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【終ノ花】  焔の終焉

 教室を飛び出した慶一を探し、雨音は学校の廊下を走っていた。


 慶一の話から察するに、彼はどうやら亮が行方不明になっているという話を聞いたようだ。相手は警察だったようなので、恐らくは、あの名刺にあった牧原という男なのだろう。


 亮を探す。そう言って出て行った慶一の気持ちはわからないでもない。自分の周りで、これ以上誰かが死ぬのを見たくない。堀井有紗の怨霊がとり憑いているのが誰なのか、それを確かめたい。


 単なる好奇心だけでなく、使命感から来るものもあるのだろう。だが、そんな一時の感情に動かされて、考えなしに動き回れば相手の思う壷だ。


「まったく……。どこにいったのよ、慶一のやつ!!」


 一時限目の授業は既に始まっていたが、そんなことは今の雨音には関係なかった。とにかく慶一を探して連れ戻さねば。その一心で、学校中を走り回った。


 三階、二階、そして一階。およそ考え得る校舎内の全ての場所を探したが、慶一の姿はどこにも見当たらない。外は雨だが、まさか外にまで探しに行ったのではあるまいか。だとすれば、いったいどこへ。


 焦ってはいけない。しかし、頭ではわかっていても、焦らずにはいられない。慶一が、堀井有紗に殺される。そんな嫌な想像ばかりが雨音の頭の中を駆け巡る。


 このまま学校の中だけを走り回っていても、埒が明かない。こうなったら、自分も外に出て、それこそ学校の裏手まで探しまわるしかない。


 そう、雨音が考えたとき、彼女の持っていた携帯電話が唐突に鳴りだした。


「もう! 誰よ、この忙しいときに……!!」


 着信の音からして、これは電話ではなくメールだ。ゆっくり読んでいる時間などないとは思っていたが、とりあえずは中身を確認するために、雨音は携帯電話を取り出して開く。


「ちょっ……! なんなの、これ!?」


 携帯を開いた途端、雨音は声を上げずにはいられなかった。



――――先輩のことは、ボクがいただきましたぁ!

――――返して欲しかったら、須賀森すがもり町の劇場跡地まで来て下さいね。



 どう考えても、ふざけているとしか思えないメールの内容。だが、そこに添付されている写真を見た雨音は、これが冗談だとはどうしても思えなかった。


 そこにあったのは、廃屋の一室で古びた椅子に縛りつけられた慶一の姿だった。いったい、彼に何が起きた。この写真はいったい何で、なぜわざわざ、雨音のことを呼び出すような真似をするのだろうか。


 悪戯にしては、あまりに性質が悪過ぎる。そう思ってメールの送り主を確認すると、雨音の顔が再び驚愕の色に染まった。


「嘘……。小鳥遊……さん?」


 メールの送り主は瑞希だった。では、慶一を廃屋に監禁し、雨音のことを呼び出したのは、あの瑞希なのか。


 決めつけるには早過ぎる。しかし、このまま放っておけば、慶一の命が危ない。


(まさか、小鳥遊さんが……)


 考えている暇など、既になかった。雨音は慶一からもらった名刺を取り出すと、そこに書かれた携帯電話の番号へと連絡を取る。


 今、頼りにできるのは、慶一から教えてもらった牧原という刑事だけだ。いきなり電話をして話を聞いてもらえるかどうか不安だったが、雨音は藁にもすがるような気持ちで牧原の携帯に繋がるのを待った。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 薄暗い、明かりの殆ど射さない部屋の中で、慶一は静かに目を覚ました。


 頭が、いや、全身が痛い。未だ身体には痺れるような感覚が残り、手足を動かそうにも、何かに押さえつけられているのか自由が効かない。


 自分は今、どこにいて何をされているのか。ぼやける視界のままに辺りの様子を窺うと、どうやらそこは、古い劇場のようだった。


 埃にまみれた観客席に、今にも朽ち果てて底が抜けそうな舞台。自分がいるのは、そんな舞台の上に置かれた椅子だった。手足は椅子に縄で固定され、少し動いた程度ではほどけそうにない。


(ここは……。それに、俺は確か……)


 目の前の光景が鮮明になるにつれ、慶一の脳裏にも徐々に記憶が蘇ってきた。


 朝方、学校で見つけた瑞希を追って、自分は校舎裏のゴミ捨て場に来た。そして、そこで瑞希から驚愕の真実を伝えられ、その後はいきなり身体の自由を奪われた。


 瑞希は慶一のことが好きだった。だからこそ、慶一の傘を捨ててまで一緒に帰ろうと考えた。彼女のしたことは決して誉められることではないが、それだけ慶一のことが好きだった。そう考えれば、今までの行動にも説明がつかないわけではない。


