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星霊少女と妖精の騎士~Lost chronicle~   作者: すずしろ
祭りの始まりとその終わり
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星霊祭-3

 あれからシエル達は喧嘩をしつつも夕食を楽しみ、寮に戻ってきた。それからは夜も遅くなっていたので素早く身体を清めて眠りについた。


 星霊祭2日目、初日は闇と火を、今日は土の日になる。昨日は探索部の人が溢れるほどにいたが、今日もなのかと見に行ってみる事にする。


 部室に顔を出すと、昨日程の殺伐とした雰囲気は無くなっていたがそこかしこに泥のように眠っている生徒達の姿が見受けられた。


「おや……シエル達じゃないか。今日も来てくれたのかい?」


 部室の奥から出てきたのは眠そうな表情をしたアスティアだった。


「はい。お手伝いできることがあればと思って……」


 シエルがそう言いながら辺りを見回す。眠っている生徒の姿さえなければ、部室内はそれなりに綺麗になっていて昨日の惨状からは随分と片付けられていた。


「うーん……なら、工房に頼んでおいた学園祭用の売り物を取りに行って貰えないか?」

「はいっ、任せてください」

「悪いね。私も含めて昨日の準備で手間取っちゃってね……まだ作業してる生徒も何人かいるが……私も寝てないんだ」


 そう言って大きく欠伸をする。シエルはアスティアからの頼みを受けて商業科の工房へと向かった。

 工房の中は星霊祭中だろうと変わらず鎚の音と炉の熱気で満ち溢れていた。シエルは話しかけられそうな生徒を見つけると、


「あの、迷宮探索部からの依頼で星霊祭の出し物用に作ってもらった物を取りに来たんですけど……」

「ん? 探索部の人? ちょっと待ってね……」


 シエルがそう聞くと、生徒はそう言って工房の奥の方へと持っていた荷物を運びながら行ってしまった。しばらく待っていると、先ほどの生徒が台車に木箱を数箱乗せて戻って来る。


「一先ず今出来てる分はこれかな。加工の手間もほぼ要らなかったアクセサリー類ね。シャドウウルフとかのしっかりした加工が要るものはもうちょっと後かな。どれだけ急いでも明日か明後日になるだろうから、目玉として宣伝しておいてくれると助かるよ」


 シエルは貰った荷物をルリ達は協力して台車を引いて部室へと持っていく。帰り道に周りを見回してみると、既に準備を終えた部活動の出店が作られていたりと着々と祭りの学園祭の準備が進んでいた。

 そんな様子を見ながら部室に戻ると、何人か死体のような状態から回復して動き出したようで、各々協力しながら学園内に出店する準備を進めていた。


「ステラさん、受け取ってきましたよ」

「助かるよ。確認は後で私がするからそうだな……あの端に置いてくれるかい?」


 アスティアの指示を受けてシエル達は荷物を部屋の端に箱を置いていく。その後も細々とした作業を手伝っていると、いつの間にか昼食を取るにはちょうどいい位の時間になっていた。

 それを知らせるようにシエルのお腹からきゅるる、と音が鳴る。


「おっと、もうそんな時間か。シエル達も昼食を取って来るといいよ」


 アスティアの言葉に他の部員たちもそれぞればらけて昼食を食べに行くために動き出す。


「……?」

「セラ、どうしたの?」

「……なんだか、身体が重い」


 セラは不思議そうにそう言う。星霊は人の形こそ取っているが、生物ではなく霊体である為物理的な現象とは無縁のはずなのに、身体が重く感じたのだ。


「大丈夫?」

「ん、動けないほどでは無いし、魔法も普段通り使えるけど……あまりいい気持ちじゃない。なんか……力を吸われてるような、そんな感じ」


 セラのその言葉に、ルクスリア達はうーんと首を捻る。シエル達は当然そんな感覚は無いし、シルフィードやルクスリア、他の霊姫にもそんな感覚はなかった。


「うーん……とりあえず、何かあったら言ってね?」

「ん、分かった」


 一抹の不安を抱えながらもシエル達は昼食を食べに食堂へと向かうのだった。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 それから、セラの容体は大きく変化する事は無かったが、良くなるといった事も無く、アスティア達と協力して明日の出店準備を進めていった。ある程度店の形も様になってきて、あとは明日部室内から商品をもっていけば完成、といった状態にまでにはなった。


「みんな、ありがとう。これなら明日には十分間に合いそうだ」

「明日、楽しみですね」

「そうだな。明日も頼むぞ」


 アスティアの言葉にシエルは「はいっ」と返事をして、それに「うむっ」とアスティアも嬉しそうに返事をする。

 それからは各自で解散となり、シエル達は自室へと戻った。


「セラ、調子はどう? 良くなった?」

「変わらない……ずっと、少しずつ力を吸われるみたいな、気持ち悪い感じ」

「そっか……シルフィ達は、変わったところは無いんだよね?」


 変わらず不調を訴えるセラに、シエルはどうしたものかと頭を悩ませる。シルフィード達も原因に心当たりはない上、そう言った不調も見られないので何が違うのかと同じように頭を悩ませた。


