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負の魔法使い-The route of the fate to revolve-  作者: 山吹十波
route 03:炎剣の姫君
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03-24 求めるは炎の華


珍しく、学園まで一人で歩いていく。

いつもはディアナがとなりにいるので少し寂しく感じる。


「レイトさん、おはようございます」

「え?あ、ローズ。おはよう」

「ディアナさんは、どうなさったんですか?」

「今日はちょっと体調が優れないみたいで」

「そうなんですか、少し心配です。でも、精霊と契約しているディアナさんが病気になるなんてことは早々考えられないんですが、何があったんですか?」

「うん、風邪じゃないよ。少し体内の魔力バランスが狂ったようで。十中八九、僕のせいなんだけど」

「え、それはどういうことですか?」

「外部からの負の魔力を強く浴びすぎると魔力が高い人間ほど体調が悪くなるみたいだね。昨日、魔力循環の訓練した後に抱き着かれたからその時だと思う」

「……なんで抱き着かれてるんですか?」


ローズと話しながら歩いているとすぐに学園の校門に辿り着く。

すると、ローズは少し安心したように息を吐いた。


「そういえば、さっきまで随分気を張ってたみたいだけど、どうかしたの?」

「ええ、精霊と契約したこともありまして、私の価値が急上昇したと言いますか……」

「あー……婿入り希望者か」

「はい。ほとんど父が斬り捨てているんですが」

「斬り捨ててるんだ……」

「それでも諦めない人もいてですね……」


ローズがため息をつく。


『いざとなったら私が全部焼き払うわ』

「貴族街は延焼したらヤバイからその辺だけ気を付けてね」

『わかった』

「ガーネット!レイトももっと強く止めてください」

「ええっと、まあ、本当にやるとなると止めるけどね……」

「あ、はい。そうだ、お昼、一緒にどうですか?」

「うん。構わないよ。あ、あと学園の中でもあんまり安心はしない方がいいと思うよ」

「え?あ、はい。そうですね」


教室の扉を開くとデュークたちはすでに登校していて、いつものグループで集まって談笑している。


「おお、レイト。珍しく遅かったな。あれ?ディアナは?」

「今日は体調が優れなくて」

「いよいよレイトとの子でもできたのか?」


余計なことを言ったデューク床に沈む。


「デューク、発言には気を使った方がいいよ?僕が怒らないと思ったら大間違いだから」

「いててて、わかった。謝るから足を退けてください」

「それで、ディアナさんは今日はお休みなんですね。お兄ちゃん」

「はい。まあ、今日一日ゆっくり休めば元に戻るでしょう」

「そうですか。じゃあ今日は私が唯一の妹というわけですか?」

「……まあ、そうなるんだけど、何を期待されているの?」


キラキラした瞳でこちらを見つめるレイカに戸惑いながら、レイトは席に着く。


「それで、今日はローズさんと登校してきたわけですが……」

「うん。まあ、そこであっただけだけどね。まあ、少し事情もあるんだけど」

「どういった事情ですか?」

「それがですね……」


ローズが自ら事情を説明しようと口を開いた時、教室の戸が開き数人の男子生徒がやってきた。


「失礼します。こちらにローズ・アドルート様はいらっしゃいますか?」

「え?うん。居るよ」


この瞬間にデュークとエリザ、それにレイカは事情を把握したが、対応したのは運悪く、というべきか、事情をイマイチ理解できていないマキナ。


「そうでしたか、すみません。少し失礼します、先輩方」

「ローズ先輩、どうかこの僕と週末に城で開かれる夜会に参加していただけないでしょうか」

「いえ、この僕と!」「私こそが、相応しいです!」


後輩たちがぎゃあぎゃあとローズの前で騒ぎ始める。

一番最初にこの現状に我慢できなくなったのは一番こういった面倒事が苦手な、デューク。


「ああああ、もうお前ら五月蝿い。散れ散れ」

「お言葉ですが、各上のクラモール家と言えども、無関係な人間は入ってこないでいただきたい」

「貴様らいい度胸だな、全員消し炭にしてやる」

「まあ、デューク落ち着いて」


レイトが拳を握るデュークを宥める。


「でもさ、」

「ローズはもう返事決まってるみたいだし」

「え?そうなのか」

「当たり前です」


ローズが一歩前に出ると、毅然と言い放つ。


「私はあなた達の手を取ることはありませんし、今後関わることもありません。すぐに授業が始まりますから、自分の教室に戻られてはどうですか?」

「そんな」

「しかし、私と結ばれれば必ずアドルート家の利益に」

「いえの利益なんて興味はありません。私は自分が想う相手の手しか取りません」

「まあ、そういうわけだから、帰ったらどうだい?」


レイトが笑顔で言うと、不満げな顔で後輩たちが教室を出ていく。


「ええ、まあ、このように結婚を申し込むという輩がたくさんおりまして。家の方に来れば父が斬り捨てますから、こちらで接触しようとしてきたようですが」

「相手は侯爵家令嬢。当然婿入りにはそれなりの家格が求められるだろう。そこで上手い具合にローズをおとしてしまおうという浅慮な奴らが出て来るんだね」

「あー……オレも昔、姉ちゃんとかディアナに寄ってくる虫を焼き合払った記憶はあるな。でも、あの親父さんなら、愛とか情熱とかそんなんで認めてくれそうな気もする」

「政略目的の奴らにそんなものがあるとは思えませんがね」

「だよな」

「という事は、ローズさんの結婚の条件としては、ローズさんが好意を持っていて、お父様を認めさせるほどの度量を持った、それなりの家格の男性ということになりますよね」


レイカの発言に一度全員が考え込み、顔を上げた。


「ローズさん、ここに優良物件が2つ」

「まてまて、エリザ。差し出すな、背中を押すな」

「まあ、大事なのはローズさんの気持ちですよ」

「デュークはない」

「……うん、なんかショックだ」

「――でも、レイトなら完璧です」

「急展開」

「盛り上がってきたね!」

「お兄ちゃんは渡さないよ!」

「あー、レイカさんは一回引っ込んでて、ややこしくなるから」

「そんな、お兄ちゃん」

「夜会までレイトにくっ付いて生活してたらさすがに虫共もやってこなくなるんじゃねーか?」

「それで行きましょう」

「ええ!?僕の意見は!?」

「ディアナにばれた時俺が殺されるリスクがあるが」

「尊い犠牲ですね」

「許容するなよ!」




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