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特訓、始めます!-4

ブルアカやっておんおん泣きながら書いてました。

 特訓を始めて二十日が過ぎた。シエル達は変わらず同じ広場で練習を続けていたが、その広場は随分と様変わりして、訓練場のような見た目に変化していた。


「ふっ……!」

「おっと……危ないわね」


 シエルはミリアの攻撃を躱しながらミリアに攻撃を当てるべく杖を振るう。それはミリアに当てることこそ叶わなかったが、薄皮一枚分ぎりぎりの位置に攻撃が通り抜けていった。最初の事は気配を断って攻撃を仕掛けてくるミリアに手も足も出なかったが、今では気配以外の僅かな空気の流れの変化だったり微かな音を頼りに攻撃を予測して、拙いもののカウンターを狙えるほどになっていた。


「今のは惜しかったわね」

「うー……いけたと思ったのに……」


 くすっと笑ってミリアはシエルの頭を撫でる。


「正直、気配を消した私の攻撃を避けられるようになれば良いかなってくらいの認識だったけれど、シエルちゃんは反撃を出来るところまでになったんだもの。凄いわ」


 ミリアは特訓用の軽い杖をしまうと、


「今日は早めに切り上げましょうか、明日はここを発つんでしょ?」


 そう、明日はここを出てサバラに戻ることになっている。だからミリアも昨日までと同じペースで特訓をしては明日の出発に支障をきたすと思って早めに止めることにした。


「特訓に付き合ってもらって、ありがとうございましたっ」

「いいのよ。私も楽しかったもの」


 シエルがぺこりとお辞儀をして、エリー達の元へと向かう。



「はあぁっ!!!!」

「おっと……」


 エリーとラドルフは未だに模擬戦を続けていた。この短い期間に二人の実力差は相当縮まり、ラドルフも剣を抜いて本気での戦いと大差のないような模擬戦になっている。


「そこっ!」

「うおっ……っと、危ないのう」


 エリーの剣閃が紙一重の位置を掠めながら、ラドルフは後ずさる。剣を構え、エリーを見つめる。


「さて……これで最後にするかのう」

「そうね」


 二人は一瞬の静寂の後に、瞬時に距離を詰めて剣をぶつけ合う。剣同士がぶつかる音が幾重にも重なって響きあう。一際大きな音が一度響くと、二人はお互いに距離を取って剣を構えた。


「いやーこの短期間で見違えるほど強くなったのう」

「当然よ。しぃを守るために強くならないといけないんだから」


 お互いに剣を収めながらそう言う。


「でも結局一撃も入れられなかったわ……」

「踏んだ場数が違うからの。それでも、日が経つほどに押されてはいたがの」

「次にやるときは絶対に一撃入れるんだから」

「楽しみにしておるよ、ふぉっふぉっ」


 エリー達が振り返るとそこにはシエルとミリアが立っていて、シエルは二人の戦いを見て興奮した様子でエリーに話しかける。


「すごいすごいっ、えーちゃんいつもこんな特訓をしてたの!?」

「いつもじゃないわよ。今日は最後だしってちょっと気合が入っちゃっただけ」


 エリーはふぅ、と一息ついて服についた土埃を払う。


「さて……と、家に戻りましょう。明日の出発の準備をしないといけないからね」

「うん、クオンとルリはまだ特訓中かな?」

「そうじゃないかしら……近くだし見に行ってみましょうか」


 シエル達はクオン達が特訓を行っている場所に近づくにつれて、戦闘音が聞こえてきた。


 ルリとレギスタは超至近距離でのインファイトを行っている。紙一重でお互いの攻撃を躱しながら、反撃をする……という戦いを行っている。シエルはその戦いぶりに驚きながら見入ってしまう。


「すごーい……」

「速度なら私よりも速いかも……」

「ラドルフ坊も速いがあの娘っこも相当速いのう。ワシでも追うのがかなりギリギリじゃな」


 シエルとエリーはルリの成長に驚いていた。ルリも決して戦えないわけではないが、エリーは内心ルリがシエルの事を守るには力不足だと思っていたが、この特訓期間で見違えるほどに強くなっているのが目に見えた。


