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負の魔法使い-The route of the fate to revolve-  作者: 山吹十波
route 02:氷晶の楽園(01-17→02-18)
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02-23 美しきは氷の華


レイカ・ノースウィンドは少し拗ねていた。

というのも、原因は最近の姉にある。


少し前に家が崩壊したお陰で、兄も姉も子供の頃のような柔らかい表情が戻った。しかし、姉・トウカはその度が過ぎた。

自分の兄であるレイトが現れたことによって、トウキが動揺するほどに甘くなっていた。

そして、正式に家を継いだあともそれは続いた。


「レイト、お昼ご飯にしましょう」

「兄様!お昼にしましょう!」


昼休みになると同時にトウカとディアナが教室に飛び込んでくる。

最初は驚いていたクラスメイトもすでに馴れたものだ。


「ディ、ディアナ!なんでそんなに早く走れるの!?」

「あら、遅かったですねローズさん」

「お前らなにやってんだよ」

「デューク、兄様は?」

「あれ?」


デュークが教室を見渡すにつられて、レイカもその影を探すがどこにも見当たらない。


「あの、レイトさんならさっき窓から飛び降りて行きましたけど……」


エリザが窓の方を指差しながら言う。


「まじかよ」

「さすがです、兄様」

「ディアナ、感心するとこじゃないと思いますよ?」

「お姉ちゃん、どうしてそこまでレイトさんに拘るの?」


思わず質問が口からこぼれる。


「それはね、弟だからよ」

「理由になってませんが」


レイカが呆然と呟く。

しかし、トウカの隣ではディアナが頷いている。


「わかります、その気持ち」

「解っちゃうんだ……」

「どっちも度しがたいブラコンってことだ……いででで!?」

「ん?何か言いましたか?デューク」

「謝るから!謝るから腕の関節外そうとするの止めろ!」

「それで、レイトはどこに?」

「そういえば、朝ライナさんがお昼に誘いに来てたような……」

「「「抜け駆けはさせません!」」」


ディアナ、トウカに続いてローズも廊下を駆けていく。


「というかローズもそっちかよ」

「デュークさんは追わないんですか?」

「いや、たぶんそこにいるだろ、レイト」


レイカの問い掛けに、デュークが誰もいない席を指差しながら答える。


「……さすが、我が友」

「魔力の気配ごと絶つなんてさすがだな」


空間がぼやけてレイトの姿が現れる。


「では、私が見たのは?」

「幻影だろ」

「いえ違いますよ。ちゃんと質量のあるゴーレムです」

「そこまで本気でするか!?」

「ディアナもトウカ姉も最近激しいから」

「夜の話か?」


デュークがエリザに殴られて床に沈む。


「流石にいっていいことと悪いことがありますよ」

「反省したか?デューク」

「ごめんなさい」


そんなやり取りを見ていたレイカがふふ、と笑う。


「あ、すいません。思わず」

「そんなの気にしなくていいのに」

「そそ、レイカ嬢なんか難しい顔でこっち見てたし、笑ってる方が可愛い可愛い」

「へ!?あの、冗談ですよね?」

「デュークさん、セクハラですか?」

「ちょ、エリザ。落ち着け、というかよく考えても見ろよ。兄貴があれで、姉貴もびじんで、もう一人兄貴がこれだぞ?美人にならない理由もないだろうに」

「言いたいことはわかりますけど……」

「というか、これって……」

「あ、あの、えっと……」


兄や姉と違い、レイカには幼少期のレイトとの記憶がない。

それは、両親がレイトとの接触を意図的に避けさせたせいであるが、兄や姉と同じように思い出があれば今こうしているときも、自然に楽しく普通に会話ができたのかもいれない。


「どうかしましたか?」

「え!?いや、あのえっと......なんでもないです」

「あんまり緊張しなくていいと思うぜ、気軽に”お兄ちゃん”って呼んでやってくれ」

「おい、デューク」

「え、あの......嫌じゃないですか?」

「というか、気恥ずかしいよね。クラスメイトにそんな風に呼ばれるのを」

「まあまあ、気にすんなよ。こいつも妹大好きのドシスコンだから、きっと喜んでるって」

「そ、そうなんですか?」

「あははは、殴るよデューク。エリザ、押さえて」

「ちょ、まって、謝るから。というか、尋常じゃない魔力が拳に乗ってる気がするんだが......」

「気のせい気のせい」

「微笑みながらこっち来るな!こえーよ!というか、エリザも離せって!」


暴れるデュークを威圧していると、教室の扉が勢いよく開く。

一瞬でレイトがドアと距離を取り、窓の際まで移動した。


「先生のお説教やっと終わったよ!」

「マキナ、もっと静かに入ってきなさい」

「あ、エリザ。それにみんなも待っててくれたの?」

「そういえば昼食まだでしたね」

「何もそこまで急いで逃げなくてもいいだろ、レイト」

「ああ、そういえばこれもまだだったね」

「ぴっ!?」


レイトがデュークの肩に手を置いた瞬間、デュークの身体中に電流が走りデュークが妙な悲鳴をあげる。


「今少し光りましたね」

「ご飯どうしよっか、今からいっても学食は混んでるだろうし」

「何か適当に買ってこようか?レイトさんたちもそれでいいですか?」

「「お願いします」」

「お、揃ったな」

「あ、デューク起きたんだ」

「お前、オレじゃなかったら死んでるぞ!?一瞬心臓止まったからな!?」

「無事でよかったよ」

「それじゃあ、適当に買ってくるね。マキナ行く?」

「行く!」

「あまり時間もないですし、軽くでいいですよ」

「私も、その、レイトさんと「お兄ちゃん」レイ「お兄ちゃん?」......お兄ちゃんと一緒で」

「エリザもデュークもあんまりからかわないようにね」

「嬉しいくせ......ぴっ!?」

「えっと、マキナいこっか」

「う、うん」


教室には床に沈んだデュークとレイトとレイカが残される。



「えっと、あの、お兄ちゃん」

「無理しなくていいですよ、ホントに」

「いえ、やっぱり、少しはちゃんとお話しできるようになりたいですし、あの」

「そっか、ありがとう」

「やったな、レイト。これでまた妹攻略成功だな」

「もう一回沈みたい?」

「……ごめんなさいでした」




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