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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 8章:監獄の罠
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逃戦:サラ&シルヴィアVSアル&……




 監獄の2階でサラとシルヴィアは4人ほどの監獄官に追われていた。

「待てやああああああああああ」

 鬼のような形相で迫ってくる監獄官たち。ここ数分、鬼ごっこ状態だったからだろうか、だいぶ疲れているようにも見える。

 しかし、それはサラとシルヴィアも同様で、かなり息が切れていた。

「ああああもう! シルヴィア!」

「わかってる!」

 シルヴィアは小さなボールを追ってくる監獄官に投げつける。着弾と同時に周囲は煙に覆われ、監獄官たちの視界を覆う。

 煙に紛れてサラとシルヴィアは階段を降りようとして、3階へとあがる階段に見えない魔法罠を設置した。

 追ってきた監獄官は二手に別れようとして階段を上ろうとする二人が罠にかかったことに気づき、慌てて下りようとしていた二人が3階へと向かった。

 なんとかやりすごした二人は、息を整え、他に迫る気配がないか探っていた。

「ちょっと……1階まで降りたけど……これ、出れるの……?」

 二人はルカに落とされたあと、待ち構えていた監獄官をなんとか撃退し、開いていた扉から外へと逃げ出した。しかし行く先々で窓も扉も開かず、正面出口も閉まっているだろうと推測できる。

 二人はまだ、結界の特性に気づいていなかった。

「ぜえ……ぜえ……接近反応……はあ、はあ……今のとこ、なし」

「みんな、どこにいるか……わかる……?」

 サラの気配探知に頼るシルヴィアだが、自然の中であれば彼女の真価も発揮されただろう。建物の結界の中という状況ではシルヴィアの能力はほとんど役に立たない。

「ケイトとユリアは1階にいる……? ケイトは1階に落ちたみたいだし、もしかしたら合流でき――」

「できるかもしれない、とか思ってるだろ」

 さっ、と血の気が引くのと同時に、二人揃って声のした方を見る。思ったよりも近い、というか手を伸ばせば触れられそうな距離に、先ほどまでルカと対峙していた黒髪の監獄官アルがいた。

「気配消してるからって、この近くの俺に気づかないならお前らは逃げられないよ」

「ひいっ!」

「嘘っ!?」

 考える間もなく、二人は駆け出す。アルはそれを見て呆れはするものの、必死に追いかける、というような行動はしなかった。

「……ったく……大人しくしとけば別に何もしねーっての」

 逃げる二人には聞こえるはずもなく、宛てもなく逃げた先は訪れた際にも監獄の受付こと正面口。しかし、外に通じる扉は当然開かない。鍵が掛かっているわけでもないのにサラとシルヴィアが開けようとしてもびくともしなかった。

 受付には先程までいた人間もおらず、後ろからゆっくりと迫ってくるアルがいるだけだ。

「さて、武器を捨てて両手上げろ。抵抗しなければそれなりの――」

 アルが降伏を促し、サラとシルヴィアが息を飲んだ次の瞬間。


「はぁ~……ちーっす、ただいま帰りましたー。ていうかなんで門閉鎖してるんですかー? 平日休業? にしたって登って入るの面倒なんでやめてもらえ――あれ?」


 入口の扉があっさりと開かれ、外から茶髪の青年がため息混じりに入ってくる。制服をしっかり着た青年は、緊迫したその空気をぶち壊した男に三人の視線が注がれた。

「……え、なんですかこの状況」

 困惑している青年が扉を閉めようと手を離す直前、サラが開いた扉ごと氷漬けにし、シルヴィアとサラが扉の外へと駆け出した。

「……脱獄?」

 状況の分かってない青年がアルに事情を聞こうと視線を向けるが、アルは青年を無視して焦る様子はなく外へ二人を追った。

 外から外壁と門まで少し距離があり、門の外には野次馬なのか人だかりがわずかに出来ている。

 サラはなにか違和感を抱えながらも鉄格子の門を飛び越えようと地魔法で足場を作った。

「サラナイス!」

 シルヴィアがその足場を使って門を飛び越えようと――



 して、壁に激突し、敷地内に落ちた。

 それを見て、サラはようやく気づく。敷地内に出るための強力な結界は建物と敷地でそれぞれ独立しているということを。

「で、出られな――」

「おい」

 落ちた痛みで蹲るシルヴィアと、退路がなく困惑するサラにアルと、青年が近寄る。なぜか青年がアルを制してシルヴィアとサラの腕を掴み、聞こえるか聞こえないか怪しい小さな声で呟いた。

「リバースペイン」

 瞬間、二人が表情を歪め、苦痛に満ちた声を上げる。

「あがっ――ああああああああああああ!!」

「ひぎぃ――っ!!」

 がくがくと痙攣して倒れ、見るからに危険な状態である。

「さて、なんか僕が外だしちゃったみたいですし、こんなもんでどうですか?」

「……やりすぎじゃないか」

 リバースペイン。今まで他人を癒した分だけ最大威力が高まる療術の派生。痛みを記憶し、その痛みを他人に与えることができる。

 そして痛みは調節できるはずなのだが、気絶する二人を見るからに、かなりの痛みを与えたと思われる。というかだいぶやばいとアルは思った。

「ハル、殺すのは御法度だぞ」

「え、脱獄囚でしょ? ならこれくらい……」

「違うぞ?」

「えっ、じゃあなんですか。先輩達でマワすんですか」

「お前の思考回路はどうなってるんだ」

 監獄内に戻そうとアルとハルが一人ずつ引きずりながら中に入る。

 すると、アルの懐から簡素なアラーム音が響いた。

「あ? コーダなんだよ」

 取り出したのは携帯水晶。どうやらコーダから連絡が入ったらしい。

「……へぇ、そうか。じゃあルーの方頼む」

 それだけ言って通話を切ると疲れたようにはぁっと息を吐いた。

「どうかしました?」

「西側の1階の封印魔法陣エリア付近で金髪女とコーダが交戦、後にバーサクしたルーと混戦。ルーが満身創痍のためコーダが撤退して医務室に向かったため一時戦線離脱。というわけで俺が行くからお前5階にこいつら運んどけ」

「えぇ……二人も運ぶのやですよ。ていうか、この子ら僕の好みじゃないし虫唾が……」

「化物みたいな女に半殺しにされたいなら俺が5階に運んでもいいがどうする?」

「すいません、しっかり運んできます。そっちはそっちで頑張ってください」


監獄官の紹介とかそのうち区切りのいいところで載せたいです。

ちなみにこれでも強くなってる弟子たちだけど相手が悪すぎる。

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