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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 2章:二人の魔法使い
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魔法使いの村

 カルヴィア歴1000年。

 かつて、世界を混乱に陥れた組織『アニムス』。目的も正体もわからない彼らは世界を危険に晒そうとした。

 その時立ち上がったクランアミーユの面々と協会の実力者がアニムスに挑み死闘を繰り広げた。

 勝利を勝ち取ったアミーユと協会はその後も復興に尽力し尊き平和をもたらした。



 クランアミーユ、若者たちが夢を抱き作り上げた小さくも実力主義のクラン。六大英雄と謳われる六人の戦士達。

 光速の剣士『ルイス・カーネル』、最凶の魔導師『カイル・ラバース』、暗闇の銃士『ユリシア・コルベール』、森の狩人『レイフィア・カタルシス』、海音の侍『カズキ・サザナミ』。

 そしてリーダーと呼ばれた破壊の大剣士『ミラ・エルヴィス』。


 ルイス・カーネル、カイル・ラバース、ミラ・エルヴィスはルーチェということもあり今もなお生きているのではないかと

言われているが、真実は本人のみぞ知るのであった。



 ――現在、カルヴィア歴1998年。



 旅はもっと楽しいものだと思っていた。それなのに――

「アベル! お前俺を殺す気か!?」

「やかましい」

「ケイト君、落ち着いてください! また怪我しますよっ」

 先ほどの魔物との戦いでアベルに突き飛ばされ本気で危なかった。

 ちなみにギリギリのところで避けたので怪我はしなかった。

「ぶん殴る……ぜってーぶん殴る」

「殴れるもんなら殴ってみろ。お前みたいな雑魚の攻撃なんか当んねーよ」

「け、喧嘩しないでくださーい!」

 ユリアは仲裁に入るがあまり意味を成していない。その様子を見ていたエレナさんは深いため息をつく。

「アベルー……機嫌悪くなってるよー……そんな仏頂面してると幸運逃げるよー」

「誰のせいだと……」

 アベルの言葉には聞く耳持たずどんどん先へ進んでいく。

 現在、アウローラからマギアへと国境を越え、マギアの辺境あたりにいるそうだ。

 俺の住んでいたところはアウローラのオルヴェンという田舎の町だったので都会に憧れているのだが都会に行く気配がしない。

「マギアに、しかもこんな辺境の地になんの用だよ」

「うーん、知り合いにちょっと用があるんだけど……ああもう、なんでこんな厄介な場所に隠れ住むのかなぁ……」

 茂みをかきわけながら何かを探しているようなエレナさん。俺たちはその様子を眺めるしかできないので基本ぼーっとしていた。

 アベルは不機嫌そうに、ユリアは温かい木漏れ日のせいか少し眠そうに、俺は全体的に疲れたのでため息ばかりだった。

「一応さー、ユリアにちゃんと魔法教えてあげたいし個人的に用事があるからきたんだけど……魔法使いっていうか魔導師系の人間って面倒なところに住んでるからあんまり頼りたくないんだよねぇ……」

 ぶつぶつ文句を言うエレナさんの言葉に引っ掛かった。ちゃんと教えてあげたいってどういうことだ。

「実はさーユリアに魔法教えるときすっごい適当に言ったら使えちゃったのよねー。やっぱり記憶なくなる前は使えたんだと思うんだよね。でも今は基本もわかんないみたいだしちゃんと教えとかないと変に暴発とかしかねないからさー」

 適当って言ったぞこの人。適当に魔法教えるほうもほうだけどそれで使えるユリアは一体なんだ。

「そーいやアベルって魔法使えるのか?」

「俺はあんまり魔法の才能ないから低級しか使えねー。お前よりはできる自信あるけどな」

「一言多いんだよ! お、俺だって魔法使えるかもしれないだろ」

「どうだか。マジッククローク使えるようにしてから言うんだな」

 初対面のときから何かと言われるマジッククローク。どうやら魔法のようで魔法ではない何からしい。エレナさんに聞いたら「そのうち教えるからあんたはまだ頑張りなさい」と言われた。ちなみに俺とユリアが使えるようになるまで荷物をエレナさんのマジッククロークに預けてくれてるそうだ。

