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星霊少女と妖精の騎士~Lost chronicle~   作者: すずしろ
祭りの始まりとその終わり
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星霊祭-2

 学院に戻ったシエル達は特にやる事も無く、自室でのんびりと過ごしていた。


「これからどうする?」

「うーん……星霊祭が始まるのっていつからだっけ?」

「聞いた話だと今日の夜の鐘がなるタイミングからが始まりらしいですよ。それと、かつての星霊祭と同じように始まるまでは灯りをつけてはいけないそうです」

「ルリの言っていたあの闇より~ってやつ?」


 星霊を祀るために行われる星霊祭。とは言うが、シエルには言葉に表せない何かが引っかかる。ただ、それを言語化できないし、下手にそれを言ってエリー達やシルフィード達を必要以上に警戒させてもいけないだろうと思い、それについての思考を止める。


「何にしても始まるまでは暇なのよね……」

「うーん……あ!それなら、星霊祭の事みんななら知ってるんじゃない?」


 そう言ってシエルはルクスリア達の方を見る。


「確かに私達は以前の星霊祭については知っているので教えられる事はありますが……覚えていない事もありますよ?」


 ルクスリアは「それでもいいのなら……」と言うと、シエルは


「それでもいいから教えて欲しいかな」


 そう答えた。その言葉を聞いてルクスリアは


「わかりました……とは言っても、私達も星霊祭という行事の始まりは分からないです。内容は……場所場所で大小の規模はありましたが中身はどれも魔法を使える事を星霊達に感謝する。といった内容でしたね」

「昔は魔法が魔力によって使える事が知られてなかった……って事かな?」

「そうでしょうね。今でこそ魔法は魔力で発動するもの……という事が分かっていますが、昔はそうではありませんからね」

「まあでも、全くの間違いでも無いけどね。魔力が溜まり続けて高密度になった結果産まれるものが星霊なんだし」


 シルフィードの何気ない言葉にシエルは「えっ」と驚きの声を上げる。


「あれっ、言ってなかったっけ?」

「言ってなかったよそんな事っ」


 突然の情報にシエルは思わず声を上げる。シルフィードはというと「ごめんごめん……」と軽く謝る。ルクスリアは「全く……」と言わんばかりの表情で話の筋を元に戻す。


「話を戻しますよ……魔力に気づかないかつての人々は星霊に感謝をして、この星霊祭を始めた。という所が始まりとしては妥当な所でしょうか」

「そうだねぇ……みんなもそれくらいしか分かんないんだよね?」


 シエルがシルフィード達の方を見るが、ルクスリアと同じ程度の知識しか持っていないのかふるふると首を横に振る。


「そっかぁ……それなら仕方ないよね。ありがとう、みんな」

「いえ……肝心なところでは力になれず申し訳ありません」

「そ、そんな事は無いから。とっても助かったからっ」


 シエルはルクスリアの言葉にフォローするようにそう言って、星霊祭についての話を終えた。


 それからは結局やる事も無く、星霊祭が始まるまで時間を潰していた。陽も落ちて普段であれば町には灯りがついていておかしくない時間だが、今日は星霊祭の為に灯りをつけるのを控えている為、月の光がやけに明るく見えた。


「そろそろ始まるだろうし、始まるところ見に行かない?」

「そうね、見に行きましょうか」


 シエルのワクワクが止まらないといった感じの声に、エリーも止めることなく一緒に見に行くことにする。

 星霊祭の期間だけは門限が緩くなり、夜でも許可無しに学園の外に出ることが出来るのだ。



 学園の外へて町に繰り出すと、月明かりで視界は普段見える景色よりも悪いものの、それでもかなりの数の人がいて、歩くのが難しいといったほどでは無いにしても、昼間と大差がない位の人の数がいる事は分かった。

 シエル達は中央広場に向かうと、そこには昼間よりも多くの人が集まっていて、皆が星霊祭の開始を待ちわびているのが分かった。


「暗いのに凄い数の人だね……」

「それだけ星霊祭が始まるのを楽しみにしている人たちがいるって事よ」


 エリーはそう言ってシエルの手をギュッと握る。ルリ達も近くで一緒に待っていると、広場にいた人々がざわつき始める。

 シエルが広場の中央の方を見てみると普通の人間とは違う魔力を持った人物が現れた。


「あの人……なんだろう、不思議な魔力……」

「そうですね……人にしてはとても純粋で、どちらかと言えば星霊のような質の魔力に近いですね」


 ルクスリアが姿を消しながら、空中からシエルの見た人物の事を見ていた。シエルは人混みの後ろから魔力の違いだけで気づいていたが、ルクスリアは空を飛べるのでその姿をしっかりと見ることが出来た。