「過去に同じような事……あったかなぁ……私は記憶にないけど」

「私は魔力の吸収する特殊な土地に行った時に、セラの言っているような力を吸われる感覚を味わったことはあります」


 ルクスリアはそう言うが、セラの不調の根本的な解決方法にはなっていない。


「ここがそういう場所……ってことはないもんね……」

「そうね。もしそうなら私達だってセラと同じ不調が出ないとおかしいし……」


 全員が考えていても何かが思いつくわけでもなく、ただただ時間だけが過ぎていった。

 それからは夕食をとって、何か糸口が無いかとセラの持っている古い本を手分けして読んで原因を発見しようとしたが、これもまたきっかけらしいきっかけさえ見つけられず仕舞いだった。


 色々と考えているうちに眠ってしまっていたのか、エリーが目を覚ました時には既に朝日が昇っていた。床で眠っているシエルを優しく起こすとベッドに連れていく。今日から学園祭が始まるが、まだ朝早い時間なので校門は開かれていない。



「セラ、調子はどう?」

「ん……昨日よりはマシ、かも。でも、やっぱり力を吸われてるような、感覚はある」

「そう……分かった、無理しないでね」


 エリーはそう言って昨日広げて出しっぱなしになった本を片付ける。粗方片付いた辺りでエリミアが、


「あ、れ……?」

「どうしたの?」

「私も、なんか調子、変かも……」


 立ち上がろうとするエリミアだが、上手く力が入らないのかぺたりと座り込んでしまう。


「これ、セラの言ってた力を吸われるってやつ……?」

「エリミアも……!?」

「差があるのか分かんないけど……私、全然力入らないや……」


 他の人がいない時は霊姫達は実体化して過ごしているのだが、エリミアは魔力を吸われている影響なのか実体化をせずに霊体の状態で極力魔力を消費しないようにしていた。


「大丈夫……?」

「実体化さえしなければなんとかね……」


 そう言ってエリミアは笑うが、その笑みも無理をしているのが分かるような笑みだった。


「おはよ……えーちゃん……」

「あ、おはようしぃ」


 寝なおしていたシエルがむくりと起き上がって、眠そうな目を擦りながらエリーに挨拶をする。


「えりみあ……どうしたの?」

「ごめん……私も、力吸われてるみたいで……」


 エリミアの言葉にシエルの目がぱっと目覚める。


「だ、大丈夫!? 私の魔力、分けた方がいい……?」

「あー……大丈夫、そこまでしなくてもいいよ。実体化は出来ないかもだけど、むやみに魔力を使わなければ問題はなさそうだし……それにお店、今日からなんでしょ……? 私の事気にして、楽しめないなんて……勿体ないわよ」


 エリミアの言葉にシエルは申し訳なさそうな顔をする。


「エリミアの様子は私が見てる。私も、万全という訳じゃないから。シルフィードとルクスリアがシエル達と一緒にいた方が良い。流石に、嫌な予感がする」


 セラの言葉にシエルは不安そうな表情に変わる。


「出来る限り、調べてみるから。シエル達は、気にせずにお祭りに行ってきて。初めてなんでしょ? こういうの」


 シエルの心配を他所に、セラはぽんぽんとシエルの頭を撫でてそう言う。


「……分かった。無理しちゃダメだよ、みーちゃん、セラ」

「ん」

「私は無理せずセラの手伝いをしておくわね」


 2人のその言葉にシエルは少しの間を置いてから首を縦に振る。


「えと……それじゃあ、ご飯……食べに行こっか、えーちゃん」

「そう、ね。ご飯、食べに行きましょうか。ルリ達も起こさないとね」


 エリーとシエルはルリ達を起こして、着替えをした後に朝食を取りに食堂へと向かった。



 ◇◆◇◆◇◆◇



「エリミアさんも……」

「本人は大人しくしておけば大丈夫って言ってたし、あまり重くは考えないようにしましょう」


 エリーとシエルは朝食を食べながら話す。ルリ達もその話を聞きながら静かに食事を進めた。

 食堂についたばかりの時はぽつぽつと生徒がいただけだったが、食べているうちにいつの間にか席の半分程に生徒が座っていた。

 今日が学園祭の初日という事もあってか、生徒達の雰囲気は普段よりも浮足立って見える。

 エリー達は朝食を食べ終えると、部屋に戻らずにそのまま迷宮探索部の部室へ向かった。


「おはようございます」

「おはよう。さあ、今日からだみんな、よろしく頼むぞ!」


 扉を開けると、アスティアが他の部員を鼓舞しているのが見えた。シエル達もそれを聞いて、今はこの学園祭を精一杯楽しもうと、そう決めるのだった。

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