 だが、果たして本当に、それだけなのだろうか。ただ好きだというだけで、いきなりその相手を昏倒させて見知らぬ場所に運ぶ。あの瑞希が、本当にそんなことをするだろうか。


「あら、お目覚めね」 


 慶一が答えを出す前に、聞き覚えのある、しかし聞き慣れない口調の声がした。


「お前は……」


 薄暗がりの部屋の奥から、ゆっくりと現れた一人の少女。短く切りそろえた髪と、小柄な背丈が特徴的な、慶一の良く知る映研の仲間。


「堀井……有紗だな」


 目の前に現れた瑞希に向かい、慶一は油断なく相手を睨みつけて言った。が、それを聞いてもなお、瑞希は口元に不敵な笑みを浮かべながら、慶一に挑発するような視線を送ってきた。


「ええ、そうよ。あなたの考えている通り、私はこの娘の身体を借りている堀井有紗よ」


「ふざけるな! 今すぐ、瑞希の身体から出て行きやがれ!!」


 氷のように冷たい笑みを浮かべる瑞希に向かって、慶一は今にも飛び掛からんばかりの勢いで叫んだ。もっとも、その身体は椅子にしっかりと縛りつけられているため、残念ながら本当に手を出すことは敵わなかった。


「残念だけど、それは無理な相談ね。あなたもこの娘も、それに……雨音とか言ったかしら? あの女も、皆死んで罰を受けるべきなんだから」


「うるさい! どうやって、瑞希にとり憑いたかは知らないけどな……貴様が瑞希の中に入ったりしなければ、瑞希はあんなことしなかったはずだ! 俺の知る瑞希は、ちょっと男勝りで、不器用で……それでも女の子らしくしたいと思って、精一杯頑張ってる……そんなやつだ! お前みたいに、歪んだ欲望に突き動かされて、人を殺すようなやつじゃない!!」


「ふふ……あなたの知る瑞希? あはっ……あははっ……はははははっ!!」


 突然、瑞希の中の堀井有紗が、その身体を借りて狂ったような高笑いを始めた。声変わり前の少年のような声で、廃屋となった劇場全体に響くような狂笑をする。その、あまりに不釣り合いな光景に、慶一は自分の身体の中をたくさんの虫が走るような不快感を覚えた。


「なに、笑ってやがる! なにが可笑しいってんだよ!!」


「ふふふ……。あなたこそ、この娘の何を知ってるっていうの? この娘が、本当は心の中で何を考えていたか……そんなこと、あなたにわかるはずないでしょう?」


 瑞希の口元が、意地悪そうに歪んで曲がった。同時にその瞳の奥が、より深く暗い闇に染まって開かれる。


 邪悪で、それでいて軽蔑するような黒い視線。およそ常人のものとは思えない、深く病んだ者のそれだった。


「この娘はねぇ……自分のことが大嫌いだったのよ。いつもいつも、周りからは年下の弟のように扱われて、なかなか女の子として見てもらえない自分。そして、そんな部分に負い目を感じて、あなたに正直な気持ちを伝えられない自分自身のことがね」


「なっ……。それじゃあ、あのゴミ捨て場での言葉は……」


「ああ、あれね。あのときは、まだ私は表に出ていなかったわ。だから、あれはこの娘の本音。傘を捨てたのも含めて、全部この娘が自分の意思でやったことよ」


「嘘だ! 確かに瑞希は自分のことで悩んでいたかもしれないけどな。それでも、こんなことするようなやつじゃない! あいつが殺人なんて……そんなこと、するもんか!!」


「あっははははっ……。あなた、まだわからないようね。確かに、殺しをしていたときは、私が表に出ていたわ。この娘は自分が人を殺したことさえも、まったく気づいていないかもね。ただ……この娘が寝ている間に、私がちょっと耳元で囁いて、その欲望を膨らませてはあげたけど」


「貴様ぁ! もう、それ以上、瑞希の口を使うんじゃねえ! 瑞希の声で喋るんじゃねえ!!」


 胸の奥から込み上げてくる怒りを隠すことなく、慶一は瑞希の中にいる堀井有紗にそれをぶつけた。もっとも、そんなことで怯む相手ではなく、瑞希の中の堀井有紗は慶一の言葉を鼻で笑っていた。


(くそっ……。なんで……どうして、今まで気づかなかったんだ!!)


