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愚王と呼ばれていた魔王  作者: 笛吹蒼
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紫魂魔王


桃色の瞳に黒髪の女、幼げな顔立ちではあるが妖艶さも兼ね備えたこの者は桃魂魔王。

妖艶な笑みを浮かべ実子である第一子ソランと第二子シアンに告げた。


「妾の愛子ソランよ。これより蒼魂と名乗り御主が次の魔王になるが良い」


王座の間の空気が凍った。

魔王の交代を宣言する桃魂魔王の一言は途轍もなく重かった。

何も持たないソランに魔王位を明け渡すと宣言したからだ。

桃魂魔王は蒼魂ソランを溺愛していた。

それだけの理由で宣言したのか、ある者は驚愕しまた、ある者はこれからの魔界を思い嘆いた。


「シアンよ、御主は紫魂と名乗り蒼魂ソランの助けとなるのじゃ」


再び空気が凍った。

魔王は真名を名乗ってはいけない、真名で縛られることを避けるために魂名が付けられる。

魂名の由来はそのものの持つ色によって時代の魔王から付けられる。

魔王にのみ魂名は授けられる。

同時に2人に魂名を付ける、それは異常だった。


「今一度言おう、次の魔王は蒼魂ぞ」


「母上!何故です!紫魂と与えられながらも何故!」


「シアン、主は器ではない。控えよ!」


蒼魂は唯々困惑するしかなく、その姿を見た紫魂は更に苛立ちがつのった。


「愛しいソランよ。思うがままにして良いぞ、其方が魔王じゃ」


数日すると桃魂魔王は世界樹の中で眠りにつき、その言葉通りに蒼魂が魔王になった。

蒼魂は紫魂と家臣達の間に深い溝を作りながらも魔王になるしかなかった。


「魔王蒼魂の名においてこれよりしばらくの間、先代桃魂魔王の喪に服す事とする」


最初の名がしばらくの間、戦いを放棄する事だった。

魔族は蔑み、蒼魂魔王を愚王と呼んだ。

腰抜けの愚魔王と、それは民にも広まり魔界全土に広まり、遂には人間達にも広まった。


「魔王蒼魂の名において宣言する。奴隷は重犯罪者のみとし、魔力を封じ国の為の労働のみとする。いたずらに命を賭けるなどの虐待行為は一切禁ずる」


この名で国の奴隷は一気に減った。

軽犯罪奴隷や借金奴隷・人間奴隷達は奴隷から解放された。

罪によるが軽犯罪者は国から新たな仕事を与えられそれを行う事で許され、借金奴隷だった未成年者達は速やかに保護者に帰され彼等を売った者・成人などにに借金返済の為の仕事を用意した。

人間達は速やかに国に帰された。

他にも様々な魔界の制度が見直された。


「魔王蒼魂の名において農業・貿易を進め国益を守る事を宣言する。皆の知恵を貸して欲しい」


これにより魔界の農業が盛んに行われ戦わなくとも自給できる様になり、戦わなくとも得られる食料にその食料の流通も転送魔法を各地に設置した事により円滑になった。

戦いの場が、魔族の本能をぶつける場が減った。

生活は潤うが心が潤わなかった。

蒼魂が魔王になり魔界の国益は充分に備わったが、150年戦いを好む魔族達は退屈な時が続いた。

戦いこそが本質の魔族にとって農業も奴隷もどうでもいい事だった。

奴隷になるのは弱い者が悪い強ければ良いのだと、農業などに時間をかけるぐらいなら奪えば良い、不満は積もる一方だった。




その時人間の国に勇者が現れたと言う噂が広まった。

紫魂は考えていた。

何故自分ではないのかと、自分の方が姉より優秀だと。

紫魂には魂名が与えられている魔王になる資格は揃っている。

先代桃魂魔王は蒼魂が次の魔王だと言ったがその次は?そんな事誰も言わない。

蒼魂は孤立している。

従っている者はほとんど表向きに従っているだけ、本当に従っているのは魔鳥と紫魂の従兄弟に当たる深紫の髪と目を持つ者達だけで蒼魂の力は大したことはないはずだ。


己の手を汚さずに魔王座を空けて頂こうと。


コレは魔族の総意だ。

勇者と蒼魂魔王に共倒れして貰おうと。

歴代最強と呼ばれた勇者とその仲間を王座の間に案内し蒼魂と戦いを初めた。

だが想定外は起こった、歴代最高と呼ばれた勇者は苦戦を強いられ愚王と呼ばれた蒼魂魔王は意外と強く未だ余力を残していた事。

紫魂慌てた、そして勇者の剣が刺さる瞬間蒼魂の影を踏み一瞬動きを封じて勇者と同時に剣を刺した。

蒼魂には聖剣と魔剣が心臓に刺さり、蒼魂の三叉槍が勇者の心臓に刺さっていた。

2つの剣が抜かれると蒼魂は光と闇に包まれ刺された跡は消え、蒼魂は死んだ様に眠りについた。

勇者と共に。

魔王は死ぬと世界樹に還る。

蒼魂は生か死かわからない、世界樹に還ることもない故に城の一室に棺を置きそこに蒼魂を納めた。

ベッドではなく棺とゆうのは目覚めなくても良いとゆう家臣一同の思いだった。


「姉、蒼魂の意を継ぎこの紫魂が魔王となる。これより人間達を滅ぼす、我が剣に続け!」


「「「「オオォオ!!」」」」


歓声が紫魂を包み、魔族達は存分に己の力を発揮した。

魔法を使い、武器を使い時には拳で戦い続けた。

本能に身を任せ、存分に暴れた。

休む間も無く。

100年を過ぎた頃から民から不満が漏れ出した、食料が不足していると。

紫魂は世界樹に送る魔力を増やした。

大地が痩せて来た。

それからまた100年たつと今度は商人達から来た、資源が不足していると。

紫魂は更に魔力を送った。

地震が起こりはじめた。

また100年たち今度は大臣達までが資金がないと言い出した。

紫魂は魔力の枯渇を感じていた。

大地が枯れ、頻繁に地震が増えた。

そして誰かが言った蒼魂の時代は豊かだった。

蒼魂の時代に不足した事はなかった。

蒼魂魔王の時に地震はなかった。


桃魂魔王は正しかった。



それから少ししてから魔界は大雨にみまわれた。

雨と雷が降りしきる中1つの知らせが城中に巡った。


蒼魂が目覚めた。


紫魂魔王の前に現れた蒼魂は堂々とし口上を述べた。

紫魂が後悔しようと、大臣・貴族が謝罪しようとも眉ひとつ動かさずに無表情だった。

魔王の時ですら無表情だったが紫魂の頭に手を当ててその手には魔力が集まっている。

紫魂を殺すのか、それも仕方がないだろうと思っていたが。

殺しはしなかった。

むしろ紫魂の魔力を回復させた。

一言残して従者の魔鳥と共にこの場を去った。




全ては魔王の意のままに、紫魂は魔王位を姉の蒼魂に返す事を決意した。



「姉上…貴女こそ真の魔王。この紫魂にこそ全ての罪、私は償いましょう…」


後に紫魂は魔王城の地下に幽閉される。

しばらくしてからある事件が起こるが最後は中々に幸せな生だったと遺している。

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