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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 2章:二人の魔法使い
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始動!魔法指導!? その一

 目が覚めると見覚えのない天井が視界に映った。

 まだ頭が痛む。というかあんまり何が起こったのかわからない。

 するとユリアが顔をのぞき込んできた。

「あ、ケイト君目覚めました。ケイト君大丈夫ですか?」

「あー……多分」

 起き上がろうと頭を抑えながら体を起こすと先ほどの二人が床に正座させられていた。

「ケイト、あんた大丈夫? まあ血とかは出てなかったし、しばらくしたら平気になると思うけど」

 エレナさんはあるおじいさんと一緒に部屋に入ってきた。優しそうなおじいさんは正座している二人の元へ近づき持っていた杖で二人を叩く。

「痛っ、長老痛いー!」

「うるさいわ! 全く……客人になんてことをするんじゃお主らは」

「ご、ごめんなさい」

「ルカ、反省するくらいならなぜサラを止めなかったのじゃ」

 ルカは俯きながらごめんなさいと再び呟く。その様子に長老は困り果てたというふうな様子を見せる。

「すまんな、エレナ。お前の弟子に怪我させてしまって」

「あー気にしないで。よけられない方が悪い」

 俺が悪いんですか、エレナさん。そう口に出そうとすると長老が先にエレナさんに言った。

「よけられないときもあるじゃろう……まあいい。魔法の指導じゃったな」

「アタシは魔法教えられるほどの知識ないしちゃんとした魔法身につけさせてあげたいのよ」

 二人が何かぶつぶつと会話をしている。その間もサラはふてくされたようにそっぽを向きルカは俯いたままだった。

 長老は悩む素振りをみせ、いいことを思いつたかのように手を打つ。

「そうじゃ、サラとルカ! この三人に魔法を教えてやってくれ」

 長老は俺とユリアとアベルを順に示す。アベルは自分も含まれてることに驚いたのか何か言いかけていたがサラの怒号にかき消された。

「はぁ!? 何言ってるの! アタシは人に魔法なんて教えられないって! それになんでいきなりそんなこと言うのよ!」

「罰じゃよ。お主ら仕事サボった挙句客人襲ったんじゃ、文句は言えんぞ」

 そう言われると反論できないのか悔しそうに顔をしかめる。ルカは戸惑いの表情を浮かべたあと仕方ないといった感じの表情になった。

 エレナさんが複雑そうな困ったような顔をしながら長老を睨んだが完全に無視されていた。

「それじゃあ、わしらは話があるからあとは頼んだぞ」

「三人とも、ちゃんと基礎くらい覚えておきなさいよー」

 そのまま二人がいなくなった部屋は沈黙に支配される。

 まず言葉を発したのはユリアだった。

「あのー……サラちゃん?」

「え、何よ。ていうかいきなり馴れ馴れしい――」

「その、私、女の子のお友達がいないのでもし……その、よかったら……」

 もじもじと恥ずかしそうというか緊張したような雰囲気を漂わせながら意を決したように言う。

「お友達に……なってくれませんか?」

「嫌よ」

 即答された。ばっさり切り捨てられた。

 ショックを隠しきれないユリアの様子を見てサラは慌てたように付け足す。

「いやだから……初対面でいきなり友達ってのはちょっとね……せめて少しくらい会話らしい会話しないとなんとも……」

「じゃあお話すればお友達になれるんですね! いっぱいお話しましょう!」

 するとサラは若干諦めたのか小さくため息をつきながらルカのほうを見る。ルカは苦笑しながら頷いた。

「で、魔法を教えなきゃいけないんだっけ……何がわかんないのか知らないけどアタシたちだって見習いなんだからあんまり教えられないわよ」

 そっぽを向きながらも教えてくれるらしい。

「一応自己紹介しておくね。僕はルカ・ファルキ。ルカって呼んでくれて構わないよ」

「アタシはサラ・バドリオ。好きに呼んで」

「俺はケイト。ケイト・フィアンマだ。こっちはユリアであいつはアベル。俺全然魔法わかんないし使えないんだよー。だから指導よろしくなー!」

 するとルカとサラが明らかに動揺した様子を見せた。二人はコソコソと内緒話をするように俺から離れる。

「フィアンマって――だよね? それに魔法が――――なんておかしいし……」

「偶然、ってのもないわよね……。確か数年前に全員――だって言ってなかった?」

 ほとんど聞こえない。声をかけようにもやけに真剣な雰囲気のせいでかけづらい。

 しかし、アベルはそんなことお構いなしに話しかける。

「どーでもいいからとっととやることしろよ。お前ら二人の話は後でいくらでもできるだろ」

「あ、うん……そうだね、ごめん。じゃあちょっと移動しようか」






「で、頼んでたやつ」

 ぶっきらぼうに手を出すと呆れたような笑いとともに長老が椅子に腰掛けた。

 長老の私室で二人はとあることを話していた。

「お前さんは相変わらずせっかちというか……久しぶりに来たんじゃからゆっくりしてけ」

「できる限りここには来たくなかったんだけど」

 不遜に言い放つエレナは窓から五人が移動する様子を見て眉をひそめた。

「ねぇ、あのルカって子――」

「あの子は関係ない。わしはあの子が生まれる瞬間にも立ち会ってるんじゃ」

 まだほとんど言っていないにもかかわらず言葉を遮る長老に不信感を抱いたエレナは話題を切り替えた。

「最近、この辺の様子で変わったことある?」

「魔物の異常繁殖とルーチェの出生率が格段に跳ね上がってることじゃの。ほかにもあるがこの二つが大きな変化じゃ」

 小さな冊子をエレナに放り投げる。それを受け取ったエレナは大雑把に目を通すと一拍おいて深いため息をついた。

 それを見た長老は何か悟ったように窓の外を見た。

「早いもんじゃの。ちょうど千年前くらいのとき、彼らに初めて出会ったのだと考えると」

 長老の言う彼ら、が誰だかエレナにはわかっていた。

 長老は感情の読めない瞳で窓の外を相変わらず見つめている。外は木々が揺れ木ノ葉を舞い散らしている。

 エレナは思った。いったい、自分は何度木ノ葉が散るところを見たのだろうか。何度花が散るところを見ただろうか。あと何度自分は散るのを見せつけられるのだろうか。

「千年という時間は長いのか短いのかさっぱりわからん。これだけ長生きしてもな」

「そうね、アタシもわかんない」

 無駄に生きることの意味が、とつけ加えた。それを聞いた長老は何も言わなかった。

 沈黙を持て余すように目線を再び窓の外へと向けるエレナ。そして唐突にぽつりと呟いた。

「アンタの頼みとやらを一応聞くわ。アタシ、今弟子三人持ってるからあんまり自由に出来る自信ないけど」

「大したことではないがある意味大事かもかもしれんな」

 もったいぶる長老の言い方に思わず顔をしかめる。長老はいつにも増して真剣な表情で告げた。


「ルカとサラをお前さんに預かって欲しいんじゃが」





更に仲間が増え……そうです。感想などいつでも受付ております。

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