 驚愕だった。そして、知りたくはなかった。あの瑞希が、そこまで己を追い込んでいたなんて。普段、仲間の前で見せていた笑顔の裏に、そんな苦しみを抱えていたなんて。そして、その苦しみにまったく気づかなかった、自分自身が憎かった。


「この娘の中は、居心地がよかったわ。自分の好きな人を、自分だけのものにしたい。好きな人には自分だけを見て欲しい……。今まで女の子として見られていなかったことが多かったから、その反動で、独占欲や依存心が強くなっていたんでしょうね。まあ、私も似たような者だから、そういったところは嫌いじゃないけど……」


「似たような者?」


「そうよ。私のことをわかってくれたのは、あの脚本を書いた貴之だけだった……。でも、貴之が病気で死んでから、周りは私の才能を妬んだり、私の存在を疎ましく思ったりするようような人ばかり……。そんな中で、貴之の残してくれた物語だけが、私の心の支えだった……」


 慶一に背を向け、瑞希がどこか遠くを見るような目で語り始めた。


 堀井有紗があの脚本にこだわる理由。それは、自分の恋人の想いが込められた、彼の遺作であるからに他ならない。そんな遺作を誰かの好き勝手に改変され、更には自分の与えられたヒロインの座まで奪われること。それが堀井有紗にとっては、なにより耐え難いことだったに違いない。


「だから、その支えを……貴之が生きた証を消そうとする者は、全部私が消してあげる。あの物語が存在する限り、貴之は私の中で生き続けることができるの。何年も、何年も……それこそ、永遠にね……・」


 懐から鋏を取り出して、瑞希がその刃の部分に舌を這わせて舐める。完全に変わり果てた瑞希の後に、慶一はあの黒衣の女の影を見た。


「この半月くらい、あなたたちと一緒に過ごした時間……なかなか面白かったわよ。特に、石鎚に会ってから、自分で自分のことを信じられなくなって壊れて行く、あなたの姿を見ているのがね」


「なんだって! どうして、それを貴様が知っているんだ!?」


「あら、あなたは気づいていないのね? 実は最初、私はあなたに憑こうと思っていたの。夜、あの民宿で一人になっていたころがあったから、これはチャンスかと思ってね」


「民宿……?」


「本当に覚えていないの? あなた、あの民宿で、一瞬だけど私の姿を見たじゃない。あの後、あなたの中に入ろうとしたんだけど……残念ながら、全部入る前に気づかれちゃったのよね」


 自分が堀井有紗と既に会っている。しかも、あの映研の合宿で訪れた、小さな田舎町の民宿で。


 瑞希の口から放たれた言葉に、慶一は記憶の糸を辿らせながら考えた。あの晩、自分は先輩たちと大騒ぎをし、その流れで風呂にも入らずに寝てしまった。しかし、夜中に一人で目が覚めて、自分だけで風呂に入ることにしたのだ。


 階段を下り、裸電球だけが灯る薄暗い廊下を抜けようとしたときに、慶一は自分の後ろから誰かが見つめているような視線を感じて振り返った。そして、その先に揺れる女の髪を見たような気がしたが、そのときは幻覚だと思って忘れていた。


 あのとき、自分は既に堀井有紗に狙われていたのか。だとすれば、堀井有紗がこちらの身体に入り込めなかった理由はなんだ。


 石鎚の話では、霊が人間にとり憑く際には、相性のようなものが存在するらしい。その相性が、たまたま悪かっただけなのだろうか。


「あなたに中途半端にしか憑くことができなくて、私は憑く相手を選び直さなければならなくなったわ。でも、おかげで私とあなたは、互いに記憶を少しだけ共有できるようになったのよ」


「そ、それじゃあ、俺の見ていたあの夢は……」


「そう。全部、私がこの娘の身体を使ってやったことの記憶。最初はこちらの動きが読まれるんじゃないかと心配したけど……まさか、こうまで面白い結果になるとは思わなかったわ。予想外の事態というものも、なかなか役に立つものね」


「くっ……」


 なにもかも、堀井有紗の計画通りだったということか。≪魔窟≫でノートを見つけ出し、牧原に相談し、果ては雨音の祖母に力を借りたことも、全ては無駄だったというのか。


 所詮は、相手の掌の上で踊っていたに過ぎない。その事実は、今の慶一を絶望の淵に叩き込むのに十分だった。


(俺は死ぬのか? 俺も、雨音も、瑞希も……皆、最後はこいつに殺されて終わるのか?)


 負けたくない。しかし、抗う方法などない。手足の自由を封じられ、完全に主導権は向こう側にある。その上、例えこの戒めが解かれたとしても、自分には瑞希の中から堀井有紗を追い出す術がない。


 もう、ここでお終いか。自分たちの映画作製は、映研の人間が全滅するという最悪の形で幕を降ろすしかないのか。


 絶望の二文字が、慶一の頭の中に浮かび上がる。諦めにも似た感情が、心の奥から湧いて来る。負けてはいけない、諦めてはいけないと思っても、現実がそれを許さない。



――――ボタッ……。



 目線を下に落とした慶一の足下に、何かが天井から降ってきた。目を凝らして見ると、それは一匹の蝸牛。殻の大きさだけでも五百円玉ほどの大きさがある、かなり巨大なものだ。


