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星霊少女と妖精の騎士~Lost chronicle~   作者: すずしろ
祭りの始まりとその終わり
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星霊祭-5

 シルフィード達は姿を消して街へと繰り出すと、5日目という事もあってかなりの人が行き交っている。


「それで……何か心当たり、というか引っかかっている場所はありますか?」

「いや……あんまりないかな……」

「という事は虱潰しで探すしかないという事ですね……」

「悪いわね、苦労かけさせちゃって」

「良いですよ。貴女に振り回されるのは今に始まった事じゃないですし」


 ルクスリアがそう言うと、シルフィードは「あはは……」と苦笑して町の中を飛んで異変が無いかを確かめていく。

 人は多いものの、星霊であるシルフィード達は歩いて回るわけではないので関係なく空中を飛んで手当たり次第に飛び回って探してみるが、


「……それらしい感じはどこにもないですね……」

「うーん……」


 大通りを中心に飛び回っては見ているが、とくに怪しいような痕跡もなく、おかしな魔力の流れもない。

 霊姫から吸い取った魔力であれば少ない量ではないので何かしらの痕跡があってもおかしくは無いのだが、不思議な事にそういうものが全くと言っていい程無い。それが逆に不自然ではあるのだが……


「隠されてるのか……それとも私達の魔力を全部取り込んだのか……」

「霊姫から吸い取った魔力よ……? 1人だけでも相当な量なのに、4人分の魔力を取り込んでおけるような人間も物質もないはず……というか、今まさに貴女の魔力が吸い取られているんですから、それを伝って吸ってる何かを逆探知って出来ないんですか?」

「うーん……それ私も思ったんだけど、どうにも地面に流れて行ってからは分からないのよね、地面全体に溶けていってる感じっていうか……」


 シルフィードが唸りながら言葉を捻りだして今の状態をルクスリアに伝える。


「つまり逆探知は出来ないって事ですね?」

「そうね……」

「なら仕方ないですね……地道に探すしかないですか」


 ルクスリアのそれに「悪いわね」とシルフィードが答えると、「元からあまり期待していなかったので」と無慈悲に返されていた。



 そこから気を取り直して街の中を飛んで手がかりが無いかと探していると、ルクスリアが


「……そういえば、大聖堂。シルフィードは大聖堂にはお嬢様達と訪れていませんでしたね?」

「へ? いつ?」

「星霊祭の初日ですから……4日前です」

「そう、ね……その時は一緒に行っていなかったはずよ」

「なら、先ずはそこへ行きましょう。私がお嬢様達と訪れた時は星霊達が不安そうな動きをしていました」


 ルクスリアの提案にシルフィードはこくりと頷いて大聖堂へと向かう。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 大聖堂へ2人が辿り着くと、そこには街中と同じように大勢の人間で溢れていた。


「……確かに、ルクスリアの言った通りちょっと変ね」


 人間たちにはその異変に気付いていなかったが、霊姫である2人の目には大聖堂に漂う魔力が異質なものになっている事に気づいた。


「……私が以前訪れた時はこれほど異質なものではなかったんですけどね」

「てことは、この4日でこうなっちゃったって訳?」


 シルフィードの質問にルクスリアは首を縦に振る。


「にしたって……こんな歪みに歪んだ魔力は初めて見たわね。昔瘴気にやられた土地に行ったこともあったけど、ここまで酷くなかったわ」

「私も、ここまでのものは見た事がありません……それに、この魔力は意図的に歪められた感じがあります」

「へ? これだけの魔力を歪められるの? 人が何とか出来るような規模じゃないわよ、これ」


 ルクスリアの言葉に思わずシルフィードが素っ頓狂な声を上げてしまう。


「私も信じたくはないですが……この短期間でここまで魔力が変化しているのは自然に起きる事じゃないです。それは、貴女も分かっているでしょう?」

「確かにそうなんだけどね……でも、そんな事して何になるの、って言うのとこんな規模の魔力の変質なんてどんな存在なら出来るのよっていう疑問がね……」


 シルフィードの言葉にルクスリアも同意する。大聖堂から感じる魔力の量は普段のシルフィード達の1/10程……なのだが、それでも意識的に留め置かないのであれば、それほど時間が掛からずに周りに十分すぎるほどの影響が出る。

 だが、シルフィードも言った通りこの場所の魔力を変質させてどうするのか、という目的と、これだけ大規模な魔力を変質させられる存在が何なのか、という2つの疑問がまだ残っている。


「……もしも出来るとしたら、私達と同じ霊姫、またはそれと同格の存在か、さらに上位存在……」

「そんなのいるわけ……?」


 ルクスリアのその言葉にシルフィードはあり得ないでしょ……と言わんばかりの表情を作る。


「私達が出会ったことは無いですがいるにはいるようですよ。霊姫の上位存在もいると文献にはありますし」

「……それほんとなの? 私達が会った事ないのに」

「強者同士は基本的には出会う事は無いですよ。余計な諍いを起こせば周りの地形が変わってしまいますからね」

「それは……確かに」


 ルクスリアの言葉にシルフィードは納得する。確かに昔、自分と龍が一度だけ戦った事があるが戦闘後に周りの地形がとんでもない事になっていた事を思い出した。


「……原因、確かめた方がいいよね」

「そうですね……原因を確認したうえで、どちらかに何かがあった場合は確実にお嬢様達に伝える事だけは徹底しておきましょう」

「そうね。ま、私達が捕まるなんてヘマはしないでしょ?」


 シルフィードの言葉に「当然です」とルクスリアは答える。風と光、どちらも逃げる事においてはトップクラスと言っても差し支えない属性だ。どちらかが捕まってしまう事はあっても2人ともが捕まるという事態はほぼ起こる事は無いだろう。


