勇者と蒼魂の憂鬱
更にグダグです
オレが最後に見たのは蒼魂魔王と呼ばれていた黒髪に碧眼で頭にツノの生えた美しい女の呆気にとられた顔でしかもその後すぐに魔王の三叉槍に心臓を刺されたとこだった。
それで目覚めたら時が止まったま300年経ってて今こそ魔王を打つ時だと言ってる周囲の声が遠く聞こえる。
「勇者様よくぞ、お目覚めになった!さぁ!今こそ魔王を!」
「…魔王」
あの時の魔王、蒼魂の目にオレは心を躍らせた。
歴代最強の勇者アベル・フリードとして初めて対峙したタイプだった。
やりたくもない大役を押し付けられて何とかこなしながらも、退屈な時間を持て余したオレと同じ目をしたヤツ蒼魂魔王。
対峙した時「そうか、私は不要か…」と蒼魂魔王は呟いた。
見透かしたような言葉が心に残る。
そしてオレたちは戦い始めた。
仲間達が見守る中で武器を合わせた刹那に感じたお互いの心に響く。孤高と孤独が。
干渉し波紋のように広がる心。
同時に嬉しくなって行く、ここまで戦ってまだこいつは生きている。
まだ戦っていられる、オレと同じ存在と…
まるで子供のようにはしゃいだ、まだまだと戦いこの胸の高ぶりが冷めぬようにと続けた。
だが続くうちにわからなくなってきた、魔王は悪なのか?オレは勇者は正義なのか?誰が言ったんだっけ?
誰が言ったんだ、魔王は敵だと。
誰がだ、魔族は危険だと。
オレは最強の勇者の肩書きに只々孤独を感じていた。
毎日繰り返し聖剣で魔族を殺し、村人に感謝され旅立つ。
こんな繰り返しが続く。
蒼魂魔王はオレと同じなのか?
「勇者様!さぁ!」
あぁわからない。
鬱陶しい。
ああ蒼魂そこにいるのか…
「随分と荒れたな」
「300年分の劣化でピィ」
城から転送して来た城下町は罵声と喧騒響く魔王都でした。
昔はもっと静かだったんだけどなぁ。
「…この状態から立て直すのか、紫魂頑張れ」
「他人事でピィね」
呆れた顔でピィは諦めたように言った。
「我が君蒼魂様。お目覚めの際にお側にいなかった事申し訳ありません。俺は城に行くことが出来ませんので」
突如現れ、人をあざ笑うかのようにニヤけた顔で軽く言ったこの男は厄介だ。
深紫の髪と目を持つ紫魂の従兄弟キガルド・セルブラム。
私はギガと呼んでいる。
だか本当にこいつはわからん、紫魂の従兄弟なのに私に《魂の忠誠》を誓っている。
《魂の忠誠》は破ることのできない呪いで破ると魂ごと消滅してしまう。
普通はそれを先ずやらない、なのにこいつはやった。
全く読めない。
「ギガたまは紫魂たまに随分と疎遠にされてまピィたからねぇ」
「…かまわん、何故ここにいる」
「我が君のお迎えと近くの店にお食事の用意をしておりました。我が君はお目覚めになったばかり、城の連中は湯浴みの用意はしても食事の用意をしてはいないでしょうから」
確かに!
「…メニューは?」
「我が君は少食ですので軽いものにしました。レンズ豆と人参のリゾットと果物を少々、後お飲み物の紅茶はダージリンとウバのミルクティーをご用意しております。静かな、ですが息苦しくない店ですのでご安心を」
「いただこう」
「即答でピィ!」
「ピィ殿にも用意してあるぞ」
「いただきまピィ!」
良く気が効くし、頭も良いし回転も速いのにギガは人望がない。
理由は単純に顔のせいだ。
このあざ笑うかのような顔が7割、後性格は大分腹立たしく人を見下した発言を良くする。
大体ギガは計算してワザとやってるから尚タチが悪い。
だが私には従順だ。
ピィにも見下したような発言はさず自分と対等に扱っている。
ピィは私が力を与えたとは言え下級の魔鳥、
それを対等に同じ主人に仕える同僚として接している。
他のにもそうすればいいのに、基本問題しか起こさない。
めんどうなヤツだ。
「ん?」
「大丈夫でピィ?我が君」
「我が君、お口に合いませんでしたか?」
「あ、あぁ気にするな美味いよ」
私は此処にいる。
勇者よ、目覚めたか。
もう一度遊ぼう
この憂鬱な日々に終止符を…
そして短い