 いったい、なぜこんな場所に蝸牛が。そう思って顔を上げた慶一は、その先に更なる絶望を目の当たりにすることになった。


「う、うわぁぁぁぁっ!!」


 そこに吊るされている物の姿を見て、慶一は思わず声に出して悲鳴を上げた。


 劇場の天井から、ボロ雑巾のようにして吊り下げられた一人の人間。その様子からして、絶命していることは明らかだ。慶一と同じ学校の制服を着たそれが、変わり果てた亮の姿だと気づくのに、そこまで時間はかからなかった。


「あら、ようやく気付いたみたいね。自分の上にお友達が吊るされているのに、全然気がつかないなんて……随分と酷い話よね」


「うっ……ぐっ……」


 込み上げる吐き気を堪え、慶一は顔を苦悶の表情に歪めて抗った。両手で口を覆うことさえもできず、ただひたすら、胃の中から食べ物が逆流しないように耐えるしかない。


 天井から吊るされた亮の死体には、無数の蝸牛が群がっていた。それらは亮の目を、鼻を、そして口を蹂躙し、その肌の上を這い回っている。時折、角を立てて周りの様子を窺うと、蝸牛とは思えないほどの速度で、再び亮の身体の中へと入って行く。


「あいつはね、生意気にも私のことを疑って、私の後をつけてきたの。頭の切れるやつだったから、どう始末するか迷っていたけど……まさか、自分から飛び込んで来てくれるとは好都合だったわ」


「うぅっ……。き、貴様……先輩や、秀だけじゃなく……とうとう亮まで蝸牛の餌にしやがったのか……!!」


「心配しなくてもいいわよ。あなたは別に、蝸牛に食べさせて殺したりはしないわ。あの、雨音とかいう女を殺した後、私はここを灰にする。それまでは、生きていてもらわないとね……」


 慶一の足下に落ちた蝸牛を拾い上げ、それを愛でるようにしながら瑞希の中の堀井有紗が言った。その視線が自分の後ろに注がれているのを感じ、慶一は自分の首を、可能な限り動かして後ろを見る。


 そこに並んでいたのは、赤い色をしたポリタンク。それも、一つや二つではない。十数リットルもの容積がありそうなタンクが、綺麗に並べて置かれている。そして、その中から漂う機械的な油の匂いに、慶一はポリタンクの中身が灯油だと気づいた。


 堀井有紗は、雨音を殺した後にこの劇場を灰にすると言った。と、いうことは、全てが終わったとき、彼女はこのタンクの中身に火を放って逃げるつもりなのだろうか。


 業火に包まれ、舞台は最後のフィナーレを迎える。それこそが、堀井有紗の計画した一連の殺人ストーリー。多少の手違いもあったようだが、大筋の話は、確実に完結に向かって進んでいる。


(これで……本当に終わっちまうのかもしれないな……)


 呪われし脚本を手にしたときから始まった、怨霊による恐るべき連続殺人。その悪夢から解放されるというならば、ここで消えてしまうのもまた、ある意味では救いなのかもしれない。


 いよいよのときが来たことを悟り、慶一は心の中で独り覚悟を決めていた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 霧雨の降り続く街中を、一台のパトカーが走っていた。曇天の空の下、灰色一色に染められたような街中を、赤い回転灯が照らして行く。


 パトカーの助手席に乗っているのは、他でもない雨音だ。運転するのは、その雨音から連絡を受けた牧原である。雨音の携帯電話に残された手掛かりだけを頼りに、牧原は一心不乱にパトカーを走らせていた。


 雨音からの電話をもらったとき、牧原は最初、何かの悪戯ではないかと疑った。が、電話越しに聞こえて来た声のあまりに切迫した様子から、ただ事ではないと判断するのに時間は要らなかった。


 高須慶一が、宮川亮の行方を探して消えた。そして、その直後に雨音の携帯電話に送られて来た、後輩からの不気味なメール。


 事件性を疑うには十分過ぎる証拠だ。こと、例の連続殺人事件に巻き込まれている当事者たちのものとすれば、警察としてはここで動かないわけにはいかない。そう思ったが早いか、次の瞬間には、牧原は署を飛び出していた。


「ここか……」


 程なくして、二人を乗せたパトカーは、さびれた劇場の前に到着した。


 昭和の中頃、大小様々な劇団が新しい作風を模索していた頃に建てられた、典型的な小劇場。かつては観客で賑わっていたであろう光景は、残念ながら今の姿からは思い浮かべることはできない。ボロボロに朽ち果てた外装と、埃にまみれた入口の扉。それだけで、ここが既に使われなくなって久しいであろうことは、誰しも想像に難くない。


