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星霊少女と妖精の騎士~Lost chronicle~   作者: すずしろ
祭りの始まりとその終わり
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星霊祭-4

 学園祭が始まる合図の鐘の音が鳴ると、学園の外で待っていた一般の人達が門をくぐって学園の中へと足を踏み入れる。

 その中には王都に住んでいる人間だけではなく、観光で訪れた人たちも含まれていた。それだけこの学園祭の規模は大きい上に話題性があるのだ。


 シエル達迷宮探索部の出店は工房近くの中庭、入り口からは離れた位置に店を構えている。なので、探索部の出店はついでで見に行こうとするとそれなりに後の方になる。

 門が開いてから数分もしないうちに中央の校舎へと続く道にはかなりの人数が訪れていて、その喧騒が中庭の方にも伝わってきた。


「最初の方はうちの店に来る人は少ない。今のうちに完璧にしておくぞ!」


 アスティアの掛け声に呼応して、商品を綺麗に並べていく。

 陳列を終えた後はしばらく暇な時間が続いていたが、一組の冒険者がやってくる。


「お、今年の品揃えは質が良いな……アスティアが取りに行ったのか?」

「いや、そこにいる将来有望な後輩が素材を取りに行ったんですよ、先輩」


 アスティアは得意そうにシエル達の方に視線を向ける。


「へぇ、君らが……確かに、随分と魔力が多いし立っているだけとはいえ、他の後輩より隙が無いな」

「え、と……ありがとう、ございます……?」


 アスティアから先輩、と呼ばれた冒険者の言葉にシエルは少し困りながら答える。


「君たちの卒業後が楽しみだな。冒険者になるなら力になるよ」

「私の事は気にかけてくれないんですか? 先輩?」

「お前は俺らの力が無くたって何とかするだろ……」


 アスティアの言葉に、2人の冒険者は肩を竦めてそう言う。


「で、先輩たちは何を買ってくれるんですか?」

「ん、そうだな……ならこのナイフだな。これの刃の部分ってダークウルフの素材で作られてるだろ?」

「流石ですね、その通りです」

「このクオリティなら町の武具屋だと銀貨200枚くらいの価値があってもおかしくないな。それが半額の値で買えるんだから得でしかないだろ」


 そう言ってナイフを2本選んで購入する。


「俺らの知り合いにも伝えておくから、在庫の確認をしておいてくれよ?」

「分かりましたよ、先輩」


 アスティアはそう言ってクスっと微笑む。2人組の冒険者は「それじゃあな」と言って去って行った。

 それから後は学園祭を見て回った人たちや、ここで探索部が出店を出している事を知っている人たちがやってきていくつかの品物を買っていく。徐々に客足も増えて、いつの間にか今日の分の商品も残りは数えられる位の数になっていた。


「さて、今日は無事完売だな!」


 そこからしばらくして、無事に初日に用意していた全ての商品を売り切ることが出来たアスティアは、パン、と一つ手を叩いてそう言った。


「皆、お疲れ様。明日も担当している人は明日も引き続きよろしく頼むぞ」

「えっ、これって当番制だったんですか?」


 アスティアの言葉にシエルが反応する。


「ああ、とは言っても、シエル達は素材をかなりの数取ってきてくれたから、基本的には暇が出来たら応援に来てくれたらいいぞ。素材を取ってこれなかった部員たちが店の手伝いをする決まりだからな」

「あ、そうなんですね」

「うむ。素材を取ってきてくれた人に負担を増やすのも悪いからな。さて、片付けて撤収するぞ! 」


 アスティアの掛け声とともに、素早く出店が畳まれて探索部の部室へと運び込まれていく。アスティア曰く、メインの道に面していない出店は時間になるか品物を売り切った場合は畳んで片付けなければならないらしい。

 今日の手伝いでやってきた男子生徒4人がかりで出店を片付けると、そこからは各自で解散なのか好きなように集まって散っていった。

 陽も傾いてきた時間になり、シエル達も探索部を離れて寮の部屋へと戻ってきた。


「皆、調子……どう……?」


 部屋に戻ったシエルは不安そうな声でエリミア達に体調を聞く。

 エリミアはと言うと、今も霊体のままだがベッドの上でくつろいでいて朝程弱った風には見えなくなっていた。


「んー……実体化やめてからは大分マシにはなったけど……やっぱりずうっと力……というか、魔力が吸われてる感覚はあるかな。しかもこれ、表面的なのじゃなくて私達の核の部分から吸われてると思うから……同じ風に普通の星霊が魔力を吸われたら多分、消えて無くなるわね」

「そ、それって大丈夫じゃない……よね?」

「……そうねー……大丈夫とは言えないかな……でも、その辺は星霊を統べる霊姫だからね。この程度なら力を使いすぎなければ問題ないわよ」


 不安そうなシエルにエリミアがそう答える。


「使いすぎなければ……ってどれくらい?」

「ん? そうね……今の状態で危なくなるレベルだと……この都市を水没させるくらいの水を呼び寄せたら流石に不味いかな」


 エリミアが冗談めかしてそう答えると、その回答にシエルは思わず表情がひきつってしまう。


「そ、そんなレベルなんだ……」

「そうよ。元素を司る星霊、その最上位に位置する存在なんだから、ちょっと魔法を使ったり魔力を核から吸われる程度なら問題は無いのよ……って言いたいんだけどね。今はこんな状態だから困っちゃうわ……ま、でも言った通り相当大規模な魔法を使う事でもしないなら私達の存在が危うくなることは無いわ」