 知らないままならそのまま持たせる気だっただろう、エレナさん。

「エレナさん……さっきから何探してるんですかー? お手伝いしますけど……」

 ユリアが眠そうな目を擦りながら言う。エレナさんはぶっきらぼうに「大丈夫」と答えるだけだった。

 延々と探す時間が三十分くらい続くととうとうエレナさんが切れた。

「うがぁー! なんでこんなに探してるのに見つかんないのよぉぉぉぉ!! 何!? もしかして結界方式変えたの!? あのクソジジイ!!」

 その辺にある木に八つ当たりしてる。木にはたまったもんじゃないだろうに。

 少し暴れたら気が済んだのか木にもたれかかりながら小さなため息をついた。

「あーもう……結界方式変えられてたら入れないじゃん……ってあれ?」

 視線の先は俺たちの背後。よく目を凝らすと標識のようなものが立っていた。

「あった! あれあれ! あんたたち来なさい!」

 一気に元気を取り戻したエレナさんは標識に触れ何かを確かめるようにしている。

「え、これがどうしたんですか?」

「これをちょーっといじると目的地に入れるのよ」

 標識には『世界はなぜ不完全なジグソーパズルと似ているんでしょーか?』と子供みたいな字で書かれていた。

「これなぞなぞじゃね? でも俺こういうの苦手なんだよなぁ……」

 悩んでいるユリアと俺をよそにアベルは何かわかったのか顔を引きつらせていた。

 エレナさんは悩むことなく何か標識に備え付けてあったペンで書いていた。

 すると木々が風もないのにざわつき視界が晴れたように村の入口が目の前に現れた。

「え、今の答え結局なんだったんですか?」

「自分で考えなさいー。ってさすがに色々かじってないと難しいか」

 苦笑するとそのまま村に入っていく。そのあとを追おうとするアベルを引き止めた。

「おい、さっきの問題ってどういうことだよ」

「……ヒントは不完全なジグソーパズルに必要なもの」

 それだけ言うとさっさと行ってしまう。仕方がないので俺とユリアも後を追うがさっきの問題が気になって仕方がなかった。

 すると突然エレナさんとアベルが歩みを止めユリアもぴたりと動きを止めた。

 反応は様々でエレナさんはどこか困ったような表情でアベルは警戒するかのようでユリアはきょろきょろと辺りを見回していた。

「魔力で擬似気配を作って発生源をわからなくしてるのはうまいけど――誤魔化し方が甘い!」

 いつの間にか手に投擲用ナイフを持ち入口に一番近い木の上のほうへ投げた。

 すると何かが動くようなガサガサと木の葉の音がし、人が落ちてきた。

「いったぁ~! ってルカ!? ちょっと、大丈夫!?」

「大丈夫って聞くならどいて……苦しいよ」

 それは俺とたいして変わらないだろうと思われる少年少女だった。

 少年の上に少女が乗っていてすごく苦しそうだ。慌ててどくがちょっと咳き込んでる。

 少女は少し癖のある濃い目の青髪をセミロングほどの長さで整えており、髪に合わせてか青系統のケープを着用していた。

 少年のほうはよく見るような茶髪で地味な印象を受ける。服も黒基調で全体的にゆったりとした服装だった。

 少年と目が合う。青い瞳は珍しくはないが随分と鮮やかだと思った。

「あ、あの……隠れてたのは謝るのでその――」

「侵入者! この村によく入れたわね! 後悔したくなかったらさっさと出て行きなさい!」

 どうやら勘違いされてるようだ。

 エレナさんは一瞬困惑した表情を浮かべたがすぐにいつも通りの表情に戻り、頬を掻く。やけにエレナさんの困惑顔が気になったが一瞬の出来事だったので追求できなかった。

「んー、何勘違いしてるのか知らないけどあんたらの長老に用が――」

「言い訳は聞かないわっ! 魔法使いの村に不用意に入ったあんた達が悪いんだからっ!」

 聞いていない。少年のほうも少女の言動にため息をついていた。

「喰らいなさいっ!」

 少女は予備動作なしに水を発射してきた。全弾避けたり武器で防いだがどんどん追加していく。

「エレナさん! 誤解解いてくださいよ!」

「な、なんで攻撃してくるんですか? えっ? エレナさん~!」