 パトカーから降り、目の前に聳え立つ建物を見上げて、牧原と雨音は改めて悪寒のようなものを感じていた。


 見た目は古い劇場の跡だが、なんというか、諸に霊気のような物が溢れ出している印象を受ける。この中には太古の昔より封じられた魔物が潜んでいて、今もなお暗闇の中で牙を研いでいるのではないか。そんな印象を受けてしまう。


「ここからは、僕一人で行こう。君はここで、待っていてくれ」


 逸る雨音を静止し、牧原は覚悟を決めて前に出た。が、次の瞬間、そんな彼の腕を雨音が引き留めるようにして握り締めた。


「待って下さい、刑事さん。私も……一緒に行っても構いませんか?」


「残念だけど、それは難しい相談だな。君の言っていることが本当なら、相手は凶器を持っている可能性がある。そんな危険な場所に、民間人の君を同行させるわけにはいかない」


「で、でも……。小鳥遊さんは、私に来いってメールを送って来たんですよ? その私が行かなくて、もしも慶一の身に何かあったら……」


「心配性だな、君は。しかし、確かにそれも、一理あるか……」


 雨音の言葉を聞いて、牧原はしばし迷うような素振りを見せて、扉にかけた手を引き戻した。


 もうじき、付近を巡回中の警邏を始め、牧原の仲間が到着する。それまで待っていれば、雨音を連れて突入しても問題はないかもしれない。


 だが、今、この現場にいるのは、当然のことながら牧原一人。いくら現役の警察官とはいえ、たった一人で慶一を助け出し、雨音まで守りきる自信はない。


 亮が行方不明になってしまったことを、自分が慶一に伝えたこと。その判断を、牧原は改めて苦々しく思った。亮の行方を探るためとはいえ、自分でも軽率だったと今になって思う。あんなことを言わなければ、慶一は学校を飛び出して亮を探しに行くことなどなかった。まだ、知り合って日が浅いものの、慶一のような人間の性格は、牧原も十分に知っていたはずだ。


(くそっ……。僕は刑事失格だな)


 自分に対する苛立ちを露わにしながらも、牧原はなんとか気を鎮めて雨音の方に顔を向けた。もう、手段など選んではいられない。高須慶一を助け、少しでも事件の犠牲者を減らすためには、始末書の一枚や二枚など知ったことか。


「わかった。君が一緒に来るというなら、僕は止めない。しかし、二つだけ約束してくれ」


「約束……ですか?」


「ああ、そうだ。まずは、絶対に僕より前に出ないこと。次に、犯人を見つけても迂闊に動かないこと。この二つを守れるなら、着いて来ても構わない」


「は、はい。約束します」


 雨音も静かに答え、ゆっくりと首を縦に振って頷いた。その瞳の奥に宿る意思の強さに、牧原は雨音の慶一に対する想いを垣間見たような気がした。 


「よし、行くぞ。くれぐれも、僕から離れるなよ」


 ぎぃっ、という音がして、劇場の重たい扉が開かれた。普通、こういった建物の入口は封印が施されているはずなのだが、なぜかすんなりと入ることができた。


 これは罠だ。牧原の刑事の直感が、そう告げていた。こうも簡単に建物の中に入れたこともそうだが、連続殺人事件の犯人が立て籠る場所にしては、あまりに警戒が薄過ぎる。これではまるで、こちらに入ってくれと言っているようなものではないか。


 慎重に、油断なく辺りの様子を窺いながら、牧原は劇場の奥へと続く廊下を歩いて行った。そして、最後に舞台のある部屋の入口まで辿り着くと、その前にある扉を勢いよく開け放った。


 足下に立ち上る埃と、劇場の中に閉じ込められていたカビ臭い臭気。その二つが同時に溢れ出し、牧原と雨音は思わず顔をしかめて口元を覆った。


「あっ……! 慶一!!」


 劇場の舞台の上に、まるで作り物の人形のようにして縛られた慶一の姿を見つけ、雨音が思わず叫んだ。が、直ぐに慶一の上に吊るされている亮の死体に気がついて、そのまま言葉を失った。


 椅子に縛りつけられた慶一と、その真上にぶら下がる変わり果てた亮。そして、そんな二人と雨音たちを見比べながら、舞台の上で冷徹な笑みを浮かべている瑞希。あまりにも非現実的な光景に、自分の頭が追いつかない。


 これは何かのフィクションで、今、目の前にある光景は、新作の映画のワンシーンではないか。そう思わずにはいられないほど、そこにある全てが狂っている。


「小鳥遊瑞希だな……」


 放心状態の雨音を横目に、牧原が拳銃と警察手帳を取り出して言った。


「警察だ。一連の高校生連続殺人事件における殺人、誘拐容疑、および殺人未遂の現行犯で、君を逮捕する!!」


 お約束の台詞と共に、牧原は徐々に瑞希との距離を縮めて行った。だが、自分に銃口を向けられているにも関わらず、瑞希は不敵な態度を崩そうとしない。そればかりか、自分から牧原の方へと足を踏み出すと、片手に持った鋏をちらつかせながら、徐々に牧原へと迫って行った。


