蛇王ザッハーク討伐戦 ~その⑥~
戦闘は最終局面に移行していた。
ザッハークの残りHP、5%。ここで、蛇王の体全体から赤い燐光が立ち昇り始めた。それを見たちぇきが冒険者達に激を飛ばす。
「削り切れ!」
やられる前にやる理論。それぞれ意思表示の仕方は多少違えど、同じ答えを返す。無論、と。
蛇王の右腕がたわめられるやいなや、敵の名前横に技名表示。「猛り狂う憤怒」。序盤のMTへの強攻撃+条件付き即死攻撃技。スキル発動中にわたしが「プロヴォーク」で攻撃対象移動を実行。
だが、敵の攻撃はこれだけではなかった。
先程の2体の石像から一本づつ線が伸び、外周近くの冒険者と繋がる。そしてその対象外になるも、3・4番目に外周に近かった冒険者の頭上に「〇」マーカが浮かび上がった。
「ダン、ぴろ!!」
「「任せとけ!」」
わたしの声に弾かれたように二人が駆けだした。外周から伸びた2本の線をそれぞれが奪うと、皆に迷惑を掛けぬようにと広間両端へ高速移動。同時に散華。
そして両肩の蛇はわたし達以外のptから選ばれた生贄二人に襲い掛かる。二人が即死。数秒後に訪れた全体範囲攻撃で全員のHPが1/3に。直後、3撃目の「猛り狂う憤怒」を受けたもう一人のナイトが致死量超過で昇天。
しかしこの一連の出来事の間にも、冒険者達は攻撃の手を緩めない。蛇王の残りHP、1%。
ここに来て最後のあがきか、石像が爆散。周囲にいた冒険者達が爆発に巻き込まれ、その中でも司祭の事前回復が間に合ってなかったのだろう。数人が息絶えた。思わず、コントローラを持つ手が汗ばむ。
ここで、あの男が吠えた。
「ほああああ!」
ロー爺さん(注:老けているのはあくまでアバター)の必殺攻撃。
「天空破邪千手破砕拳!!!!!!」
無数の拳が残像を伴いながらザッハークに突き刺さった。15秒間の無呼吸攻撃。追加効果は自身の攻撃力2.5倍。エフェクトは「使用者の目が真っ赤に燃える」。代償は自身のHPが急激に減っていくこと。司祭の回復も受け付けない。HPは1で下げ止まるため、「スキル発動中何も攻撃を受けなければ」生き残れる。
なお、正式名称は「秘拳」。彼が叫んだ技は「俺が考えた最強の攻撃」である。
みなが見守る中、彼の攻撃で敵の残りHPゲージが0に到達。蛇王轟沈。戦闘は終結した。
モニター上、冒険者達の歓声が文字として踊っていた。