「さて、行きましょうか」


 意を決したシルフィードとルクスリアは大聖堂の中へと向かう。



 ◇◆◇◆◇◆◇



「今日は何をしようかな?」

「食べ歩き、とか……」

「それはルリがしたいだけじゃないの……?」


 街中に繰り出したシエル達はこの後の予定を決めながら歩いていた。街中の様子は変わらず賑わっていて、ルリの要望である食べ歩きも余裕で出来るくらいだ。


「歩きながら決めたらいいんじゃないかしら……」


 エリーがそう言うと、シエルは「確かにね~」とくすっと笑う。

 特に目的もなく街の中を歩いていると、一際賑わっている区画に辿り着く。


「ここ、随分と賑わってるけど……」

「何かやってるのかしらね」


 シエルがその雰囲気に誘われてそちらの方へと近づいていくとエリー達の視界に入ってきたのは、簡易的なリングを作ってでの戦いが行われていた。

 剣士と格闘家の男2人が相対しており、剣士の方は刃を潰した模擬戦用の剣を使っていた。だが、模擬戦用と言ってもしっかりとした作りになっている為、軽装の格闘家が攻撃を受ければ大ダメージは必至だろう。


「街中でこんな事やって良いんですね……」

「こういうお祭りだからじゃないかしら?」

「確かに……」


 そう話していると、戦いが始まったのかお互いが一気に距離を詰めよる。剣士の男が袈裟懸けに剣を振り下ろすそれを格闘家の男は、僅かに身体を傾けながら左腕を使って弾く。そのまま振り抜いた隙を突くように右拳で相手の脇腹を目掛けて鋭い突きを放つ。

 素早く交わされる攻防に周りで見ていた観客達も沸き立ち、シエル達もその戦い様に見入っていた。


「素人同士の戦いって訳じゃなさそうね……」

「それなりの実力者でなければこの攻防は無理じゃのう」


 戦いを見ながらそう話していると、格闘家の連撃を受けていた剣士の剣が砕けてしまう。

 それを見て観客達は大いに沸き立つ。ここからどうなるかと見ていると、剣が砕けバランスが崩れたその隙を逃さずに格闘家が剣士の脇腹に渾身の右拳が突き刺さる。それが致命打になったのか地面に倒れたままうめき声を上げて、ばたりと倒れた。

 勝負ありと判断した審判が、格闘家の勝利を告げると周りの観客達からは歓声が上がる。倒された剣士もその歓声を聞いてゆっくりと身体を起こす。格闘家は剣士の身体を支えて、ゆっくりとその場を離れていった。


「街中の戦いにしては随分とハイレベルな戦いだったわね」

「凄かったね……」


 シエル達が先ほどの戦いに興奮していると、ルリのお腹がきゅるる……と空腹を告げてくる。


「あ、あはは……何か、食べませんか……? お腹すいちゃって……」

「しょうがないわね……でも、この辺って何かあるかしら……?」


 エリーが周りと探していると、セラがシエルを連れて屋台で何かを買っていた。


「見て見て、占いクッキー! 中に運勢を示すものが入っているんだって! 面白そうだからみんなの分買ってみたよ」


 エリーはシエルから受け取ると「ありがと」と言ってクッキーを食べる。シエル達も同じようにクッキーを食べてみる。

 クッキーとしては普通の味だが、中に石が入っていてその種類で運勢を占うのだ。


「ん、私は氷霊石だ。これって……冷静に、とかそんな感じのメッセージだっけ」

「私は閃空石でした」

「妾は……これはなんじゃ?」

「それは黒煉石、悪い物から守ってくれるとかいう迷信がある」


 クオンの石を見てセラがそう言う。シエルもポリポリとクッキーを齧っていると歯先に硬いものが当たる。


「ん、これかな……? えーちゃん、私の石って何かな?」


 シエルが石を取り出すと、その石をエリーに渡す。


「その石は……幽石ね。確か……身の回りの事に注意して、だったっけ」

「えー……私だけなんかちょっと不吉な感じじゃない?」

「そういうものでしょ、周りの事に注意なんてそんなに不吉でもないわよ。しぃは気を抜いたら転ぶしね」


 エリーがそう言うと、シエルは「そ、そんな事ないもん!」と反論する。


「ま、それは置いておいて、ちゃんとしたご飯も食べましょ。クッキーだけじゃお腹が余計に空いてしまうしね」


 エリーはそう言って話を終わらせた──シエルのクッキーから出てきた本当の石は哭胤石。その石に込められた意味は


 遠くない未来、凶兆あり

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