「貴様! それ以上動くな! 動くと……撃つ!!」


「うふふ……。お約束の台詞ね、刑事さん。でも、本当に撃てるのかしら? 刑事ドラマみたいに、相手の武器を持った手だけを撃ち抜いて倒す……。そんな器用なことできる人なんて、そういないわよね?」


「くっ……」


「それにね……。私の後ろにあるポリタンクの山、見えるでしょう? あれ、中身は全部灯油よ。もしも私を撃った弾が、あのポリタンクを直撃したら……そのときは、どうなっても知らないわよ?」


 相手は自分を撃つことができない。そう、わかっているからこそ、瑞希の中にいる堀井有紗は、銃を向けられてもまったく動じることがない。


 こちらの考えを読まれている。これはいよいよ、一筋縄ではいかない相手だ。思わず牧原が躊躇したその瞬間、彼の目の前に、天井から何かが落下した。


 ボタッ、という鈍い音を立てて、天井から牧原の目の前に落ちて来たもの。それは、堀井有紗の使役する、数匹の蝸牛だった。使役されているとはいえ、所詮は蝸牛。殺された亮の身体を食いつくすなどの恐るべき姿を見せたこともあったが、それでも所詮は小さな巻貝。現役の刑事である、牧原の動きを止めるには至らない。


 もっとも、そんな蝸牛ではあったものの、牧原の注意を逸らすには十分だった。


「邪魔者は死ね!!」


 瞬間、堀井有紗の身体が舞台を離れ、大きく宙を舞って牧原の後ろに降りた。とても人間業とは思えない、恐るべきまでの跳躍力。これも堀井有紗が憑依したことによる力の発現なのか。あまりのことに、今までは幽霊の存在に対して半信半疑だった牧原も、呆然とした表情で相手を見つめるしかない。


「危ない、刑事さん!!」


 雨音の悲鳴に牧原の意識が引き戻されるのと、瑞希の手が鋏を突き立てるのが同時だった。


 ヒュッ、という空気を切る音がして、牧原の頬を熱いものが走った。なんとか攻撃をかわしたつもりだが、どうやら完全にはかわしきれなかったらしい。


 頬の痛みに気を取られた牧原に、再び鋏の刃が迫る。が、牧原とて、そう何度もやられているだけではない。


 自分の喉元を狙って繰り出される鋏の刃を、牧原は瑞希の腕をつかむことで受け止めた。小柄な少女にしては、恐るべきまでの力だ。辛うじて抑え込んでいるものの、少しでも手を離せば、そのまま鋏の先端で腹を刺されそうだ。


「気をつけろ、刑事さん! そいつは……!!」


 そう、舞台の上で慶一が叫ぶのと、瑞希の手に黒い箱が握られるのが同時だった。


 一瞬、何が起きたのか、牧原にもわからなかった。ただ、気がつくと全身の力が奪われて、牧原は大の字に転がり天井を仰いでいた。


 青白い光の迸る箱を片手に、瑞希の中にいる堀井有紗が勝ち誇ったような笑みを浮かべる。その手に握られているがスタンガンであることに気づいた牧原だったが、一撃を食らってしまった時点で遅すぎた。


 多くのヒントを得ていながら、最後まで犯人による凶行を防げなかった。ここまで相手を追いつめながら、最後の最後でドジを踏んで反撃を食らった。


 ほとほと自分は、刑事失格だと牧原は思った。きっと、このまま自分は殺されるのだろう。自分が殺されれば、次は雨音と慶一だ。結局、最後まで何も守れずに、犯人に屈するしかない自分が悔しくてたまらない。


「遊びは終わりよ。私のことを嗅ぎまわったりしなければ、もう少し長生きできたかもね」


 瑞希の手にした刃が、そのまま牧原の首筋目掛けて振り下ろされる。身体の自由が利かない今、牧原にそれを防ぐ術はない。最早、自分もここまでか。そう、牧原が思ったときだった。


「このぉ!!」


 突然、雨音が叫びながら、瑞希に向かっておもいきり何かを投げつけた。それは空中で無数の粉となり、瑞希の身体に降り注ぐ。その一撃に怯んだ瑞希へ、雨音は続けて二回、三回と、両手を振って粉をぶつけた。


「うっ……あぁぁぁぁぁっ!!」


 謎の粉をかけられて、瑞希が頭を抱えて苦しみだした。その隙を逃さず、雨音は瑞希の落とした鋏とスタンガンを拾い上げると、未だ舞台の上に縛りつけられている慶一の側に、後ろも振り返らず走り寄った。


