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負の魔法使い-The route of the fate to revolve-  作者: 山吹十波
route 02:氷晶の楽園(01-17→02-18)
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02-21 北風を継ぐ者

八聖の代表者が呼ばれる会議のテーブルにレイトはノースウィンドの臨時代表として席についていた。


トウキ・ノースウィンドは暴走状態にあったとはいえ、精霊を斬ったため、八聖としての家の継承権を喪失した。

あのまま放置していると、王都市民に被害がでたので仕方ないことではあるので、国としてこれ以上の処罰は下さない事にした。


ルナの口添えもあり、精霊たちとの関係はそこまで酷くはならなかったが、トウキに掛かった呪いを解くことはできなかった。


ノースウィンドの席にはレイトが、その後ろにはトウキとトウカが控えている。

順当に考えれば、家を継ぐのはトウカになるはずだ。

しかし、トウカ自身にもあの事件の結果、大きな変化が起こってしまっている。

一時的とはいえ、地脈の膨大なエネルギーを取り入れるための中継として使われていたせいか、体内に多くの負の魔力が残り、正の魔力は完全に失われてしまっていた。さらに、父親のせいで契約精霊を失い、現在彼女とレイカはいつかのレイトと同じ状態にある。


そして、王の下した判断は、


「まず、マナテムだが、分家8位のボード家に継いで貰うことになる。これは7位以上がすべて処罰の対象となったためである。これについては先月に決定したことなので詳細は省かせてもらう。さて、」


一度、口に水を含んだ宰相が、読み上げる。


「ノースウィンドの当主は、後継として、トウカ・ノースウィンドを指名する。ただし、レイト・ルナフォード次期ルナフォード家当主が補助兼監査として3年間つくことになる。また、その間に失った能力を取り戻すための最大限の努力を求める、以上。レイトもそれで構わないか?」

「問題ありません。監査といっても四六時中張り付いている訳でもないのでトウカさんもそれほど気になさらずに」

「は、はい……」


緊張のためか声がトウカの声は上ずっている。


「それではルナフォードとノースウィンドだけ残ってくれ。あとのものは下がってよい」


王の言葉にクラモールを除く呼ばれなかった家の人間が退席する。


「さて、レイト。まずは目を覚ましてくれてよかった。御主ほどの術者を失うのは痛いからな」

「ありがとうございます」

「それで、本題だが、グレイシアが聖霊に昇格したというのは本当か?」

「ええ」

「ふふ、本当ですよ」


レイトの肩に手を置く氷の聖霊。

髪の色はルナと同じ白金色となり、以前よりも圧倒的な存在感を放っていた。


「……そもそも、聖霊というのはそう簡単に成れるものなのだろうか?」

「たぶん、無理ね。レイトだからギリギリできたけど、そもそも、私がついてなかったら1000年は目を覚まさなかっただろうし」


唐突に表れ意見を述べるルナ。

彼女はレイトの膝の上にちょこんと座り、グレイシアに自慢気な視線を送っている。


「とりあえず、ノースウィンドがどんな方法で地脈を無理矢理繋げたのかを調べるのが先でしょう。まあ、魔方陣もなにもかも吹き飛んでしまいましたけど」

「すいません。しかし、壊さずに止める余裕がなかったもので」


溜め息をつきながらそういった、ソアにレイトが即謝罪をする。


「そういえば、ソアよ。あの剣はどうした?」

「あの呪われてる剣ですか?持ってきてはいますが……」


ソアがテーブルのしたから箱をとりだし、その中を開いて見せる。


「トウキさんが精霊を斬った剣ですか」

「トウキが望むのならこれは返そう。どうせ、これは君にしか使えないだろう」

「それはどういう事ですか?」


ソアの発言に疑問を述べるトウキ。


「負の魔力を浴びすぎたことで、魔力を断つことが出来るようになっている。それに、レイトがグレイシアの力を注いだせいで、耐性の無いものが触れると凍てつくらしい」

「……なるほど」

「それにナダレ・ノースウィンドの遺品といえるようなもので残っているのはこれだけだ。不要だというならこちらで処分するが」

「いえ、受け取らせていただきます」


ソアから箱を受け取り、トウキは複雑な表情でそれを見つめる。


「ひとまず、これで話は終わりだ。それと、レイト。シャロンとの婚約について、考えておいてくれ」

「え゛!?あれ、本気だったんですか!?」

「なんだ?嫌なのか?」


王の威圧の籠った視線に一瞬怯むが、この程度で屈するレイトではない。


「しかし、まだ僕は結婚するきはないです」

「ならば尚更話を受けてくれてもいいだろう?ソアからもなにか言ってやれ」

「……お言葉ですが、そういう話ならば私は自分の娘を推していきたいと思います」

「なんだと、グリム、お前は!?」

「私としてはディアナと結婚させるのもありかと」

「ぐぬぬぬ、お前らそれでも私の臣下か!?」


大人たちの大人げない喧嘩が始まりそうになったため、レイトは部屋を脱出する。

人気のない廊下を歩きながら、今後どう回避していくかを考える。


「まだしばらく結婚なんかする気無いんだけどな……」

「もしもの時は私と結婚する?」

「それもありかもしれない」


悪戯っぽく笑うルナに真剣な表情で返すレイト。

そして、予想外の返しに動揺するルナ。


「?……ルナ、どうかした?」

「い、いや。なんでもないわよ?」

「というかルナ様、抜け駆けですか?」

「えー私だってレイトと結婚できるならしたいー」

「………………………!!」


「……ボルト、助けてくれ」

「すまないが聖霊二人を相手にするのはさすがに無理だ。フレアともノアとも相性が悪い」

「そこを何とか」

「人間の姫とは違ってあれからは逃げられないぞ。大変だな、主よ」

「ほんとに。どうなるかなぁ、これから」


先の事に不安を覚えながらレイトは帰路についた。

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