炎の魔人 ~その①~
わたしは抜刀し、敵眼前へ移動。うぴが当然とばかりに、わたしの横に立ち並ぶ。
つと、手拭いが兜の上にふわりと乗っけられた。そしてガシガシと、乱暴な手付きで兜の表面を拭われる。
「ぬあー?」
「血糊でべったりだったぜ?」
片目を瞑り口角を上げた、愛らしくも凛々しい花顔がそこにあった。
「あんがと!」
猫族戦士がコクリと頷きを返す。
この間、わたし達を値踏みするように。金色の瞳が一同を睥睨していた。
わたしは肚を落としつつ。反逆の意志を胸に、真っ向から魔人に相対する。
それと共に、相手の観察は怠らない。
8本の腕のうち7本にはそれぞれ得物が握られていた。そのうちの幾つかは推察混じり含めて分かる物もあれば。分からない物もあった。
わたしが判別できたのは7個のうち5個であり、次の通り。
判別出来た得物(次の5個。推察混じり)
・片手剣
・槍
・短丈
・盾
・鏡
判別不能(上記5個以外の残り2個)
・草っぽい何か
そのうちの一つである短丈が、これといった前置き無しに輝きを放ち始めた。
戦闘領域外に円範囲が8個現れ、各々から1本づつ線がプレイヤーに伸びる。
八方向からの炎の円範囲誘導弾だった。
「無敵技使うか?」
5人に対し8個の誘導弾はオーバーキル気味だ。
わたしは逡巡した後「待った」と声を発した。
「んと。タンクのフルバフで2本、3本受け持ち。残りはヒラとDPSが1本づつで」
「了解。うちが3本持つぜ」
「お願い!」
打ち合わせが終わった辺りで円範囲がプレイヤーに投射。その着弾までに各々、被らないよう散開を済ませる。
一拍遅れの爆撃。
「むぐ・・・!」
「おうふー」
戦士のHPバーがミリの領域に入り込む。
「大地の息吹!」
すかさず司祭から戦士へ全快魔法が飛ぶ。
「さすHIME」
各々、司祭の働きに対し「さすが」「お美事」「グッドボーイ、グッドボーイ(※)」と思い思いの賞賛を投げかける。
「ちょっと?」
普段の柔らかな目元が、この時は三白眼となり。路傍の石を見る時と同じ眼差しがわたし達に向けられた。
※大きく拍手2回付き