「大丈夫、慶一? 今、解いてあげるから」


「悪ぃ、雨音……。俺のせいで、結局お前まで危険な目に……」


「文句は後で言ってあげるわ。それよりも、今はここから逃げ出す方が先でしょ!?」


 瑞希の持っていた鋏で慶一を縛っている縄を切り、雨音は慶一と共に苦しみもだえる瑞希の方へと目をやった。


 牧原の直ぐ横で、頭を抱えて悶絶する瑞希。その後ろに、瑞希の姿に重なるようにして、黒い服を着た女の姿が見える。それは瑞希と同様に頭を抱え、瑞希が動くと、それも同じようにして瑞希の動きを真似していた。


 あれは堀井有紗だ。口には出さなかったが、慶一と雨音にはそれがわかっていた。


「おい、雨音。お前……いったい、あいつに何をしたんだ?」


「これよ。おばあちゃんから貰った、魔除けの人形。あいつに気づかれないよう人形の首を切って……その中身を、あいつに振りかけてやったの」


「人形の中身って……。そうか! 仏壇の灰だ!!」


 今朝、雨音の家を出る前に、彼女の祖母である節子が言っていた言葉を思い出した。


 慶一が節子から貰ったお守りと同じものが、雨音のもらった人形にも入っている。そしてそれは、魔物の嫌う道具のひとつ。具体的に言うと、雨音の人形の中に入っていたのは仏壇の線香の灰だ。それだけでは大した魔除けの効果も持たなかったのかもしれないが、灰を直接振りかければ話は別だろう。


 瑞希の背中に覆いかぶさるようにして、黒衣の女、堀井有紗の姿が浮かび上がっていた。灰を直接かけられたことで、かなり弱っているのだろうか。先ほど、牧原と対峙した際に見せた強さは既にない。


 だが、それでもなお、姿を現した堀井有紗の瞳は死んでいなかった。いや、正確には既に死んでいるのだから、こういった表現をするのはおかしな話なのだが、その瞳の奥に宿る恐ろしいまでの深さを持った闇は健在だった。


「殺……して……やる……」


 ずるずると、地面を蛙のように這いずりながらも、堀井有紗の憑いた瑞希は慶一たちの方へと向かってきた。既に武器などなく、もはや執念だけで動いているにも関わらず、その瞳に睨まれた慶一たちは、あまりの気迫に動くことができなかった。


 その後ろに堀井有紗の姿を浮かび上がらせたまま、瑞希がゆっくりと立ち上がった。先ほど、灰をかけられたショックから、まだ立ち直っていないのだろうか。あの凄まじい跳躍力、運動能力は失っていたが、それでも堀井有紗は徐々に慶一たちを追い詰めていった。


「渡す……ものか……。あの人の……あの人の書いた物語は……私だけの……」


 右手を伸ばし、その先に何かを求めるようにして震わせながら、堀井有紗が慶一と雨音との間を詰めてゆく。このまま行けば、例え相手が武器を持っていなくとも殺される。そう思った雨音だったが、今度は慶一も引かなかった。


「ふざけんな! さっきから黙って聞いてりゃ、何様のつもりだ、貴様!!」


 慶一が、瑞希の中の堀井有紗に向かって叫んだ。先ほど、椅子に縛られていたときに見せていた、絶望の色は既にない。普段の慶一と同じ、否、それ以上に強くはっきりとした口調で叫びながら、慶一は雨音を庇うようにして前に出た。


「お前が死んだ恋人の脚本にこだわるのは勝手だけどな……そもそも映画ってやつは、誰かに見てもらうためのもんだろ? それを演じたやつを呪い殺して、自分だけのものにしようなんて……そんな理不尽な理由で殺されてたまるかよ!!」


「黙……れぇ……。お前に……何がわかる……」


「さあな。でも、お前もお前の恋人も、既に死んだ人間だろ? だったら、いつまでもこっちの世界に残ってないで、天国でよろしくやってろってんだよ!!」


「天国……? ふ……ふふふ……あっはははははははっ……!」


 突然、瑞希の中の堀井有紗が、その足を止めて笑い出した。いったい、何があったのか。状況がつかめずに立ちつくす慶一と雨音の前で、堀井有紗は狂ったように笑いながら髪を振り乱して言った。


「最後まで……おめでたい発想の持ち主ね……。天国なんてものは、この世界には存在しないのよ……。死んだら皆、無になるか、私のような存在になるだけ……。だから、私の中の貴之は、もうあの脚本の中にしかいない……。あれを壊されたら……私の中の貴之が……死んでしまう……」


