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星霊少女と妖精の騎士~Lost chronicle~   作者: すずしろ
祭りの始まりとその終わり
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時の霊姫-2

 エターニアの魔力が変質しロキ達はそれに対抗しようとした瞬間、


「遅いわよ」


 刹那、エターニアの姿が消える。そして、次の瞬間ロキ達の目に映ったのは──


 エターニアの剣がシルフィードの胸を貫き、星霊の心臓である霊核を貫いた瞬間だった。


「シル……フィード……?」


 エターニアが剣を引き抜くと、シルフィードの身体がどさりと倒れ傷口からは目に見えるほど濃密な魔力が血液のように流れていく。

 剣からゴトリと抜け落ちた霊核をロキ達は守ろうとするが、


「さようなら、シルフィード」


 エターニアは無慈悲にその霊核を足で踏み砕く。シルフィードは何かを伝えようとしていたが、それは果たされる事なくぱたりと倒れ、砂のように体が崩れ去って消えてしまった。

 エターニアはそれを見てくすっと邪悪にほほ笑む。ロキ達は歯を食いしばり、エターニアに向けて一斉に攻撃を仕掛ける。


空間支配(ラウム・エレンコス)


 エターニアが魔法の発動と同時に足で床を軽く踏み鳴らすと次の瞬間、空間が歪みすべての攻撃がエターニアの身体を紙一重で避けるようにして外れてしまう。


「外れた!? いや、違う……外された……!」


 ロキは舌打ちを一つして再び攻撃を行うためにエターニアの元へと突貫する。彼女はそれを見て憐れむように笑うと、ロキは見えない壁に押し出されるようにして宮殿の外へと吹き飛ばされた。続けてセラに向けて摘まむような動作をすると、セラの身体がグン、と引っ張られてエターニアの方へと一気に引き寄せられる。


「っ、まずい……」


 セラは咄嗟にエターニアに向けて土の槍を放つがロキの攻撃と同じように空間が歪み、エターニアへ攻撃が当たらない。エリミアは咄嗟にセラの周りに水壁を囲い、セラの動きを止めようとしたが完全に止めることは出来ない。エターニアは引き寄せられるセラに向けて剣を優雅に構え、笑みを浮かべる。


「させないっ!」


 瞬間、エターニアの意識の外側からエリーが一撃を見舞う。その剣はエターニアの腕を斬り落とし、致命的な一撃を与えた。


「ちっ……しつこいわね……!」


 エターニアの魔法が解け、セラはぺたんと地面に落ちる。


「ごめん、助かった」

「今は良いわ。それより……まだ、あいつは倒せてない」


 エターニアの方を見ると、切られた腕を強く押し付ける。すると、切られた断面に高密度の魔力が集まっていき、切断された腕を再び繋げていく。


「腕の再生とか……私達でもそんなにすぐに出来るものじゃない筈なんですけどね……」

「それだけ妾と貴女達霊姫との差があるという事よ」


 エターニアは見下すように悪態をつくルクスリアに対して笑いかける。


「ぅ……なに、が起こってるの……?」


 激しい戦闘音によってシエルが目を覚ます。


「あら……目覚めちゃったのね。まあいいわ、それならそれで貴女の目の前で彼女たちを殺して儀式を進めましょう」


 エターニアはそう言って、優雅に剣を構える。エリー達は既に消耗しているのに対してエターニアは未だに余裕そうな表情を保っていて底が見える気配がない。だからと言って、そこで諦められるような状況でも状態でもなかった。

