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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 8章:監獄の罠
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狂戦:ケイトVS下っ端ルーシー2



 息をつかせぬ攻撃をどうにか弾いてかわして、離れて、近づかれて、また攻撃の嵐。

 先程からそれの繰り返しで徐々に体力が消耗される。

「ああもう!! なんでおかしくなったんだよ!」

 狂ったような状態の相手に言葉など通じず、ひたすら翻弄されるだけだ。笑い声と意味をなしていない言葉を吐くだけの戦闘人形。部屋の中のソファや机、用具入れなどの備品も避けた拍子についでと言わんばかりに壊されている。

「あひっ……ひひひひ」

 笑い声にいちいちぞっとさせられる。目に光がないのと会話が成立しないことがここまで恐怖を煽るとは思わなかった。

 無残に壊された備品を見てふと思う。これ、扉壊させればいいんじゃね?

 そう思った矢先に逆手ナイフ二刀流で飛びかかってきた監獄官。うまく誘導して――

「はっ――」

 普通に避けただけなのに勢いつきすぎたのか、思ったより綺麗に扉付近に吹っ飛んでくれた。

「あぅ……」

 わざとなのかと聞きたくなるほどナイフが片方、扉に深々と突き刺さってる。

「あー?」

 深く突き刺さったナイフを引き抜こうと監獄官は乱暴に力任せでドアごとナイフを引っ張り出し、ドアが真っ二つになって廃棄物へと変わり果てた。

 ナイフを握り直した監獄官は喜々として斬りつけようとしてくる。

 しかし、俺はもう戦う気はない。

 全速力で扉のない入口へと走り、廊下に出る。出口がどちらかわからない上に恐らくどこも仕切りであるドアと窓は自分の手ではどうしようもない。しかしあの監獄官と戦い続けるわけにもいかない。

 とか思っちゃったのが多分最大の失敗だったかもしれない。

 とりあえず気配がしない方へと走る。他の監獄官に出くわす可能性もあるだろうが仕方ない。

 ふと、後ろを振り返ってみるとゴミへと変わった元ドアの残骸を片手に先ほどの監獄官が迫ってきた。ぎょっとしたのも束の間、先ほどの動きよりも速くドアの残骸を投げつけてきて視界が塞がる。残骸とはいえまだ形を保っていたせいで目の前にあるのは木製の板でしかない。それを剣で叩き切ると、木片が散らばり、振り払おうと手を横薙ぎに振った。


「ひひっ」


 横薙ぎの腕を壊した木板の向こうから掴まれ、思考が停止する。今どこから現れた!?

「っしゃああああああああああああああ」

「え、ちょ、ま――」

 腕を掴まれたことでバランスが崩れたのをいいことに監獄官はそのまま俺を壁に力の限り叩きつける。

「がっ――」

「ヒャッ――ハアアアアアアアアア」

 そのまま壁に叩きつけるのを繰り返され、ちょっと意識が飛びかけた。やばい、これはまずい。

「はな――」

「しゃらぁっ!」

 突然体が不自然に浮いた感覚。なんでだろーなーとちょっと現実逃避したけど、腕一本で空中に掲げられていた。

 危機的状況に陥ると世界がゆっくり見えるということだろうか。床に叩きつけられる今の状況がスローだ。あ、これやばい。これは危ない。

 多分俺、また気絶する。そして思う。武器すら使わないで倒される自分って一体――。







 確実にどこか折れるか内臓に悪影響が出たのではないかという勢いで床に叩きつけられたケイト。「かはっ」とかすれ声と同時に少量の血が口から出てそのまま意識を失ってしまった。

 ルーシーは今度はケイトの足を掴んでもう一度壁に叩きつけた。何が楽しいのかうっすら笑っている気がする。

 しかし、ケイトが意識を失って反応がないことに気づいたのか理性のない状態であるにも関わらずつまらなさそうに遊んでいたケイトを放り投げる。

 三秒くらいぼんやり立っていたかと思うと襟首を乱暴に掴んでそのまま引きずりながらどこかへと歩き始めたルーシー。

 すると、廊下の奥から別の監獄官が二人ほど現れてぎょっとしてルーシーに声をかける。

「おい、ルー! その子供――」

「待て! 今のルーはバーサク化してやがる! あれに下手に近づいたら――」

 監獄官の悪い予感は見事的中し、ルーシーは新しい獲物を見つけたとばかりににたぁ……っと笑う。そしてそのまま意識のないケイトを楽しそうに片手で持ち上げ――


「おい! ルー!! それはやめ――」

 監獄官の制止を一切聞かずにルーシーはそのままケイトを監獄官に投げつけ、怯んだ監獄官をそのまま接近戦用のナイフで切り捨てた。

「ルーてめぇ! いい加減正気に――」

 もう一人の監獄官が止めに入ろうと武器を出した瞬間、投げ捨てられたケイトの足を再び掴んだルーはそのまま道具のように振り回して投げつけた。

 監獄官は咄嗟に避けようとしたが避けたらケイトの頭が壁に激突することに気づいて慌ててケイトを受け止めた。良識はあるのか弟子を殺すわけにはいかないと判断したのだろう。すでにケイトは投げられたときの勢いのせいか頭から血を流していた。

「ルー、お前いい加減に――」

 受け止めたケイトのせいか素早く動けない監獄官はルーシーが視界から消えていることに気づいてはっとする。

 そして、気づいた瞬間には、後ろから殴られ、気絶した。

「ひひっ……あはひひひひひひ」

 楽しそうにまたケイトの襟首を掴んでどこかへと向かった。


ケイトは道具扱い。 ルーシーのバーサク状態は身体能力が素で向上しているので力も相当強いです。

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