 狂笑から一転して、瑞希と共に堀井有紗が下を向いた。が、その瞳だけは慶一たちから逸らさずに、恐ろしいまでの執念を見せて、情念の炎を燃え上がらせている。


「だから……私は……あの物語を穢す者を許さない……。その報いを受けて……まずはお前が死ねぇ!!」


 地獄の底から響くような声で、堀井有紗が叫んだ。もう、瑞希の口さえも借りていない。堀井有紗本人の、邪悪でどす黒い欲望を余すところなく乗せた声だ。


 堀井有紗に操られ、瑞希がその両手を大きく広げて迫る。あの、灰をかけられて弱っていたことが嘘のように、物凄い速さで慶一との間合いを詰めた。


「ぐぁっ……!!」


 瑞希が慶一に飛び掛かり、その後ろにいる雨音も突き飛ばした。そのまま慶一の上に馬乗りになって、凄まじい力で首を絞め上げて来る。


「あっはははははっ……。死ね、死ね、死ね、死ね、死ねぇぇぇぇっ!!」


 瑞希の後ろに立つ堀井有紗が、勝ち誇ったように叫んでいた。


 駄目だ。このままでは殺される。結局、このまま自分たちは、堀井有紗に殺されてしまうのか。そう、慶一が思ったときだった。


「先……輩……」


 慶一の首を絞める手が、急に力を失った。同時に瑞希が慶一から離れ、慶一は咳込みながらも喉を押さえて立ち上がる。


「み、瑞希?」


 そこにいたのは、紛れもない瑞希本人だった。後ろにいた、堀井有紗の影は既にない。瑞希の中に再び入り込んでしまったのか、それとも既に彼女の中から離れたのか。その、どちらかはわからなかったが、とにかく今の慶一の前にいるのは、紛れもない元の瑞希だった。


「瑞希! お前……元に戻ったのか!?」


 この土壇場で、瑞希が堀井有紗の呪縛を振りきった。奇跡というものがあるならば、正にこういったことを指すのではないか。そう思って駆け寄ろうとした慶一だったが、瑞希は何かに怯えるようにして後ろに下がると、そのまま傍にあったポリタンクを倒して慶一に向かい叫んだ。


「来ないで……来ないでください、先輩!!」


 胸元を抱えるようにして抑え、何かに耐えるようにしながら、瑞希は更にポリタンクを蹴り飛ばした。タンクの中の灯油が一面に撒き散らされ、辺りに鼻をつく機械的な油の匂いが充満する。


「ボク……先輩に、酷いことしました……。ボクのせいで、皆……皆、死んじゃいました……」


「なに言ってんだよ、瑞希! あれは、お前のせいじゃない! 全部、お前の中に入った、堀井有紗がやったことだ!!」


「で、でも……ボクの心が弱くなければ……あいつの言葉に耳を貸さなければ……こんなことにならなかったはずです……」


 震える身体を抱えながらも、瑞希はなんとか力を振り絞ってその場に立っていた。瑞希の髪が本人とは別の生き物のようにして蠢き、その皮膚の下で、ゴボゴボと何かが動き回っているのが見える。その、あまりに異質で異様な光景に、慶一も雨音も、ただ息を飲んで見つめることしかできなかった。


「あいつは……堀井有紗は、まだボクの中にいます……。だから……最後はボクが……あの黒衣の女をやっつけます……」


 その目に涙を浮かべながら、瑞希は制服のポケットからライターを取り出した。全てを終えた後、ここを灰にするために、堀井有紗が持たせていたものだ。


「止めろ、瑞希! お前……なに考えてんだよ!!」


 瑞希が何をしようとしているのか。それに気づいた慶一が、慌てて彼女を止めようと前に出る。だが、その手が自分に届くよりも先に、瑞希は手にしたライターを、床に広がる灯油の中に力なく落とした。


 ボッ、という勢いのよい音がして、床の撒き散らされた灯油から火柱が上がる。後少しで瑞希に届きそうだった慶一の手は、炎の壁によって阻まれた。


「お、おのれぇぇぇぇっ!!」


 燃え盛る炎の向こう側で、再び瑞希の後ろに堀井有紗が現れた。もっとも、いくら泣こうが叫ぼうが、一度燃え広がった炎を消すことはできない。


「残念だったね……。でも……もう、ボクの身体をお前の好きにはさせないよ……。先輩は、誰にも殺させたりなんかしない……」


 慌てふためく堀井有紗を他所に、瑞希は慶一に最後の笑顔を送っていた。その表情は、今までになく満足そうで、それでいて可愛らしい。かつての瑞希が見せていた、強がりの込められた笑顔はない。ただ、一人の少女としての、想いと優しさを秘めたものがそこにあった。


「さよならです……。先……輩……」


 そう言いながら、慶一と雨音の目の前で、瑞希の姿は堀井有紗と共に炎の中に消えて行った。

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