 エリー達は全力の攻撃をエターニアに浴びせ続けるが、直接的な攻撃は自らがいなし、遠距離からの攻撃は彼女の魔法が自らに当たらないように軌道を逸らす。


「随分と頑張るけれど……そろそろ無駄だって分かってくれてもいいのよ?」


 エターニアは欠伸をしながらつまらなさそうにエリーの剣を受ける。


「嫌に決まってるでしょ……! あんたこそ、いい加減に倒れてくれたっていいのよ?」


 エリーはそう言いながらエターニアと剣を合わせる。常に余裕そうな表情を変えず、全員の攻撃を以てしてもエターニアに新たな傷を負わせるには至らない。


「……そろそろ飽きたのだけど?」


 瞬間、エターニアの剣の重みが増す。想定外の重量に思わず膝をついてしまう。それを見逃さずにエターニアはエリーの腹に蹴りを入れると、勢いよく壁に吹き飛ばされる。


「えーちゃん!!」


 シエルの叫び声が宮殿に響くが、その声はエリー達には届かない。エターニアは魔力を高めパチン、と指を鳴らすとその瞬間、全ての時間が止まる。


「じゃあ、さよなら」


 そう言ってエターニアはエリミアとセラの霊核を貫く。時が再び動き出すと、2人の身体がゆっくりと倒れ伏し身体が崩れ去っていく。


「ご、めん……」

「シエル、をお願い……ね」


 2人の消えるその瞬間をシエルは声も出せずにただ見てることしかできなかった。足元の魔法陣が光を放ち、その光の中の魔法文字がシエルの身体の中へと入っていく。


「ああ……儀式が進んでいるわ……あと少しね……さあ、新たな器を得られるまでの残り時間はどれくらいかしらね?」


 エターニアは煽る様にロキ達に問いかける。


「黙りなさいよ……!!」


 エリーはエターニアの言葉に激昂し、突貫する。だが、それすらもエターニアは嘲る様に笑って剣で受け流して無慈悲に蹴撃を放ち、エリーを地面に転がす。


「ぐぁあっ……!」


 エターニアは表情を変えることなく淡々と魔法を詠唱する。エターニアの手に周りが歪んで見えるほどの強烈な魔力が込められる。

 受ける事すら許されないそれを、エリーは何とか横っ飛びで回避する。ズドン、と轟音が響きエリーが転がっていた周辺の床が抉り取られた。


「もう、やめてよ……私の身体が必要なら……使っていいから……」


 シエルの掠れた声が戦場に響く。


「ダメ……シエル! 絶対に、助けるから……諦めないで……!」


 エリーはその声に必死に叫ぶように答える。エターニアはそれを聞きながら嘲笑する。


「あははっ、ダメよ。中途半端に生きているなんて……希望を与えちゃうじゃない。最初から諦めないのなら……全員死んでもらうしかないわ。もう、遅いのよ」


 エターニアはそう言って再びロキ達に止めを刺すために魔力を集め始める。先ほどよりも更に圧縮した魔力を掌に集めていく。


「っ……絶対……諦めない……っ!霊衣纏装(オーバーレイ)!」


 エリーは火の魔力を纏い、攻撃に特化した攻撃でエターニアに突撃する。流石のエターニアも自らの攻撃では傷を負うのか、魔力を霧散させてエリーの剣を受け止める。


「私にたった1つの属性で勝てると思っているのかしら?」


 エターニアはつまらなさそうに剣を受け流してエリーの鳩尾に掌底を叩きこむ。ミシミシと骨が悲鳴を上げ、口からは血の塊を吐き出す。


「その割には……っ、余裕がないわね……」

「あら、そう見えるのかしら?」


 苦し紛れの言葉を吐くエリーにエターニアは表情を変えずに剣をエリーの左の太腿に突き立てる。そして、そのままぐりぐりと傷口を抉る。


「っ~~~~~~!!!!」


 声も出せないほどの痛みに悶絶するエリーにエターニアは見下して笑いながら、


「そろそろ諦めてくれるかしら?」


 エターニアはにこやかに、ただし有無を言わさない圧で問いかける。エリーは歯が欠けてしまうくらい歯を食いしばりながら、エターニアに


「嫌に……決まってるでしょ、諦め……なさいよ」

「……なら、死んでもらうわね」


 エリーの返答にエターニアは剣を引き抜いて、そのまま首筋に向けて剣を振り下ろそうとする。剣がエリーの首を斬り落とそうとしたその瞬間、

 ガキン、という金属音と共に間一髪のところでツバキの刀がエターニアの剣を受け止めた。


「……そういえばまだ貴女達は消えていなかったわね。忘れてたわ」

「それならば……そのまま忘れていてくれてもよかったんですがね……っ!」


 ツバキは刀を力任せに振り抜いてエターニアを引きはがす。


「それで……瀕死の貴女達はいったいどうするつもりなのかしら? 無様に命乞いをしたら気が変わって助けてあげられるかもしれないわよ?」


 エターニアは余裕の態度を崩さないままくすくすと笑う。


「それは……出来ない相談よ!」


 ツバキは居合の構えを取り、エターニアに突貫する。エターニアはというと呆れたような表情を作り指を鳴らす。瞬間、ツバキの足元に魔法陣が出現し大爆発が起こる。

 しかし、爆発の瞬間に刀を振るい爆発の威力を減衰させた。


「霊姫を舐めるな……っ!」


 爆発の中心から飛び出し、エターニアに向けて刀を振るうが──


「ま、ただの星霊とエルフにしてはよくやったわ。でも、私には届かないわ」


 振るわれた刀を軽く受け止め、返す刀でツバキの首を切り落とす。ごろりと転げ落ちた首はエターニアが霊核を砕くと同時に砂になって消えていった。


「……っ!! ツバキ!」

「次は貴女よ、ルクスリア」