「それならいいんだけど……」

「だーいじょうぶよ。本当にやばかったらこんな所で呑気にダラダラしてないで別の所へ行ってるもの」

「それは……そう、かもね」


 シエルは、エリミアの言葉に心配の色を残しつつもそう答えた。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 その日の夜もまた解決策が無いかとエリー達と協力して色々な書物を探してみたが、結局手掛かり1つ得られずに次の日を迎えた。


「おはよ……みーちゃん、調子どう……?」


 シエルは、起きてまずエリミアの体調を確かめる。


「うーん、昨日よりはかなりマシになったかな。今日なら実体化しても問題ないかも」

「そうなんだ……良かった……」


 エリミアの答えにシエルは安心して胸をなでおろす。


「でも今日はやめておくわ。シエルを心配させたくないからね」

「うん。分かった、ありがとう」

「それで、今日はシエル達はどうするの?」


 エリミアの言葉にシエルはうーん……と考える。アスティアが言うにはシエル達は来たい時に応援に来てくれれば……と言われてしまった為に今日の予定を決めかねていた。


「それなら街中を歩いてみたらどうかしら、こういう大きなお祭りって日ごとに色々やる事が変わるじゃない?」

「確かに……シルフィの言う通りかも、ありがとねっ」

「ふふん、そうでしょ?」


 シエルの感謝にシルフィードは自慢げに胸を張る。


「という訳だから、今日は街中を歩いて面白そうなものを探そうの会にしよーっ」

「しぃがそう言うなら、そうしましょうか」

「セラ達はどうする?」


 予定も決まったところで、シエルはセラ達の行動を聞いていく。普段なら余程のことが無い限りはシエルの周りで守護するのだが、魔力を吸われている特殊な状況なので普段通りという訳にもいかない。


「私はもう動けるから、シエルの護衛をする」


 そうセラが答える。


「私はもう少し休ませてもらうわね……霊体の状態で今までの現象に何か原因が無いか探してみるわ」

「私は……やらなきゃいけない事があるから、セラに任せるわね」


 エリミアとシルフィードはそう答える。


「そっか。じゃあセラ、今日はお願いね」

「ん、任せて」


 シエルはそう言って、エリー達を起こす。シエルの手で揺り起こされたエリーは眠そうにシエルの服の袖を握る。


「もうちょっとだけ……寝かせて……」

「えー……もう……ダメだよー、起きてー?」


 エリーを起こすためにシエルは先ほどよりも少し大きくエリーの身体を揺らす。

 しばらくすると「うぅ……」という声を上げて目を開ける。


「おはよ……しぃ……」

「おはよ、えーちゃん」

「今日は早いね……」


 エリーが目を擦りながら身体を起こすと、シエルはエリーの横に座って


「今日は街の中を歩いて面白そうなものを見つける日にしたの」

「うん……いいんじゃないかな……ふぁ……」

「今日はえーちゃん凄く眠そうだね……」


 確かに普段よりも早い時間にシエルに起こされてはいるが、それを踏まえても今日は一段と眠そうに見える。


「よく分かんないけど……すっごく眠いのよね……」

「え……それじゃあ、出発はもっと後の方がいいかな?」

「そうしてくれると嬉しいかな……」


 エリーはそう言って再び目を瞑る。シエルの肩にもたれるように身体を傾けると、すぐに小さな寝息を立てながらもう一度眠りにつく。


「……出発はもうちょっと後かな」


 シエルはエリーの頭を撫でながらクスっと笑った。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 しばらくすると、エリーがゆっくりと目を開ける。先ほどよりはマシになったのかシエルの肩から離れてググっと身体を伸ばす。


「おはよ……ごめん、重かったよね……?」

「んーん。重くなかったし、気にしてないよ。それより、もう大丈夫?」

「うん……さっきよりは大分すっきりした。用意したら動けるから、着替えたら出発しよっか」


 エリーの言葉にシエルは「うんっ」と返事をすると、ベッドを下りてルリ達を起こして、自分も出発できるように準備を進める。全員が服を着替えて、準備を終えると


「それじゃ、行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい。楽しんできてね」


 シルフィードはそう言ってシエル達を見送る。


 扉が閉まりシエル達の気配が無くなると、


「っ……もう、いいかな……」


 シルフィードは苦しそうに床に膝をつく。ルクスリアはその姿を見て1つため息をついて


「はぁ……心配させないためとはいえ、無理し過ぎよ。同じ霊姫があれだけ弱るほどに力を吸われてるんでしょ? 貴女だって、かなり辛いはずよ」

「あはは……やっぱお見通しかぁ……」

「当たり前でしょ。貴女と一番付き合いが長いの、私よ?」


 ルクスリアはそう言ってシルフィードに魔力を分け与える。ルクスリアからの魔力を受け取り、少しはマシになったのかゆっくりと立ち上がる。


「それで……態々あんな事言ってまで別行動を取った理由を話しなさい? 少なくとも貴女の体調を隠し通すだけではないんでしょ?」

「ええ……これまで私達霊姫が魔力を吸われてきたけど……1人1人から少しずつ奪っていったって感じじゃない? でも、それって私達の魔力量がとてつもないから複数人からの吸収が出来ないから……って勝手に思ってたのだけど……なーんか別の理由もありそうなのよね。勘だけど」

「……貴女の勘はバカに出来ないですから、私も手伝いましょう」


 ルクスリアがそう言うと、シルフィードは「ありがと」と答えて2人で部屋を出た。

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