そは異形の神なりし
廃墟。
かつて炭鉱街として栄えた面影はもはや無い。形を留めている物と言えば家の基礎であったろう石やレンガ。
木造の扉や梁に至っては、長年の風雨と湿気のため原形を留めていなかった。
そのような場所に、それはいた。
大蛇。胴回りの直径は1m。全長は20m弱。
舌を出し入れし、周辺に獲物が居ないか終始探している動きをしていた。
尾に回り込む。手振りでリーダーが一行を誘導する。
動きに淀みが無い。敵が何であれ、し果たす。強い意志を持った者特有の動きだった。
大蛇の尻尾付近の茂みに辿り着いた。
あとはタイミングを合わせ打ち掛かるのみ。
尻尾が頭上に持ち上がり、あろうことか裂け目が走った。中から鋭い牙があらわれる。
「双頭の蛇!」
それは誰の声だったか。異形の姿に驚く一行。その間隙を縫い、前方にあったはずの大蛇の頭が牙を剥き出しにし、冒険者達側面より襲い掛かった。
「4、4に!」
短く簡潔な指示がチェキから飛ぶ。
わたし達はタンクとヒーラーが固まらぬよう、バランス良く2組に分かれた。
初手は大蛇。前方扇状範囲の毒霧り。
タンク2人が味方を巻き込まぬよう、頭と尻尾(だった2つ目の頭)を誘導する。
司祭が素早く解毒の魔法を唱える。
間髪入れず、双頭の牙が緑の輝きを放った。直後にタンク強攻撃。
わたしと騎士、二人のHPバーが大きく削れる。
この時、わたしとペアになっていた司祭が何かに気付いたのか。素早くリーダーに耳打ち。
一つ頷いたチェキが一時撤退の合図を出す。
「ちょっとストーーップ。一旦引くわよ!」
わたし達は即座に転身。大蛇から距離を取ったのだった。