 エターニアはルクスリアが構え終わる前に一気に距離を詰めて、彼女の霊核に合わせて的確に剣を突き立てた。

 剣に貫かれた身体がゆっくりと消えていくのをエターニアは冷ややかに見つめ、そしてロキを見定める。


「残るは貴女達2人。覚悟は出来たかしら?」

「……分かっているね?」


 ロキはエリーに目配せをする。エリーはそれに気づいて剣を納めると目を閉じ次の一撃の為の準備を行う。


「……よく分からないけど、やらせないわよ?」


 エターニアはエリーに向かって光の矢を飛ばす。だが、それをロキは素早く弾いて光の矢を消滅させる。


「悪いけど……彼らほど僕は甘くないよ?」


 ロキは刹那の間に距離を詰めてエターニアに鍔迫り合いを仕掛ける。先ほどまでのそれとはまったく違うロキの力に驚き、エターニアはわずかに力負けして押されていた。


「あら……言うだけはあるわね。なら、これはどう?」


 エターニアの魔力が強まると同時に、その膂力が一気に上がる。ロキは一瞬表情を歪めるが、にやりと笑ってその剣と力を受け流す。


「なるほどね……っ、でも……見た事あるんだよね!」


 ロキは受け流すと同時に、闇の魔力を圧縮した魔法弾をエターニアの身体にゼロ距離で打ち込む。


「ぐぅっ……小賢しいわね……」


 エターニアが体勢を立て直す暇も与えず、ロキは連続で剣戟と魔法を織り交ぜて攻撃を仕掛け続ける。先ほどまでとは違い、ロキにペースを握られ続けエターニアが困惑している中、エリーは周りの音が聞こえなくなるほどに深く集中して魔力を高め、圧縮し続ける。


「いい加減に……しなさいっ!」


 エターニアは魔力にものを言わせた衝撃波でロキを振り払おうとするが、ロキは影を身代わりにして衝撃波を躱す。

 そのまま間髪入れずに魔法を撃ちこみ、エターニアに攻撃を重ねていく。目立ったダメージは無いものの着実に攻撃を加えていく。


「ああ……もう……っ、しつこいのよっ!」

「ははっ、そりゃ良かった! 僕の役目は果たせているみたいだね!」


 ロキはエターニアの攻撃を捌きながら挑発するように笑う。その間にもエリーは魔力を一点に圧縮して、必殺の一撃を練り上げていく。

 痺れを切らしたエターニアは魔力を一気に放出して周囲の空間を歪めていく。


「まとめて……灰になりなさい!『アポカリプス・フレア』!」


 黒い炎がロキに向けて放たれる。


「悪いけど……それも、知っているんだ!」


 ロキは自らの剣に魔力を纏わせて黒い炎を一刀のもとに断ち切った。想定外の事にエターニアは信じられないという表情をしながら顔を歪ませる。


「……そろそろ幕引きだ。頼んだよ、エリー。『吾身と共に敵を縛れ、グレイプニル』」


 ロキの身体から漆黒の鎖が飛び出し、エターニアの身体をロキの身体ごと縛りあげる。お互いの身体に巻き付いた鎖は地面に突き刺さりエターニアの動きを完全に止める。


「ふざけるな……! お前たちみたいな存在に妾が負けるなんて許されないのよ……っ!」


 エターニアは小さな剣を作り上げると、ロキの脇腹へ突き刺す。痛みで顔が歪み、鎖が僅かに緩む──が、決してロキはエターニアを鎖の外へ逃がすことはなかった。


「『霊衣纏装(オーバーレイ)アルコ・イーリス』……!!」


 エリーの身体に一気に魔力が集まり、そして圧縮されていく。銀の髪は魔力の影響で色を変え、光を受けると七色の光を返す。

 彼女のその姿を見て、初めてエターニアは恐怖を覚えた。


「何よ……あれ……! 不味いわ……! くっ、離しなさい……っ!!」

「げほっ……はは、悪いけど……僕も……君も、ここまでだよ」


 ロキは再び鎖を強く締め上げる。エターニアは必死にもがき、鎖から抜け出そうとする。


「……これで、最後よ」


 エリーは握る剣に魔力を乗せて、渾身の一撃を放つ。七色の一閃はエターニアの身体を一息に霊核ごと切り裂いた。

 静かにエターニアの身体は床に倒れこみ、エリーの姿を見上げる。


「ああ……私の、身体が……消えていく、わ……」


 エターニアの掠れた最後の言葉を聞きながら、エリーは最後の姿を見届けた。

 それと同時に、エターニアの魔法が解けシエルの身体が自由になる。拘束が解けると、シエルはエリーの元へと駆け出し、その身体を抱きしめる。


「えーちゃん……! 無茶しないでよ……」

「……ごめんなさい。でも、こうしないと……しぃを助けられなかったもの」


 傷だらけのエリーのその言葉にシエルは何も言わずにぎゅっと抱きしめた。


「痛くない……?」

「ちょっと痛い……かな。でも、いいよ」


 エリーはシエルを優しく抱きしめ返す。シエルはゆっくり身体を離して、そして、空色の瞳でエリーを見つめる。


「えーちゃんは、こんな姿だったんだね」

「……ええ。シエルの本当の瞳は、とてもきれいな色をしているのね」

「えへへ……そう、かな」


 エリーの言葉にシエルが嬉しそうに笑っていると、ロキが脇腹を抑えながらこちらへゆっくり歩いてくる。


「感動の所悪いけれど……最期に、僕の話を聞いてほしいんだ。もう、時間が残されていないから聞いてくれるととてもありがたいんだけど……」


 ロキの言葉にシエル達はこくりと頷いた。ロキは「ありがとう……」と安堵の言葉を吐いてから、最期の言葉をゆっくりと語り始めた。

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