 その姿は、フードを被っていてよく見えないが白に金の装飾をしたローブを纏い、何か仮面のようなものをつけている事は確認できた。


「これより、星霊祭を執り行う!」


 フードの人物の隣にいた一回り大柄な人物がそう言うと、仮面の人物が何かの魔法を詠唱する。

 詠唱が終わると、空に魔法陣が浮かび上がり広場の周りに設置されていた燭台に一斉に火が灯った。


「今ここにいる幸運を噛み締め星霊に感謝をしなさい。そして、この星霊祭を存分に堪能するといい」


 この場にいた人たちはその演出を見て歓声を上げ、星霊祭の開始を喜ぶ。そして、開始と同時に消されていた街の灯が一気に付き始め、夜の街に光が溢れる。


「今からどうする?」

「そうね……どうしましょう……」


 シエルとエリーが2人でどうしようかと悩んでいると、ルリのお腹からきゅるる、と可愛らしい空腹を知らせる声が聞こえた。


「夜ご飯だね?」

「……そうね。私もお腹は減ったしね」


 シエル達は灯りの灯った街中に繰り出す。街中は昼間以上に人がいて、道を歩くのも少し難しい程だった。

 近くの名前の知っている料理店に入ると、やはり沢山の人が訪れていて席が空いているか少し不安になったが、何とか入ることが出来た。中に入ると既に店内は大賑わいで、祭りの観光客だけでなく冒険者たちの姿もそれなりの数見られる。

 何とか空いていた席に着席して、何を頼むかを迷っていると料理を手早く運びながら、店員がシエル達のテーブルにやってきた。


「今日は星霊祭だから特別にレッサードラゴンのワイルドステーキを出してるんだ! 無くなったら終わりのメニューだから、もし良かったら食べてみてね!」


 そう明るく宣伝して素早く去っていくと、また厨房から料理を受け取ってあっちこっちへ料理を運んでいた。


「どうする? レッサードラゴンのステーキだって」

「私は食べてみたいかも」

「わ、私も食べてみたいです……」


 エリーの言葉に反応したのはルリとシエル。ルリはお腹が減っていたからなのだろうが、シエルは多分特別という言葉に惹かれて食べて見たくなったのだろう。


「じゃあ、頼んでみましょうか」


 エリーがそう言って店員を呼ぶ。シエル達はレッサードラゴンのワイルドステーキ、エリーは山菜のパスタ、クオンは山鳥の煮込みを頼む。

 祭りの始まって賑やかさの増す店内の雰囲気を味わっていると、いつの間にか料理が運ばれてきていた。最初に運ばれてきたのはエリーの頼んでいた山菜のパスタ。それと山鳥の煮込みだ。


「美味しそうね」

「そうじゃのう」


 エリーとクオンは先に料理を口に運ぶ。味は文句なしなのか、2人とも食べていて満足そうな表情をしていた。

 シエルは待っている間にエリーの頼んでいた山菜のパスタを少し食べさせてもらっていた。山菜をたっぷりと使ったパスタは肉を使わなくても満足できるほどのボリュームで、そのクオリティに驚いていた。

 ルリもクオンから山鳥の煮込みを少しつまみながらドラゴンのステーキが来るのを待っていると、


「お待たせ、これが特別メニューのレッサードラゴンステーキよ!」


 店員はそう言ってテーブルに特大のステーキを置く。まだジュウジュウと肉の焼ける音と香草と肉の強烈な香りが鼻腔をくすぐる。


「すっごい大きいですね……」

「そうだね……ルリ、切ってもらっていい?」


 シエルの言葉にルリは手際よくステーキを切り分けていく。切り分けたそれを小皿に分けてシエルに先に渡す。

 シエルは受け取ったそれをぱくりと口に運ぶと、強烈な旨味が口いっぱいに広がり、シエルの顔が思わず緩んでしまう。ルリもシエルのその顔を見て続いてステーキを口に運ぶと、同じように幸せが口の中に広がった。


「~~~っっっ! すっごい美味しいですっ!」

「だよね!」


 2人が嬉しそうにステーキを頬張っていると、エリー達も食べたそうな表情をしていたのでシエルはルリに頼んで2人にも切り分けたステーキを渡す。エリー達もステーキを食べると、同じような表情をする。


「すごい……こんなに美味しいお肉があるのね」

「妾も初めてかもしれん……これほどの肉を食べるのは……」


 2人は絶賛しながら、自分の頼んでいた料理よりもステーキを食べている2人にシエルは「も~!」と不満そうな声を上げる。


「えーちゃんがステーキばっか食べるなら私がパスタ貰っちゃうからね?」

「えっ!? そ、それはダメっ」


 エリーのその言葉も空しく、シエルは「だめーっ」と言ってパスタの皿を自分の元へと寄せてしまう。クオンはやれやれ……と言わんばかりの表情でステーキを頬張っていた。


「貴女も同じですからね? 頂いちゃいますから」

「ぬあ!? こら! 妾の頼んだ料理じゃぞ!?」

「いいじゃないですか! 貴女も私達のステーキを食べすぎなんですよっ!」


 暴れないように自制はしているが、クオンは今にも魔法を使いそうなくらいの勢いだった。


「もー喧嘩しないのー!」


 シエルは呆れたようにそう言って2人を諫める。そんな中、エリーはというとバレない様にこっそりとステーキを1人味わっていた。

今回もお読みいただきありがとうございます!


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