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とんだ勇気のむだづかい  作者: タンブラー本田
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6


 自分で思っている以上に、元交際相手の捨て台詞がどうも胸にさっくりと刺さっているようだ。


 とはいえ全くもって深刻なほどではなく、結局あれほど親切な女性の荷物を横目に見る罰の悪さに居たたまれなくなり、お礼はおろか挨拶もそこそこに別れてからデリカシーという言葉の定義をもんもんと考えているうちに、うっすらほんのりと自覚した程度の傷だが。


 デリカシーとはなんぞや。そう疑問に思ったところで、人に聞かずとも一人で解決することができるのは文明の機器の偉大さに感謝する他ない。しかしながら釈然としないのも本音である。デリカシーとは繊細さや他人への配慮が欠けていることだと、そこまでは理解した。大学生でありながらその言葉の意味について明確な理解が及んでいなかったのは恥じるべきだろうが、ニュアンスとしては既知の通りだった。いまひとつ納得していないのは、あの元彼女に言われるほどだろうかということだ。



 「はーーーっ。先輩、気まぐれサラダ2つです!プチトマト抜き1でお願いしますー!」



 本日は一本角の小鬼がやや大げさにため息をついてオーダーを運んできた。気まぐれサラダなんだから、プチトマトの有無を指定するなんて無粋ですよねぇ(笑)とか言わないあたり、ホールは忙しく動き回っているのだろう。キッチンである僕がこうものんびり感傷に浸っていられるのも時間の問題か。



 「新規オーダー3件、オーダー待ちは5件です!キッチンさん頑張ってください!」



 新規は前菜、メイン、デザートまでが2組、メインにセットが1組。サラダを注文したお客は新規にも待ちにもカウントされていないが、小鬼が仕組まれた気まぐれサラダを運ぶタイミングで追加オーダーが来るだろう。そんなふうに伝票を確認していると、私事に頭を使う時間を気にする暇すら惜しくなるまではそうかからなかった。



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