砂漠の街 ~その②~
王国到着。わたしは、猫族戦士のうぴと合流を果たした。
この地に来た理由は他でもない。この王国の冒険者協会の長直々に、依頼要請があったためだ。
わたし達は依頼主に会うべく一路、冒険者協会の建物を目指す事にした。
整備された石畳の道が続く。何の気なしに、辺りを一瞥。引っかかりを覚えたわたしは程なく、道中の路地に意識を向けるようになった。
「浮浪者が多いな」
「つい最近、改革があったって聞いてるぜ?w」
曰く。王国の改革の一環で、先日奴隷制度が撤廃された。それは良いのだが、その元奴隷達が幸せに暮らせているのかというとそうではなく。大多数の奴隷が職に就けずあぶれているのが現状らしかった。
「職に就こうにも。満足な教育を受けた奴隷は一部だってさ」
「王国も。何の手切れ金も持たせずに放逐はしなかったんだろ?」
わたしの問いかけに「うむ」と、うぴが頷く。
「んだけど。奴隷達は短期間で散財しちまったんだと」
良くある話しではある。
無理もない。収入が無い上、いつ就業出来るかも分からず。ましてや「手持ちの財産の内、一日これだけ使って、残りはこれだけ貯めておく」という計画性を持って生きていける元奴隷など一握り。
(そういう「教育」も、受けれなかったんだろうな)
胸中、一人呟く。
「なあ」
戦士の一言に、わたしは現実に引き戻された。
「ぬ?w」
「あすこ」
見れば、浮浪者の一人が複数人の屈強な男達に殴る蹴るの暴行を受けている。
わたしは無言で盾を構えると、一気に間合いを詰めた。その勢いのまま、盾で男達に体当たり。シールドチャージを敢行。男達の数人が文字通り吹っ飛んだ。
「お・・・」
男の一人が口を開くよりも先に、わたしは盾で相手を殴打。機先を制する。
完全に気力が萎えたのだろう。方々の体で男達は逃げ出した。
うぴがわたしの元へ駆け寄ってくる。わたしはそれを待たずして、地面にうずくまった浮浪者に手を差し伸べる。
「怪我は?」
「大したことはありません。助かりました」
浮浪者とおぼしき薄汚れたフードの中から現れたのは。およそこの場に似つかわしくない、眉目秀麗の美女だった。
(なあ)
(ぬ?)
(浮浪者じゃねーぞw)
(ああw)
裏チャットで意思疎通を行う戦士と騎士。
次の瞬間。危険を察知した戦士が、わたしに向かって警鐘を鳴らした。
「かむ、上!」
手裏剣が飛来。都合、三閃。わたしは抜刀すると、飛来物に対し受け流しスキル「パリィ」をタイミング良く発動。全弾叩き落す。
攻撃が止んだ。目線が、敵を捉えんと動く。
黒頭巾を被った痩身の男が一人、路地奥に消えていくのが視界に入った。
「逃げてるなぁ」
「だめだ。追いつけない(/ω\)」
「雷」
雷光一閃。逃げる敵が黒焦げになり、地面にくずおれた。痙攣を暫く繰り返していたが、長くは続かずこと切れる。
一拍の後、魔法を放った主が、暗がりから姿を現した。
「お前は・・・」
「ガイ!?」
それは老魔導士(風のアバター)然とした、わたし達ギルドの懐刀。
ガイだった。