「人の話聞かないのはあっちだもの。ちょーっと沈めるしか……」

 するとバチバチと何かが弾けるような音がし少女の近くに小さな雷が落ちる。しかし事前に気がつかれてたのか難なく避けられてしまった。

 雷を放ったのはアベルだった。

「そっちがその気なら手加減しねーぞ。魔法使いだろうが喧嘩売られたならきっちり返してやる主義なんでな」

「お前それ誤解深めるからやめろ!」

 すると風が吹き荒れ竜巻のようになって相手を襲った。しかしそれも避けられてしまう。そのまま竜巻は木に当り木の葉がはらはらと舞い散った。

「ユリアー! お前も何攻撃してんだよ!」

「え、だって……危ないですし……」

「うん、もう……いいよ」

 話を聞かない少女と喧嘩腰のアベル、状況をよくわかっていないユリア。もうどうすればいいのかわからない。

「えっと……サラ……やっぱりこの人たち侵入者じゃないとおも――」

「ルカ! 侵入者だとかそうじゃないとかこの際どうでもいいの! やっぱり実戦したいのよ! アタシ的勘では多分大丈夫だから!」

「何がどう大丈夫なの!? 駄目だって! 長老とかに怒られるから!」

「少しくらい怒られたっていいじゃない! どうせ仕事さぼったことバレて怒られるじゃん!」

 ついてけない。どうやらあちらで揉めてるようだが完全に置いてけぼりである。

 エレナさんが困ったような顔で言う。

「あのさー、人の話聞こうって。長老と知り合いだから会いたいんだけど」

「長老の知り合い? え、でもここ数年旅人は訪れたことないって聞いたのに――。失礼ですが幾つですか?」

 ルカと呼ばれていた少年は比較的まとものようでちゃんと会話してくれた。歳聞くのはどうかと思うが。

「女性に年齢聞くのはどうかと思うんだけど……まああんたらよりは遥かに年上よ。エレナが来たって言えばわかるから」

「あ」

 間の抜けた声がすると思ったら後ろの方で少女のほう――多分サラという奴が何か構えていた。

 その様子を見てルカはぎょっとしエレナさんは「うわー」と呟きアベルとユリアは首を傾げていた。

「さ、サラ! とめてとめて! ってそれ……」

「ごめん、詠唱してたらなんか失敗しちゃった……ははは……」

 乾いた笑いをこぼすと足元に陣のようなものが出現する。

「あれ? これどうやってとめるんだっけ? ひゃっ!」

「待って待って待って! 発動する――!」

 あたふたと何かをとめようとしていたが失敗したらしくその場にあった陣が光り石やら岩やらが浮き上がった。

「ふぇ? きゃっ!」

 浮いた石や岩は人のいる所めがけて落ちていくようになっているようで避けても避けても壊さない限り狙ってくる。

 視界に映ったのは背後からの降ってくる岩に気がついていないユリアだった。

「危ねぇ!」

「えっ!?」

 ユリアに駆け寄ろうとすると前みたいに後頭部に痛みを感じ、チカチカと目の前が弾けるような感覚に襲われ意識が途切れた。




「うわあああああ!!サラ! ちょっと! 当っちゃってる! ていうか死んでないよね!?」

「うわあああん! 止められないよこれ! どうすんのこれー!」

「ちょっと、寝ようか……」

 エレナはサラの背後に回り軽く首筋を叩く。すると術者に反応してか岩や石も地面に落ちる。

「ケイト君!?大丈夫ですか!?」

「直撃だったな……。まあ生きてはいるだろ」

 ユリアが目を回しているケイトを揺さぶる。が完全に気を失っている。

「うーん、ルカだっけ? とりあえず長老に取り次いでくれない? うちの弟子も気絶しちゃったから介抱したいし」

「あ、えっと……わかりました」

 ルカはサラを担ごうかしばらく悩んだ後一度一人で行くことを決めたのか小走りで村のある建物に入った。

 エレナは感情の読めない瞳でルカを見つめていた。姿が見えなくなると誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。


「まさか、ね」


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