「はぁっ、はぁ……っ、ありがとう、ございました……」

「お疲れ様。初日と比べると随分成長したな」

「はいっ……」


 肩で息をしているルリにシエルが近寄って、


「お疲れ様、ルリ」

「お嬢様……」

「さっき見たけど、凄く頑張ってたよ」


 シエルはそう言って、ルリの頭を撫でる。ルリは犬耳をぴこぴこと動かしてくすぐったそうにしていた。


「い、今は動いた後だから汚れちゃいますよ……」

「いいの、頑張ってたんだから」

「うぅ……」


 撫でられて顔を赤くしているルリに、シエルはくすっと笑う。


「なんじゃなんじゃ、全員集まって……」

「クオンじゃない、貴女も終わりなの?」

「うむ。明日の為に身体を休めよと言われたのでな」


 クオンがそう言うと、後ろでガルナがそうだと言わんばかりに首を大きく縦に振る。


「じゃあ戻りましょうか。出発の為の準備をしないといけないし」

「うん。皆さん、ありがとうございました」

「いいって事よ、俺たちも勉強になったからな」


 ラドルフはそう言って笑うと、シエルの頭をぽんと撫でる。


「次に会う時はどれだけ成長してるか楽しみにしてるぜ」


 ラドルフたちと別れると、シエル達は今日で最後の家へと戻っていった。


 四人ともしっかりと休息を取り翌日、シエル達はサバラへと向かって出発した。砂漠を進み、図書館が見えてきたところで見覚えのある姿が見える。


「随分鍛えてもらったみたいだね」

「はい、沢山鍛えてもらいました」


 ロキは「それはよかった」と嬉しそうに笑う。実体化したルクスリアは怪訝な顔でロキに問う。


「今までの貴女らしくないわね。昔の貴女は決して表舞台に立たなかったのに、お嬢様には随分とアドバイスをするのは何故なの?」

「なりふり構っていられなくなった……それだけさ」


 その言葉を聞いてなおルクスリアはあまり納得はしてなかったが、これ以上は何も聞けないだろうと考え、それ以上は聞くことをしなかった。


「……まあ、お嬢様たちを強くしてくれた事に関しては素直に感謝しておきます」

「そうかい、それは良かった」


 ロキはほっとしたように笑う。


「今日の僕は君たちがどう成長したのかを見に来ただけ、また何かを言いに来たわけじゃないよ」

「それじゃあ、アルドラに戻ってもいいってこと?」

「うん、大丈夫だよ。僕のやらなければいけない事も出来たから、安心して戻るといいよ……もし、何かあっても絶対に僕たちが守るからさ」


 ロキのその言葉は嘘偽りのない本当の言葉だった。エリーは「ありがとうございます」と微笑んで、頭を下げる。そして、サバラへ向けて再び歩き出した。


 ロキは、その後姿を見て懐かしむような表情を浮かべてからその姿を消した。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 サバラにたどり着くころにはすっかり陽は落ちて、アルドラ行きの馬車は翌日の朝一番らしく今日は宿を取って休むことにした。


「結局、ロキさんが言ってた私に降りかかる危険って何なんだろうね?」

「さあ、ね。でも町での話を聞く感じアルドラで何か起きたっていうわけでもないし……」


 エリーも同じ疑問を感じ、サバラに戻った後に宿屋でアルドラの情報を収集していた。だが、話を聞いてもアルドラで何か大きな事件があったなどの話は聞けなかった。


「という事は、私達……もしくはしぃに対してそのまま戻っていれば何かが起こってた、って事なんでしょうね」


 ロキがそれを話さなかった以上、シエル達は答えにたどり着けないのだろう。考えていても分からずじまいなので、シエル達は考えることをやめて眠ることにした。


 翌朝、宿で朝食を取った後、シエル達は馬車に乗り込んでアルドラへと出発した。道中で幾度か魔物と遭遇したが、シエル達の敵ではなかったし、同じ馬車に乗り合わせていた冒険者たちと協力して危なげなく対処していた。

 六日かけてアルドラへと到着すると、すぐに学園へと向かう。陽は暮れかけていて、学園内に入る頃には寮に戻る生徒達の姿が多く見られた。

 シエル達はエントランスホールでセッカが居るかどうかを確認する。


「学園長はまだいらっしゃいますか?」

「今、確認をするのでお待ちください」


 受付の職員が確認をするために魔道具を使って、他の職員と連絡を取る。連絡がついたのか、シエル達の方へ向きなおすと、


「学園長ならまだ学長室にいらっしゃいますが、要件はなんですか?」

「えっと、指名依頼の達成報告をしたくて……」

「名前を教えてもらえますか?」


 職員に言われてシエル達は名前を答えると「貴女達が……」と驚くような表情をしてから、セッカに連絡を取ってシエル達が向かう事を伝えたようだ。セッカは、シエル達は学長室に向かうようにと受付に伝えてきたようで、その言葉に従ってシエル達は学長室の前にやってきた。

 コンコン、とノックをすると「どうぞ」とセッカの声が扉の向こうから聞こえてきた。シエルは「失礼します」と言ってから扉を開けると、椅子に座っていたセッカがこちらを見てにこりと笑う。


「お帰り。戻ってきたっていう事は成果はあったのかな?」

「はい、彼女が新たな霊姫……土の霊姫セラです」


 シエルがそう言うと、セラがセッカの前に姿を現す。


「貴女が……シエルちゃんをよろしくね」

「言われなくても。シエルは私達を導く存在だもの」


 セラは表情を変えずにそう言った。セッカは、それを聞いて満足したのかクスリと笑って、


「依頼は完了ね。報酬金は学校側で管理させてもらうわね」

「わかりました」

「明日からは普通に授業だから、忘れずに受けるように」


 セッカがそう言って微笑む。シエル達は一礼してから学長室を出た。

 寮に戻るために学校から外へ出たその時、


「っ!?」


 全員が気づくほどの強烈な殺意がシエル達に向けられた。それにシルフィード達も気づいたのか実体化してシエルを守るように位置取る。

 シエル達は警戒を怠らずに殺意を向けられた方角を睨み付けるが、シエル達に気づかれたことに気づいたのかその後は何も起きる事はなかった。


「今のは……?」

「分からないけど……私達がよっぽど気に入らないようね。注意して戻りましょう」


 警戒を怠らないままシエル達の部屋に戻ると、シエルは緊張の糸が切れたように大きく息を吐いてベッドに座った。


「さっきの……一体何だったんだろうね?」


 シエルは不思議そうに訊ねる。その身体はわずかに震えていて、恐怖していることが見てとれた。


「これからは気を付けた方が良いわね……」

「大丈夫かな……」


 不安げなシエルの表情を感じ取ったのかエリーはシエルの手を握って、


「大丈夫、私達で何とかするから。シエルは心配しないで」


「でしょ?」とエリーはルリ達の方を見て聞く。ルリ達はもちろん、と力強い返事をシエルに返すと安心したのか、シエルの顔が少し緩んだ。


「ありがとう、みんな」


 それからは、明日の用意をしてルリ達と話しながらベッドの中で眠りについた。

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