神殺しの魔神テュポーン討伐戦 ~その③~
戦闘開始から5分経過。敵のHPゲージは残り90%。
魔神の攻撃が苛烈になり、冒険者達に降り注いでいる。
テュポーンは途中から、武器を使いだしていた。長大な両手槍。先端は鋭く尖っており、刃も鋭利。触れただけで「ああ。。。うん。こうさん(/・ω・)/」と、プレイヤーの心を折りそうな業物だった。
ゼウス像が淡い光を放つ。ほぼ同時に、魔神が手に持つ槍を前方に鋭く突き出した。
前方には、わたしがいた。
「にょ~~~??」
串刺しにされる「かむ」。テュポーンが槍を手前に引き戻し、先端に刺さったわたしを摘まむ。
魔神が手早く、「それ」を口に入れた。
「あ・・・」
「喰ったぞ!?」
「喰いやがった!」
「にゃんと~(・∀・)」
踊り喰いされる「かむ」。テュポーンの名前横に「捕食」ときっかり技名が出ていた。
口から吐き出された時には、HPゲージは0。司祭様の「蘇生」を待つだけの存在となっていた。
「うぴ、かむ。石像光ってた時、こっちでも何か光ってたよ」
ちぇきが、この即死攻撃の謎を解く鍵になりそうな事を教えてくれた。
「うぴ。テュポーン頼む。わたしは後方に下がって、「何か」を特定するよ」
了解、と戦士が頷く。暫く後、またゼウス像が光りだした。
わたしは注意深く後方のエリアに目線を向ける。すると、ちぇきの言う通りだった。ゼウス像の淡い光と連動して、木に実った果実の一つが光っていた。
カーソルを合わせる。表示名は「勝利の果実」。
「こいつを食えってことかな~」
わたしは近くに行くとコントロラのボタンを押し、果実をもぎ取った。
「かむ、後ろ後ろ~~」
「ぬ?w」
テュポーンが眼前に迫っていた。ゼウス像とわたしの間に巨体が滑り込んでいる。
わたしはそれを嫌い、テュポーンの真下をスライディング。ゼウス像の前に出る。
「ぬ・・・」
ゼウス像の淡い光を浴びる中、手に持つ果実の名前が「勝利の果実」から「無情の果実」に変化した。
なるほどなと、わたしは一人ごちた。
「こいつは」
わたしの物ではないらしい。わたしは口角の端を上げ、魔神に正面から向き合う。
「お前にやるぜ?w」
果実を奪い取ろうと差し出される魔神の掌。それに投げつけるように果実をトス。
テュポーンは「無情の果実」をわたしから受け取ると、ためらい無く咀嚼。
魔神が身悶えしだした。
時を同じくして、全体衝撃破がPTを襲う。1回。2回。3回。HPが数ミリになっては司祭の回復魔法で安全圏まで戻るという心臓に悪い経験を同じ回数繰り返す。
「かむさん、敵が何か唱えてる!」
これ以上耐えられない、と彼女が悲鳴を上げる。わたしは「分かった」と一言漏らすと、テンキーの4番を押した。
「天空破邪千手・・・」
「すまん。上から被させて頂く。『守りたい、あなたの笑顔!』」
パーティ戦闘ゲージを使用しての壁役必殺技が発動。冒険者達の前に、盾を構えた女神像が出現。効果は敵の攻撃を10秒間90%削減。
直後、大爆発。画面が光で真っ白になった。
「まぶしいな」
「目が痛い」
「すまん。目薬さす(/ω\)」
わたしは点眼を手早くすませる。
「しかし。ローの後でよく発動したな」
「なんか。わしのコマンド受け付けなかった」
ああ。回線状況が悪いとたまにあるやつか、とわたしは頷いた。
「ラッキーすけべ並みのラッキーさだったな」
「ああ」
わたしは「こんな感じか」と、スカートのすそをぴらっとさせる。
「幼女じゃな~。。。」
落胆するうぴに、わたしは抗議の声を上げた。
「うるせー鉄朗」
みなが、一斉に否定しだした。
「それ、違う」
「そんなメー〇ル、ヤダ」
「それ。メ〇テルじゃねーだろw」
「そんな酷い事・・・ショックで目からオイルがダダ漏れヨ」
うげーという拒絶の反応をしつつ、よろける猫族戦士。
「ヤ・メ・ロw」
「ふっ・・・」
笑みを浮かべるわたしの後ろ背で、ちぇきの声が聞こえた。
「いいから皆んなを守れ〜〜^^^^」
「ハーイ( ・∇・)」
リーダーの声に、わたしは元気よく返事をした。




