの差出人に、見覚えがあった。


 Ronald Anderson


 不穏な名前に、思わず唾を飲む。おそらく、ロン義兄さんからメールが来たから、姉さん達は僕を呼んだんだろう。部屋を空けるのが不安だから、ロッド義兄さんを見張りに置いた。……それは、わかる。

 嫌な予感がして、パソコンの右下の方に視線をやる。

 そこには、日付と時間が表示されていた。


 6/30 11:57


 かつて過去と繋がっていたのは、ロッド義兄さんのパソコンの中だけだったはずなのに。……今は、違う。

 確実に……さらに大きな範囲に、ズレが起きている。


「……もしかして、俺……?」


 姉さんが呟いたのが聞こえる。


「い、いや……俺のパソコンも元々侵蝕? されてたしな……」


 ロッド義兄さんの声は小刻みに震えている。

 恐怖と……憎悪を懸命に抑えつけたような、そんな声色だ。


 未読メールを選択し、クリックする。

 ゆっくりと画面をスクロールし、メールの内容に目を滑らせる。

 罠が仕組まれているかもしれないから、慎重に文字を追っていく……


『ロデリック。

 少し、厄介なことになってしまった。私としたことが……油断したよ。

 ……ああ、信じたくないのなら、別に信じなくてもいい。それに、善意から教える訳でもない。私にとっても利益があるから、伝えるだけだ。


 線路でアンドレアを襲った怨霊たちのことを覚えているかな。あれが『奴』の側についたらしい。

 もっとも、彼らは自分たちの行いが逆恨みだと理解している。宿ったばかりの命を殺したことは、紛うことなき『罪』だからね。


 だからこそだ。罪を犯したために善を成そうとする『償い』もあれば、悪を滅ぼそうとする『償い』もある。


 彼らはもう、そちらに手出しするつもりはないだろう。……けれど、『君たちの子供を殺したこと』を行動の理由にはしている。

 それだけは、覚えておくといい。何かの役に立つかもしれないよ。』


 ……先に見たのが僕で良かった。

 姉さん達が受け止めきれていない過去に、遠慮なく踏み込んでいる。

 彼らしいといえば、彼らしい。


「……グリゴリーさんからも新しい情報が来たから……レヴィくんに情報を送って、また連絡を待とう」


 画面を開いたままにしつつ、二人に語りかける。


「わかった。また何かできることがあったら、教えてね」


 姉さんは落ち着いて見えるけど……こういう時ほど、油断ならない。義兄さんもそれは分かっているみたいで、しっかりと手を握っている。


 ……レヴィくんにとっても、ロナルド義兄さんは大きなトラウマだったはず。

 レヴィくん……大丈夫かな……?

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